スキル
本日4話目です。
次回から、ようやく誠也の新たな人生が始まります。
ここまで長くてすみません。
――――あれからさらに1時間が経って、ようやく俺はどのスキルにしようか決めることができた。
「俺は、経験値倍加、並列思考、創造魔法、隠蔽の4つを最初にもらって、残りの1つ分って保留にできないか?」
俺は、最初からそんなにスキルを貰いたい訳ではないが、あって困るものでもないので初期段階で必要そうなものと、これからこっちの世界で生きていく上では死なない程度の強さも必要になると思い、レベルを上げやすいスキルを選び、神には異常と教えられた魔法適正を隠すために隠蔽を選んだ。
そのことを地球の神に伝えると、納得したように頷き、俺が提案した1つの選択権を保留にしたいという事をこっちの世界の神に確認をするように視線を向ける。
「儂はそれでも問題は無いぞい。むしろ、その方がお主的に良いのであれば、その方法を取らせてもらう。」
こっちの世界の神はそう言って頷く。
その後、俺の体を淡い白色の光が包み込み、体の奥から力が湧いてくるのを感じる。
「すまない。俺の我が儘を聞いてもらって⋯⋯⋯。」
「気にするでない。お主のような事を言う者はよくおる。そう言った者には儂は嫌悪感よりも、好感しかないのでの。」
「こういった事を頼むやつはいるのか?というか、あんたらみたいな神と会えるような奴が他にもいるのか?」
こっちの世界の神が話した内容の中で俺は疑問に感じたことを聞いてみた。返って来た言葉はやはりと言うか、当たり前の事であった。
「こっちの世界にも勇者召喚ってあるからな。そんで、基本的には地球の方から数人を引っ張ってくる代わりに、いくつかの特典、―――この場合はユニークスキルっていうのを1つか2つ持たせてやるんだ。そうして、その力を使って世界を恐怖に染めている魔王を倒してほしい、つって送り込めば簡単な奴らは文句も言わずに従うからな。―――まあ、従わない奴も無理矢理送り込むけどな!ハッハッハッハ!」
「全く、無理矢理送り込まれた奴を対応するこちらの身にもなってほしいのじゃが⋯⋯⋯。」
「いいじゃねえか!戦闘に関しては、質のいい奴を送り込んでんだからよ。俺の管理してる世界の奴に頼らないと、魔王クラスを倒せねえんだから、そのくらいは我慢しろ。てめえが魔王クラスを倒せるような奴を生み出せてねえのが悪いんだろ。」
「そのことになると何も言い返せんのが悔しいわい。―――と、今の話の内容で分かるように、その者の強さとは魂、その世界を管理している神によって変わってくるのじゃ。その神がどれだけ質の良い魂を作れるのかによって、その世界の質もまた関係してくる。いくら質が極限まで高めれていても、そのほかの質が劣っていれば世界の質そのものが悪くなってしまうのじゃ。だから儂は他の世界に頼らざるを得ないという訳じゃ。そして、定期的に儂の管理している世界の者が勇者召喚を行うもので、儂も定期的に顔を合わせておる。」
なるほど。つまり、いくら強いやつを数人生み出したとしても、その他の人がいないとこの世界は成り立たないし、逆にいくら人を増やしたとしても、今度は自分たちを守り切れないという事か。
「向こうの世界からやってくる者たちは、儂の管理している世界を救うためだとか言って、いろいろなスキルを寄こせと言ってくる。そういった者たちは最初にいくらかスキルを渡してやれば、大人しくなるんじゃがの。性質が悪いと儂の与えたスキルで悪事を行う者もおる。そういった者は改めて儂と会って、反省の色が感じられんと儂がスキルを回収するのじゃ。ホントに面倒じゃわい。」
こっちの世界の神の愚痴は終わったようだ。
「それじゃあ、俺への用はもう済んだって事でいいのか?」
俺は、そろそろ疲れて来たためそう聞くと。
「ん?そうだな。もう用は済んだから、今日はもう帰っても良いぞ。」
「今日は?」
「ああ。また用ができたら呼び出すから。だから今日はって言い方をしたんだよ。嘘を吐かれるのは嫌いだろ?」
「まあ、そうだけど⋯⋯⋯。あんまり頻繁に呼び出すのはやめてくれよ⋯⋯⋯。」
「―――善処しよう⋯⋯⋯⋯。」
地球の神から帰って来た、不穏な言葉に聞き返すとその意味と、そしてこっちの世界の神からは前向きではあるが、確証は得られない返事が返って来た。
その言葉に俺は、若干嫌な顔をしながらも帰してくれるように伝えると、こっちの世界の神が頷き、俺の足下に青白い魔方陣が浮かび上がり、俺の体は段々と薄くなっていく。
そして、俺の意識が暗転しようかというときに地球の神が、
「そういえば、伝えるのを忘れていたけど、戻ったらすぐに〈ステータスオープン〉って念じろ!そうすれば、お前のステータスが見れるからよ!それと、なるべく早くに魔法を少しでもいいから使えよ!使った分だけお前の魔力量が増えるからな!忘れんなよ!!」
という結構重要そうな内容が聞こえた。
その声に俺は聞こえるか分からないが、「言うのおせえ!」と言おうとして、
「言うの⋯⋯⋯⋯。」
と言ったところで、俺の意識は途切れた。
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そして、俺がいなくなったすぐ後に2人の神は話し合っていた。
「あやつ、最後に何か言おうとしておったぞ。」
「―――ああ、そうだな。」
「お主が言うのを忘れておったからじゃろうの。」
「―――だろうな。」
「次会ったら何と言われるか⋯⋯⋯、楽しみじゃのう。」
「⋯⋯⋯。」
という会話が続いていたという。