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103 クラーク

 ダニエルのカトリーヌへの誕生日プレゼント選びについては詳しいことは割愛するとして、リボンのついた髪飾りと花束に決まった。


 それから翌日ディオたちは城に戻り、ブルーノとアルフレッドに誕生日プレゼントを渡しに行った。


 プレゼントも喜んでくれたが、1番喜んでいたのはやはりディオが元気でいることだった。

 妖精の力を持つことでこうして生きている一瞬一瞬が奇跡と呼べてしまうからこそ、元気でいるだけ十分でほかには何もいらないほどだ。


 ジークベルトに捕まりながら1日を過ごし、翌日ディオたちはやっと病状が落ち着いてきたというクラークの元へ向かった。


 そこに着く前からディオはニコニコと上機嫌で、早く着かないかとソワソワとしている。気ばかりがせいて仕方がない。


 ディオ同様ソワソワしている人物が1人。しかし理由はディオと違うようでフランは確実に怒られると縮こまっている。報告はいっているはずなので会うのは嬉しいが会いたくないと言う。


「トリス。そのクラークさんってどんな人なの?」


 極端なディオとフランの反応にどんな人なのか想像がつかないアルドは、まともな答えが帰ってきそうなトリスに聞くことにする。


「そうですね、使用人の鏡のような方です。あの方を見ていると私もまだまだ至らぬことばかりと思わされます」

「トリスが?」


 真面目なトリスがと驚くアルドに、トリスは恥ずかしながらと頷いて兄さん(シド)もそうなのだと言った。


「トリスに限らずだよ。イアンもレベッカもクラークの前じゃケンカもしないもん」

「いやそれは、しないんじゃなくて出来ないだけ……」


 ディオがはしゃいで自慢するように言えばフランがつぶやいた。


 なんとなくシドをもっと堅物にしたイメージが浮かんだが、そんな人にディオがこんなに懐くものだろうかとアルドは疑問をもった。


 やがて、馬車が止まるとディオはシドが扉を開ける前に自分からすぐに外に出た。その顔を楽しみで仕方ないといったふうで、シドもため息をつくだけで何も言わなかった。


 先頭にたって歩くのは立場的にも良くないのは分かっているのでうずうずとしながらシドの後ろをついて行く。


 シドやトリス、フランも平静は装ってはいるものの、実際のところはディオと同じように嬉しい気持ちはある。ただディオほど素直になれないのは使用人としての緊張感だろう。

 下手な来客対応よりも緊張する。


「この部屋だ」


 そう言ってシドが部屋をノックしてから扉を開け、ディオが1番に部屋に入った。


「クラーク!体調はどう?」

「しっかり休ませて頂いたので万全です。ディオ様は息災でしたか」


 中にいたのは好々爺然として老人で窓際の椅子に腰掛けていた。

 穏やかそうで落ち着いた雰囲気は紳士のようで、アルドの想像より何倍も優しそうに見えて、フランが怯えるのが要素が分からない。とてもそうには見えないが見た目と中身(性格)が違うのだろうか。


「うん、みんな元気。話したいことはいっぱいあるんだけど、まずはアルドを紹介するね。アルド」


 呼ばれたアルドがシドに促されてクラークの前に移動する。

 シドたちの緊張が移ったのか、はたまたクラークの雰囲気のせいかアルドが緊張していた。


 それでも、シドとトリスに習ったことを思い出して精一杯の挨拶をしてみせる。


「クラウ、ディオ様の専属使用人となりましたアルドと申します。勉強中の身で、至らぬことばかりですが一生懸命取り組んで参ります」

「丁寧な紹介ありがとう」


 クラークはアルドの頑張りを汲み取って優しく微笑むと私も同じようにと立ち上がると美しい所作を見せた。


「私はクラーク・アルド・ウォーカーと申します。現在は療養中でありますが、クラウディオ王子殿下にお仕えしております。お見知りおきください、アルド様」


 アルドに一礼をしたクラークは対応を切り替える。

 アルドも同僚となるので客人用の対応はする必要もないのだから。


 シドがディオのために用意した椅子にディオは座り、クラークやシドたちにも座って休むように言う。


「痛み入ります、ディオ様」

「ううん、クラークは万全じゃないんだから。それに今はここにオレたちしかいないしさ」


 ディオはそう言ってニコっと笑い、クラークは先程まで座っていた椅子に座りなおした。

 後ろに控えて椅子に座ろうとしていたシドたちだったがディオに呼ばれ、結局机を動かしそれを囲むように座った。


「うー、話したいことが多すぎて難しいなぁ、もう」

「たくさんの思い出を作られたのですね」


 何から話していいか分からないと小さく唸る幼い子供のようになるディオを微笑ましく穏やかにクラークは笑う。


「そうかも。ほとんど手紙に書いちゃったし、そうだ。みんな酷いんだよ、アルドもいる時の馬車でのことなんだけど――」


 ディオの話を相づちを入れながら聞くクラークは穏やかだ。話を聞いてシドたちの(ディオ)への対応を諌めることもない。

 特にシドの場合はほぼ家族以外に心を開かないディオのことを考えてジークベルトと同じ歳のシドに声かけた経緯があるので立場を弁えていれば口を出すこともない。


 1時間ほど話をしただろうか。

 次第にディオはうつらうつらし始め、寝てしまうまで粘ろうとするのをクラークが止め、クラークが事前に手配していたベッドでディオは1度寝ることにする。


 ディオが眠って残された使用人たちは――。

やっとクラークが登場。

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