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-前編-

書きたいものをとにかく書いた。最初の計画した物語を外れに外した結果、とんでもない物語に・・・。

キャラが思う通りに動いてくれない。小説書くの本当に難しい・・・

いつものように、ビアンバー「ホーニッヒ」のカウンター席で飲んでいたら一人の女性が入ってきた。絹糸のような艶のある黒髪、前髪はなくきっちり晒された彼女の顔は大人っぽく妖艶だった。背は私より少し高いが、体のラインが細い分実際より高く見える。年は同じか少し上と言ったところか。いつもは年下で可愛らしい女の子しか興味のない私も心を奪われていた。



深夜遅い時間だったこともあり、店の中は閑散としている。彼女は辺りを幾ばくか見渡し、結局カウンター席の端に座った。マスターが注文を取りに行く。彼女が頼んだのは意外にもホットミルキだった。その事に少し心がくすぐられた。こんな大人っぽく素敵な女性が深夜遅くビアンバーにやってきて頼んだのがホットミルク。見た目に反して子供っぽいと思った。



「隣大丈夫ですか?」


私は自分の飲み物を持って彼女に近づいた。彼女は急に話しかけられて驚いているのか、目を見開いた。そのまま数秒間経ってからようやく口を開いた。


「どうぞ。」


その声は女性にしては低くかったが、落ち着いていて聴いてて心地が良かった。どこかで聞いた事がある声だった。


「こんな時間にどうしてここに?」


純粋な疑問を投げかけた。もうすぐ朝の時間帯に差し掛かる頃合いだ。店の中にほとんど人がいない時間帯に来ても、出会いなどほとんどない。そういう考えから出た質問だったが、


「それはあなたも同じなのでは?」


そう返されては私は質問し続ける事が出来なかった。


「私は純粋にこの店が好きなんです。もっと早い時間帯から居ましたが、心地が良くてそのまま居続けしまいました。でもそのおかげであなたのような素敵な女性に出会えた。」


軽く笑って、彼女を誘うように言う。


「ハルです。良ければこの後一緒に一晩過ごしませんか?」


彼女はそれを聞き、少し驚いた様子だったがすぐさまに微笑んだ。


「強引なんですね。でもその強引さは嫌いじゃないわ。」


「ミサよ。一緒に素敵な夜にしましょう。」


彼女は、ミサは獲物を定めたような目を私に向けた。





「あーあ、獲物を捕まえるはずなのに、逆に捕まえられちゃった。」


1週間前にビアンバーであったミサと素敵な夜を過ごして以降、私、立花春香はずっとミサの事を考えていた。


あの夜の自分の痴態は思い出しただけで、全身が熱くなる。この体が自分の物じゃないかのようだ。


これでも沢山の恋愛遍歴を積み重ね、多くの女の子たちと遊んできた。


その時の多くは自分がリードする方だった。


彼女たちとのセックスは楽しいし、自分のテクニックで彼女たちを気持ちよくさせる事ができることに仄かな優越感を覚えていた。


でも1週間前のミサとのセックスはミサの醸し出す妖艶な雰囲気に当てられ終始ミサのペースだった。ミサの手や口で何度もイカされ、今までに感じたことのない感覚だった。


昔付き合った彼女の中でも、セックスが上手く、自分が受けに回るときもあった。それでもミサとのセックスには敵わなかった。


ミサは言葉で巧みに私を責め、身体のありとあらゆる場所を愛撫した。私の性感帯を知ってるかのように、的確に責めた。


何度も彼女の腕の中で達した私は彼女を責める余裕も体力も残っていなかった。





仕事中で、仕事に集中しなければならないのに、度々ミサの事が頭に過ぎる。


「立花さん。どうしたの。ため息なんてついて」


同僚看護師坂町さんが声をかけてくれた。


「いえ、ちょっと疲れているだけです。」


「そうね。今日はいつもより忙しいからね。でもあと少しで交代だからもうちょっとがんばろう。」


2年生先輩である坂町さんはいつも優しい。まだ30歳くらいなのに、溢れる母性と気遣いの良さから病院内では頼れるお母さん役だった。





「立花さん。」


夜勤も終わり、帰ろうとしていた私を暗い声が呼び止めた。


あ、まただ。めんどくさいことになった。そう思いながら声がする方振り返る。


そこにはダサい黒縁眼鏡をかけた女医、雨宮岬が立っていた。雨宮岬は私が所属する東帝大学付属病院心臓外科の医者だ。腕は一流だが、見た目と性格は最悪と言われている女医だった。髪はぼさぼさで、来ている服も黒の襟付きセーターに黒のズボンと「悪の組織の一員か!」、と思うほど全身を黒一色で揃えている。色気もなく、おまけにほとんどしゃべらず、たまに口を開いたかと思えば、看護師への説教ばっかり。


でもその説教の内容はあながち間違ったことを言っていないのがまた悔しい。


また説教されるんだろうなと思って構えていると、


「立花さん。お疲れ様。」


と挨拶して、通り過ぎていった。


私は唖然としてしばらくたっていたが、先生が通りすぎた後我にかえり、慌ててお辞儀した。


「お疲れ様です。」


今までに雨宮先生が看護師に向かって挨拶をしたことがあるだろうか。私の記憶を掘り起こしてみたがそんな光景は見当たらなかった。あまりにも突然のことに私はしばらく立ち尽くした。





雨宮岬が予想外すぎる挨拶をしてきてことにはびっくりしたが、私の脳内を占めるのはミサのことだった。あれからミサのことを思っては身体を熱くした。彼女の声が私の脳内で再生され、手が、唇が私の身体の至るところ愛撫する光景を思い出しては、下を濡らした。



彼女にもう一度会うためにあの時間帯に何度も「ホーニッヒ」に通ったが、ミサが現れることはなかった。


聞けば、彼女は初見さんだったらしく、マスターも詳しく素性を知らなった。


あの夜、彼女は何も連絡先を残さなかった。次の日目を覚ますとそこには1万円札と「楽しかったわ」のメッセージが書かれたカードだけが残されていった。


やり捨てられたのだと思うと寂しかったし切なかったが、自分がいつもほかの女の子にもやっていることなので、これが因果応報というやつなのだろうか。

後編に続きます。


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