転生ヒロインは未来を約束されていても底辺スタートなんてしたくない
急にダイジェストっぽい短編が書きたくなりまして。
「お父様、早く帰ってきてね!ウフフ―――・・・・・・っておい!これ、この後、愛する『ラウラ』の為に急いで帰ろうとした『お父様』が、大雨でぬかるんだ山道で馬車ごと崖から転落死して、『ラウラ』の人生も転落していく流れだったよね?!」
と、まあ。そんな感じに突然、前世なるものを思い出しちゃった私こそが、その『ラウラ』。
隣の領地まで商談に行った父に宛てた『寂しいから早く帰ってきてね』的な手紙を書き終わった瞬間、『孤独な兎は蝶よ花よと溺愛される~駆け上がれ!シンデレラロード!~』という哺乳類なのか昆虫なのか植物なのかファンタジーなのか、迷走感満載な乙女ゲームの、攻略対象によって十数パターンもあるシナリオを走馬灯のように流し見ちゃった私こそが、その乙女ゲームの主人公『ラウラ・ライツ』。御年5歳。
ライツ子爵家ただ1人の継承者である。
ここで重要なのが、ライツ子爵家を継ぐ資格のある娘が私1人、であるという事。
つまり、童話『シンデレラ』と同じように継母と、その連れ子である姉が2人いるのである。
ちなみに前世の私は『2次元』と『日本酒』と『子供』を愛した、冴えない保育士だったようだ。御局様と呼ばせて自虐ネタにできる程度に生きたらしいが、享年もその他細かい個人情報もそう重要ではないので割愛する。
「ふう。これで良し!」
『早く帰ってきてね』的な手紙を紙吹雪並みに細かく裁断して捨て、新たに『注文から入手まで1週間はかかる人気のお菓子をお土産にしてね』といった手紙をこさえた私は、封をしたそれを持って義母の元へと向かった。
シナリオ通りなら近いうちに死んでしまう稼ぎ頭な父はまだ死んでいないし、領地経営もまあまあ上手くいっているおかげで下級貴族ながらに裕福な暮らしを送れている今はまだ、義母とその連れ子との仲は悪くない。家族になってから3か月と日も浅いので、仲がいいわけでもないが。
「どうしました?ラウラ」
元は中規模な商会の次男の妻だったという義母は、キャリアウーマン風の凛としたたたずまいが素敵なアラサーである。
しかしこのキャリアウーマン風といった見かけに騙されてはいけない。
非常に残念ながら義母に商才は全く備わっていないのだ。そんなわけで父亡き後、現状のままハイクラス寄りの生活を送っていたライツ子爵家は、商売や投資に失敗したりして徐々に財産を食い潰していき、屋敷も、領地をも売っぱらうまでに没落してしまう。
そんな底辺からがゲームスタートとなり、イケメンたちの間をフラフラしながらシンデレラの様に返り咲くのが『孤独な兎は蝶よ花よと溺愛される~駆け上がれ!シンデレラロード!~』のストーリーなわけ。
ゲームスタート前の設定段階で義母は連れ子を優先して私を冷遇し、シンデレラ的に虐げるわけなのだが、最初から義母が私と連れ子を差別したわけではないのだと思う。現状、父がいない時に態度が豹変するわけではないから。
きっと、義母なりにライツ子爵家を守ろうと奮闘したのに上手くいかず、努力した結果で例えライツ子爵家が盛り返したとしても自分の子供に継承権はない。しかも血のつながっていない娘は、死んでしまった父を恋しがって懐いてくれない。そんな状況で、ライツ子爵家の継承者である私に優しくできるかというと・・・どうかな。
お局思考は、虐待はアウトだけど、自分が同じ境遇になったとして、自分の子供と同じように愛せる自信はない。と告げている。
「お母様。お父様にお手紙を出してもいい?」
遠慮がちに手紙を差し出しながら、張り付けたような笑顔で血のつながらない娘に対する距離感を量っているのだろう義母の様子を窺う。ちょっと顎を引き、上目遣いで目をウルウルさせるのがポイントっす。
ラウラちゃんは流石乙女ゲームのヒロインというだけあって、ふわふわの綿菓子のように柔らかな金髪に、純度の高い宝石のような碧眼、白く吸いつくようにきめの細かい肌、バラ色の唇、桃の頬、すらりと長く華奢な手足といった、人形のように可愛らしい容姿をしている。そんな美幼女、しかも義理の娘かつ貴族の令嬢を、無下に扱える人間は少ないだろう。
打算に満ち溢れた腹の内をまるっと厳重に包み隠して無邪気な幼女の皮を被った私は、今後の方針としてすべてのお願い事を血のつながった父ではなく、義母を通すことに決めた。最初から恨まれでもしていなければ、「お母様」と慕ってくる幼女にいつかほだされてくれるかもしれない。
