101 できるなら
公爵夫妻が家に帰って来たので改めて公爵家に泊まる許可と取れば、2人は快く受け入れてくれる。
というか、ダニエルが言う前に先に泊まって行くといいと言われた。ジークベルトのこともあるし、なにより息子が心を許して慕っている数少ない人たちである。断る理由もない。
公爵家の使用人たちもまたダニエルの外に出たがらない理由も知っているし、ダニエルが慕っている人たちが訪れたのであれば大いに歓迎した。
それにこの家の使用人はディオが血筋だけでなく王子として相応しいだけの人物だと知っている。使用人としてそんな人物の世話を任されるのは彼らにとって誉れである。
夕食を食べ終えるとディオたちはダニエルの部屋に集まって各自好きな場所に座って話し合いを始める。
「まずは喜んでもらうには好みを把握しないとね、トリス」
「そうですね。カトリーはシンプルなものを好んでいたように思います」
一緒に買い物に向かった時のことを思い出しトリスが言い、フランもカトリーヌは遠慮ばっかりしてたけどなんて言いながらそれに同意をする。
それに関しては2人が買い込みすぎただけじゃないかとアルドがポツリと突っ込んだ。
貴族の買い物についてはまだよく分からないが、後日届いた荷物の量は度を越していたように思う。フランが衣装部屋と言っていた空の部屋の半分ほどがたった1日の買い物で埋まったのだから。
「フランもトリスも好きだからね。放っといたら一日中見ていられるんじゃない?」
「だろうな。カトリーが疲れた様子じゃなかったからいいが」
シドが全くとため息を堪えるようにして言い、もしそうだったら怒られていたとフランは身震いをしてしていた。
話を戻し、カトリーヌがシンプルなものを好んでいること、追加で甘いものと花が好きという情報がフランから出された。
この辺りの店ならとシドが候補をダニエルに伝えようとして、ダニエルがそれを止めた。
「あの、出来れば一緒にいければと。自分で探したいですし」
ディオたちが入れば相談がしやすいこともあるが、公爵家の令息であるダニエルが出かけようとすると近場であってもそれなりに護衛の準備やらとにかく時間がかかる。本来ディオのような出かけ方は出来ないのだ。
店を家に呼んでというのも出来るが、ダニエルは自分の足で探したいと思っている。
それを感じ取ったディオは1度目を閉じて、それからソファに座るシドに視線を向けると細かい予定を尋ねた。
ディオはあまり自分の予定を把握しておらず、ほぼすべてシドに任せきっている。やりたいことは伝えていくがそれを形にして予定を組んでいくのはシドの役割で、ディオはしたいことを言うだけだ。
それで上手いこと回っているのだから誰も何も言うことはない。
「そう、だな。どのみちしっかり時間が取れるのは明日だけだ。それ以降だと陛下たちやクラークさんにお会いする時間を削ることになる」
予定を手帳を開くこともなくシドはディオに伝え、フランは床に座るアルドと一緒に手帳を開いて確認していた。シドから伝えられているがこちらもあまり予定を把握していないらしい。
「今回は急ぎの用もあるから、あんまり時間が取れないんだよね」
予定表を眺めてフランが言う。滅多にないことなのだが、たまにこうして予定が埋まることもある。
「……想定外も、起きたし」
「想定外ですか?」
いまだに罪悪感が残るアルドがつぶやいた言葉をダニエルが拾った。
シドは野盗に狙われただけで大したことじゃないと言う。
商人が狙われるのは何も珍しいことじゃない。彼らからすれば金目の物や食料を詰んだ宝船だ。
まして護衛もいなさそうなディオたちは目をつけたくもなるだろう。実際は腕利きの騎士がいるのだが。
大抵はディオが妖精から事前に常識を得て回避するのだが、たまにこういうこともある。
「そうでしたか」
「うん。妖精が少ないのにすぐ気がつかなくてさ、みんなを危ない目に……ふぁ」
ディオが大きなあくびをして、シドは完全に寝てしまう前にとディオを用意された客間に連れていき、フランは最近も流行について聞きたいと公爵夫妻に呼び出され、部屋にはダニエルと浮かない顔のアルドが残された。
Q.ディオ兄さん、自分の予定を把握してないのはどうかと思いますが。
A.ちょっと情けないくらいがオレにはちょうどいいんだよ。下手に口出さない方がいいし、シドは優秀だからね。




