イエナイキズ
ずっと 声がしている
お前には無理なのだと
そんな夢は無謀だと
そんなふうに言う声がする
忘れたはずの 少女の頃
遠い過去に成り果てたはずだったのに
ふと思い出しては
あの言葉は
今も私を苦しめる
ねえ きこえないの?
あなたの言葉が
過去の私を傷付けたこと
あなたの言葉に
過去の私がひとり 涙を流して怒ったこと
あなたの言葉に
今も苦しめられているのに
私の声がきこえないの?
痛いよ
苦しいよ
悲しいよ
何で きこえないの?
こんなにも 近くにいるのに
どうして こんなにも遠いの?
私の抱えるこの傷に
私のイエナイキズに
何で 気付いてくれないの?
こんにちは、葵枝燕です。
『イエナイキズ』のご高覧、ありがとうございます。
この詩を書いたきっかけは、私が中学生くらいの頃、母に言われたある一言にあります。あの頃、将来なんてまだわからなくて、漠然と「作家になりたい」と願い、それを口に出したことがありました。そんな私に母が放ったのは、「あんたは今の倍は頑張らないと、作家なんてなれないよ」という感じの一言でした。母としては、私を鼓舞するつもりだったのかもしれません。それでも、私はその一言に、ひどく傷付いたのです。私はただ、それがどれだけ途方もない夢だったとしても、それを肯定してほしかったのです。私にとって母のその一言は、自分の全てを否定されたに等しい言葉でした。そんな憤りを、姉にぶつけながら泣いたのを、今でも憶えています。
きっと母は、あのときのことなんて忘れていると思います。私が今も、母のあの言葉を思い出しては、あのときの傷が疼いているのを、きっと知らないと思います。例え言ったところで、母にはきっとわかるはずがありません。この傷はきっと、一生癒えることはないでしょう。
“イエナイ”には、“癒えない”と“言えない”の二つの言葉をかけたつもりです。癒えることもなければ、それを引き起こした本人に言えるわけもない、そんな傷が今もあるように思います。
そんな出来事を、詩にしてみました。
拙作のご高覧、ありがとうございました。