まあ、結局ダメかもしれないが、最初から諦めてしまうのはしたくない。もし彼女を排除したとして、『幼い子供には母親が必要だ』という考えの持ち主な父が、別の母親を連れて来るだけかもしれないし。
「え、ええ。いいですよ。私が預かりますね」
侍女に渡せば済む手紙を義母に手渡すことによって、『貴女を信用しています』と行動で示した結果は上々だ。義母のきつい眼差しが心なしか和らいでいる。
手ごたえを感じた私は、ついでに新たな手を打つことにした。
「お母様。あのね、私もお姉さまたちと一緒に刺繍を教えて欲しいの。ダメですか?」
刺繍のお勉強の時間は、まだ幼いからという事で私は別行動でした。しかし好かれるにしても嫌われるにしても、まずは行動を共にしなければ始まりません。そしてあわよくば群れの一員であると認識してもらうのだ!
と、行動した結果、シナリオ通りの大雨によって起きた土砂崩れが原因で街道が通れなくなり、その復旧作業の指示をしたり、ついでに盗賊退治なんかした父が2か月後に帰ってきた頃には、仲睦まじい親子が部分的に形成されていたのであった。
商才が全くなく、女の子らしい事が苦手そうな義母は、意外なことに裁縫の腕前が職人並みだった。センスもさることながら、手早くそして正確なのだ。そして、その血をしっかり継いでいるのが上のお姉さまだった。特に刺繍において。
才能は伸ばすべし!
前世の私は『子供』が好きだったが、決して犯罪的な意味合いではない。決して。本当に。本気で。
ただその可能性に満ちたダイヤの原石のような輝きを磨き上げる一手であるという、育成感が好きだったのである。
そんなわけで7歳の姉に才能を見出した私は、時におだて、時に競い合い、共に義母へ教えを乞う事によって、彼女の才能を開花させた。
ついでにこれまでは植物の絵柄が主流だったのを、愛らしい子犬や子猫、果てはドラゴンなんて大作を刺繍したりなんかもしてみた。ついでに『2次元』愛をそれとなく刺した物語調のものまで。そしてそれを行商に行った父が自慢したら売れてしまって。
結果、5年後には上の姉は売れっ子の刺繍作家になった。
え?私はどうなのかって?
ゲームのヒロインらしくオールマイティー型であったようだ。裁縫も刺繍も編み物も難なくできたが、まぁ上手い方かな程度に終わった。
さて、皆さま。先程、形成された仲睦まじい親子は部分的であったことを憶えているだろうか。
義母、上の姉、下の姉、私の4人で開催していた裁縫教室。この中で唯一、壊滅的に裁縫に向かない人間がいたのだ。
とは言っても、全くできないわけではなく。ただ単に楽しくない。やりたくない。体を動かしている方が好きといった。興味のあるなしの話であった。
興味のある対象がハッキリしているのは良い事だ。
下の姉が体を動かす事の方が好きなのは、シナリオでは死ぬはずだった父が生きて帰って来た頃には気付いていたので、私は皆が揃った夕食の場で早速切り出した。
「お母様、お父様。私、護身術を習いたいの」
これには態度が軟化したばかりの義母だけではなく、私に甘い父でさえも難色を示した。この世界は婦女子が武芸を嗜むのを忌避する傾向にあるからだ。
しかしこの国には王女様もいらっしゃるし、高位貴族の令嬢の護衛として需要があるという矛盾。つまり自分の子にはやって欲しくないけど、雇いたくはあるという訳だ。
需要はあるのだから、身に着けて損はない。それにただ守られるだけではなく、護身術を習う事によってどう守られたらいいかを学ぶことができると、説得に説得を重ねた。かなり時間を要したが、下の姉も一緒に学ぶという条件でようやく許可が下りた。
下の姉を巻き込んだのは、もちろん私だ。
始めは20人前後しかいないライツ子爵領軍の見習い兵士に混じって、体力作りから始めた。割と厳しかった内容は、音を上げさせて早々に諦めさせようという意図が含まれていたのだと思う。
けれども私も、下の姉も、これに食らいつき、互いに励まし合いながら、時にボロボロになりつつもついて行った。
結果。当初6歳だった下の姉が11歳になる頃には、はるか昔に王都の騎士団でブイブイ言わせていたと自己申告している領軍隊長が、一目置くほどの実力を身に着けてしまったのだ。
下の姉だけが。
私は普通よりは優れているけれども、突出してはいない程度に終わった。ゲームのヒロインらしく、割となんでもこなすけれど器用貧乏な性質なのかもしれない。
そんなこんなで忙しい幼少期を送る私には、ひとつの野望があった。
それは『日本酒』の作成!
