ペルシア王は「天ぷら」がお好き? 味と語源でたどる食の人類史
原著タイトルの方が内容に忠実なので紹介。『The language of food : a linguist reads the menu』(ごはんのことば:とある言語学者の読み解くフードメニュー)。
鴉野のラノベ的翻訳の是非については脇に置くとして本編は身近な食品の名前から始まる、著者やその祖先たちの生活背景と共に語られる人類史の物語だ。
著者が今の土地に落ち着くまでの先祖が辿った道程のように、食品となる素材やレシピは次々と様々な人や国や民族に受け継がれ最適化されていった。
その痕跡はメニューに、レシピに、食べ方に、食い合わせに、そして言語に残っている。
本編とは直接関係ないがドナーケバブはドイツでは穀物の粉からできた皮(パン?)に包まれた肉料理として提供される。
これはトルコ語でドネル(doner回転)をドイツ語読みのドナー(※どうもディナーとかダイナー(diner)に混同されている節があるのではないかと愚考する)読んだものである。
ケバブは肉料理を表しており、東京の下町を歩いていると遭遇するドネルケバブは皆さんお馴染み屋台で見かけるめっちゃでかい肉をくるくる回して焼いて表面を削って食べる料理だ。
ちなみに日本でシシカバブーと呼ばれる串焼き料理はインド料理の『シークカバーブ』が早くに紹介され、それがトルコ風に訛った『シシカバブー』という名前で親しまれてきた。
近年、トルコ料理としての『シシュケバブ』が紹介されるにつれ、もともと同じ料理だが調理法の異なる『シークカバーブ』と『シシュケバブ』が混同されることになった。
また、北海道のザンギと本州の唐揚げのようにほぼ同じ料理の名称が違っていたり同じザンギでも唐揚げと同じ作り方をする地方もあればその逆もありうる。
交通機関の発達や食べログなどによる各地食べ比べによりお互いの実質距離が近づいてくることでレシピの混同が起きていることを考えると別方向で地球を一周した料理が極東でまた交わるドラマを感じてもらえるのではないか。
私事で申し訳ないがなろうファンタジーではよく混同されているし、鴉野もあえてキャラクターの名前を考えるのが面倒なので『もとになる異世界言語では一語しかない』とそのままにしているが、アンジェ、アンジェラ、アンジェロ、アンジェス、アンジェリーナ、アンジェリーク、アンジェリーグ、アンジェリーなどなどは本来同じAngelである。
チーアあたりが遭遇したら「天使ばっかり出てくんな!」と叫ぶはずだ。
Gabrielとか階級を含めると天使を表す言葉は膨大な数になる。
これは別言語でも問題なく文字を共有できる人類文化の賜物だが、おかげで漢字で単語を表しておいて漢字全体を崩したひらがなと漢字の一部を採用したカタカナという音節文字を採用している日本語とかかなりワケのわからない文字体系を人類は生み出した。
言語にはその民族の嗜好や哲学や習慣が垣間見える。
ワイン(wine)、水(Water)、ウォッカ(vodka)など飲み物関連の語源は同じだ。
日本人は悲しい時に雨が降ると『空が(※正確には空まで俺と)泣いている』と感じるだろう。自然と自身が一体となった世界観だ。加えて定期的に台風が飛来するため毎年深刻な被害を受けつつも水には(まだ)困らないことが推察される。
逆に水が希少かつ土に毒性がある地域や世界では飲料水の毒性を抜くためにあえてアルコール飲料を飲むことで毒の被害を抑えていることがある。
この場合アルコールも毒には変わりないので水の希少さが際立つ。どっかの国や異世界では『雨が降る』を『時のワイン(※Waterとwineとで同じ『飲み物』をさす)が降る』と歓喜の言葉によって表現するのではないだろうか。
こう考えてみるとあなたの異世界を彩る言葉を想像できる。
異世界の勇者が広めた料理なら異世界の人間独特の訛りから表音文字を組み合わせて独特の音節文字一字を接頭辞につけるかもしれない。
日本人ならLRが混同されるので『LR』の母音を組み合わせた表音文字(※母音と子音が分かれている。アルファベットなど)が連結しそれに子音を表す文字をつけて合成した音節文字(※ ひらがなやハングルなど母音と子音を合成した音節やモーラを重視する文字体系。ハングルは上記のように音素や音節の合成が明記されていてわかりやすいようだ)が誕生してそのまま「異世界からきた』を意味する接頭語になり、それを採用していた帝国が倒れ、支配されていた各蛮族の言葉に分かれていく過程で独自の文字になって語源が失われて別の表音や表記になるかもしれない。その際、人間と異なる発声帯を持つ種族がその文字を採用した場合、文字左にその種族を表すシンボルがつき、竜笛や犬笛の操作方法をも示すようになるかもしれない。
別世界観の文字が他世界の文化などを変えることもある。
例えば日本語の鍛治用語では『フォージ』を『折り返し鍛錬』と呼ぶ。金へんになれば鍛錬で金属関係、いとへん鍛練になれば同じ『れん』でも人間をきたえるとかの意味になるらしい。
ここから日本人はフォージを『日本刀をきたえる』と誤読しているが科学的には折り返し回数に刀を強化する意味はほとんどない。
鋼から不純物を取り除く効果しかないので群水刀のような電気でフォージした刀には折り返し鍛錬は不要だったりするのに戦時中の軍はやらせていたりする。
かように言葉(文化)と文字には直接関係なくとも相関してしまう。
同じ文字でも楔形文字は表音文字が表語文字(※例として漢字は表意文字と学校では習うが、実質は表意文字である象形文字を組み合わせて単語を成した表語文字)になっていたり便利なものを自分に都合よく扱っている。
これはおそらく異世界でも変わらないのではないだろうか。竜の声帯とか考えだしたら膨大な音素が追加されて頭の痛い課題にはなるが。
(※文字の特定位置に彼らの声帯を模写するための竜笛を表す象形文字が追加されて活用が生まれると考えられる)
この作品はあなたの愛する作品たちのことばに想像力のちょっとしたスパイスを加えてくれるはずである。
いただきます。ご馳走様。
ちなみにご馳走様のご馳走のごげんは食材を得るために奔走する……(以下略)。
著者:ダン・ジュラフスキー
訳者:小野木 明恵
刊行日:2015/09/17
種類:単行本
日本図書分類/Cコード:0020
判型:46判
ページ数:320
重量:317
商品コード:0000116421
ISBN:9784152095640
(公式サイト)
https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/g/g0000116421/