この世界、洒落た洋酒類が存在するくせに、命の雫たる日本酒が存在しなかったのだ。さすがに未成年の今から口にしようとは思わないが、解禁年齢に達した時にこれを飲めないのでは人生の楽しみが半減してしまう。
ここで幸運だったのは、家畜のえさ扱いではあっても米が存在している事だった。こうなったら自分で作るしかない。
幸い、前世の趣味であった酒蔵めぐり、酒造体験などによる知識がある。
いけるんではないだろうか。
ちゃっかり米を入手し、こっそり醸造して、それっぽい清酒完成に至るまで苦節5年。出来たはいいが、なんだか香りが安っぽい。
そんな訳で、今度は米にこだわってみたくなった。
善は急げと回りくどく義母を経由して領地について父に訊ねれば、米を栽培してはいないものの数年に1度の割合で氾濫する河川の付近に湿地帯があった。もちろん手付かず。
なにせ水浸しなので家を建てることも、畑を作ることもできないのだ。
しかし私には前世の知識がある!
『日本酒』を愛していた私は、その製法に限らず原材料にまで目を向けていた。よって水田の歴史から、米の品種改良までの幅広い知識が備わっていた。
湿地の排水からする必要があるが、治水の必要性と、ついでに未開拓な湿地を水稲栽培に利用する有用性を説いてみたらいけると思う。
問題は私がまだ10歳の子供であることであった。
これにはかなり悩んだ。いかに知識があろうとも、信じてもらえなければ説得もできない。それにもし説得できたとして、10歳の子供が大人顔負けの知識を披露するのだ。気味悪いったらないだろう。
悩みに悩んだ私は、神にすがることにした。
教会へ出向いて、神のお告げ的なものを賜ったことにするのだ。
この世界には7柱の神様が存在する。それぞれ司るものがあり、ストーリー的にかかわってくる神様もいたりするのだが、今は関係ないし、この先関わらないように生きていくつもりであるのでそれについては割愛する。
教会はその7柱の神様のどれか、または重複して奉る場であるのだが、ここライツ子爵領には『勤勉』を司るレジデリジェン様を祀る教会がある。
お告げ的なものや加護は大小にかかわらず、ちょいちょい授かったりするものらしいので、私の知識として披露するよりも受け入れられやすいだろう。
ちなみに教会へはすでに週に3、4回の頻度で通っていたりする。
何故って?
そこには未来の可能性に満ち満ちた『子供』たちがいる、孤児院があるからさ!
そこで原石たちに触れ、磨くための手段を与えて、伸ばして社会へ送り出す。
あぁ!なんという達成感!
実は孤児院の施設充実の為、私に甘い父がくれた物のほとんどがこちらへ横流しされていたりする。さらに父には内緒だが義母には自己申告済みで、黙認どころか助言もされている。
慈善事業なのだ。反対する意味がない。
ある日突然、お告げ的なものを得た私はそれに従って領地内の湿地を開拓。
米の食用化を広めつつ品種改良を進めて、6年後には腰が光っちゃう感じの米の栽培に成功したのである。白米ウマー。
この国の飲酒可能年齢は16歳から。
清酒用の米の開発も間に合って、非常に満足いく誕生日を迎える事が出来たのだ!
こんな感じに『乙女ゲーム?何それ美味しいの?』状態で楽しく生きてきた私は、今、ちょっとよく分からない状況にある。
「ね、ラウラ。式はまだだけど、書類的にはもう夫婦なんだから・・・いいよね?」
「なっ?へぇっ?!ふぐぁっ?!」
「あー。やばい。美味しそう」
「お、重い!!あっ!やめっ!」
「大丈夫。痛くないようにするから」
「ひぃっ!どこ触って?!」
「ね、最初は先っちょだけだから」
いやいやいやいや!!!
それ、先っちょだけで終わらないヤツでしょ?!
しかもそれだけで済ませる気もない確信犯!
さっきまで成人祝いのパーティーで日本酒を披露し、売り込み、掴みは上々なのを上機嫌で、食べて飲んでほろ酔い気分だったはずなのに、どうしてこうなった?!
私は恍惚とした表情で迫り来る、黒髪かつ目の色が片方ずつ異なるオッドアイな魔王系イケメンの顔を押しのけながら、コイツどっかで見た顔だな、と記憶を漁る。
ん?魔王系?
ってコイツ!マジモンの魔王だ!
ゲーム通りの黒髪に、神の加護を証明するオッドアイ。節制の神グラトレストの加護を示す赤と緑だし!
全力で抵抗する私のパーティードレスのボタンを外しつつある目の前のイケメンは、『孤独な兎は蝶よ花よと溺愛される~駆け上がれ!シンデレラロード!~』で猟奇殺人的な性行為をする隠しキャラ、暗黒大魔王なのだ!
なんで節制の神の加護を受けてるのに魔王なのかと言うと、この世界の神様は真逆の立場も兼任しているからだ。
節制の逆は暴食。つまり魔王は、食人という猟奇的な性癖の持ち主だったりする。
「僕ね、君のことを丸ごと全部食べちゃいたいくらい、すぐにでも手に入れたかったのに、節制の神の加護を受てしまうほど我慢して、我慢して、我慢して、我慢したんだよ?国に帰って馬鹿な兄どもを血祭りにあげて王位を手に入れ、この国へ戦争を仕掛けて国ごと君を奪い取った方が楽なのに、君が食べるでも無いのに生き物を殺してはダメだって言うから・・・名を上げて正攻法でこの国の男爵位を手に入れたんだよ?それ以上に手こずったのはライツ子爵に君との婚姻を認めさせることだったんだけど・・・僕のこと、忘れちゃったの?」
「・・・・・・・・・へ?あれ?ルカ?」
ニイッと犬歯の存在を強調するような笑い方は確かに、『ビッグな男になって帰るぜ!(意訳)』と、3年前に孤児院から巣立って行ったルカと同じだ。
名前を言い当てたことに気を良くしたらしいルカが、オッドアイを細めて呼気を肌に感じるほど近く、顔を寄せてくる。
「そう。君のルカだよ。君が愛してくれた黒目でなくなった僕は嫌い?」
「い、いや。私の(原石たちへの)愛は、目の色が変わっただけで嫌いになる程度ではないけれど・・・」
「そう。よかった」
ルカは魔王?
魔王はルカ?
でも、ちょいまち。
確か魔王の名前はジャッカルクスだったはず。なら偽名第1候補はジャックでしょ?!よくある名前なんだし。なんでルカ―――ってそうか、ジャッカルクスのルクスをルカなのか・・・気付かんわ!
そりゃあ、国境に近い孤児院は、身を隠すのにいい場所ではあるのかもしれないけどさ。まさか隣国の王子様が、孤児のふりして質素な生活しているなんて思わないでしょ?ゲームにもそんな設定なかったし。
確かに昔も、今に負けない美幼児だったさ!
孤児院の新入りに懐かしい黒目黒髪を見つけて話しかけてみれば、妙になんでも出来るチートっ子でさ。自分以外の人間を家畜のように見下していたもんだから、ヒロインのオールマイティー力を利用して先回りし、自分を底上げした上で勝負をしかけてプライドをへし折ってやったのさ。私の能力的には中の上までしか上がらないのだけど、初勝負だったら勝てたのさ。
まぁ、次からは学習して上の上になったルカに負けちゃうんだけどね。それを悟られる前に次の勝負を仕掛ければ、マウントできたのよ。
そんなありとあらゆる勝負をし倒した結果、鉄壁ヒロイン(笑)と、スパダリが出来上がってしまったのでした。
ルカはともかく。
私は優秀すぎる嫁なんて欲しくない貴族令息たちに敬遠されて、16歳になった今まで全く婚約の打診も、浮いた話もなかったよ。それには過保護な義母とシスコン姉ズも関わっているのだけど。
てか、なんで今更なの?!
ゲームのシナリオ通りに、隣国が戦争を仕掛けてくる気配が皆無で、安心しきっていたと言うのに!
攻略対象の幼少期トラウマを回避させただけで、あとは関わらないようにしていたのに!
一部・・・いや、4人―――あ、魔王入れたら5人と、未だ関わりがあるけれども。
どうして私がこんなに関わりたがらないのかと言うとだね。
実は・・・『孤独な兎は蝶よ花よと溺愛される~駆け上がれ!シンデレラロード!~』という題名から何となく感じるかもしれないのだが・・・私をヒロインとした、この乙女ゲーム。
18禁なのだ!
エロゲーなのだっ!
もちろん複数プレイもありなのだっ!
そんな攻略対象は、隠しキャラな魔王も含めて6人。
忠義の神アロヤルの加護を受けた、御奉仕強要系エロ担当な槍使いの側妃腹第1王子。
寛容の神ラストレの加護を受けた、ペロペロ(物理)わんこ系脳筋騎士。
勤勉の神レジデリジェンの加護を受けた、ねっちょり粘着系寡黙魔導師。
慈愛の神ジェラスアフェクの加護を受けた、ドS女王様系鞭も使える回復役の女装修道士。
分別の神グリスパレイの加護を受けた、ドM緊縛系お色気聖騎士。
ついでに節制の神グラトレストの闇落ち版、暴食の神の加護を受けた、攻略できたできないにかかわらず、生かしておけば世界を滅亡させちゃう隠しキャラの暗黒大魔王。
そしてそして、隠しキャラを除いた攻略対象たちと共に、魔物とかアンデッドとかを繰り出して侵略してくる、隣国の王な暗黒大魔王を討伐と言う名の暗殺をしに行くのが、純潔の神ラスピュアの加護を受けたヒロインなのである。
ちなみに私はラスピュアの加護を受けてはいない。
いらないのでそのイベントをガン無視しました。
何故なら!
この世界の神様たちは表裏一体なので、ちょっとしたことで闇落ちしちゃうのよ。
では純潔の神ラスピュアが闇落ちするとどうなるかと言うと・・・純潔と真逆になるわけなので、色欲の神になってしまうのだ!
おい!どこのエロゲーだよ?!
エロゲーだったなこんちくしょう!
なのでヒロインとアンアンすると麻薬的な快楽を得ると共に、フィニッシュから24時間、お相手に上限値超え2倍のバフがかかるのである。
いや、マジで無理だから。
私は婚前交渉ご法度の旦那様と1対1派だから。
魔法陣タペストリー開発者な上の姉に粘着している魔導師と、一騎当千と言われる下の姉に弟子入りしたい脳筋騎士。普通の修道士と聖騎士に育った攻略対象2人とは孤児院が教会併設なせいで時々、会ってしまうけれど。
メインヒーローな俺様プリンスは、遠目でしか見たことがない。成り代わりなのか、強制力なのか不明な、純潔の神ラスピュアの加護を受けた侯爵令嬢との婚約披露パーティーでね。
いいのよ。
私はヒロインしたくないし。
複数アンアンとか、絶倫寝かせないゾ☆とかいらんし。
普通でいいのよ。
むしろ普通がいいのよ。
恋愛の仕方なんて忘れちゃったから、なんなら貴族令嬢として政略結婚も受け入れる所存だった。
だから戦争さえ起きなければ問題なし。起きても代打ヒロインがいるんだから私関係ないし。
そう、思っていたのに。
「いやぁぁぁぁぁ!!死にたくないぃぃぃ!!」
「ふふふ。大丈夫。死にそうなくらいに気持ち良くするけど、もちろん比喩だから」
「えっ?!どういう意味?!ひぁっ!あの!あ、あ、あ、あ、あーーーーっ!」
18禁乙女ゲームにヒロインのラウラ・ライツ子爵令嬢として転生して16年。
底辺堕ちと、複数アンアンは回避出来たものの、絶倫系普通性癖に育った魔王じゃない隠しキャラに、美味しく頂かれてしまいましたとさ。
エロ系の比喩的にね。
ヤバイ性癖が生まれるフラグはプライドと共にへし折ってあるので、命の危険はありませぬ。
そして主人公は保育ができて、日本酒が飲めれば、だいたい幸せな人だから一応、ハッピーエンドかな。