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気儘に異世界を冒険したい  作者: 雨空ウテン
4/12

記憶

ちょっとグダグダしてしまいました。

話が少し脱線してます。

最初の方で不快に思った方は読み飛ばして下さい。


それでは、本日2話目です。

 ――――――ここは?


 俺は周りを見渡して非常に懐かしい気がした。


 およそ8畳程の広さの部屋。その中心にはそこまで大きくはない炬燵があり、炬燵の周りには壁に向かうように置いてある勉強机、窓を挟んで反対側にはシングルサイズのベット、窓の反対側の壁に扉があり、左側に本棚、右側にテレビとゲーム機が置いてある。


 全ての家具に見覚えがあり、全部が懐かしく感じる。


 そして、勉強机の上の写真にはかなり見覚えのある顔が映っていた。いや、見覚えがあるでは済ませれない。確実に知っている。それは、俺が高校の頃やっていた部活動のメンバーだ。






 ――――――――俺は高校の頃まで野球漬けの人生を送っていた。そして、高校3年生の時の最後の試合、地元の3回戦で負けた。はっきり言って、ダサい試合内容だった。最初の方は1点差で勝っていた。だが、このまま勝てるとみんなが思い始めたとき、1人のエラーがきっかけで連続失点を喫し、そのままの流れで最終的には何とかコールド試合を阻止した形となった。 


 誰がエラーしたかと言えば、もちろん俺だ⋯⋯⋯。


 俺が守っていたのはファーストで、1アウトまで取ってから俺のところに平凡なゴロが転がって来た。

 それを俺は落ち着いて処理すれば良かったのに、何をトチ狂ったのか後ろに逸らしてしまった。


 それから色々あって、結局負けた。チームのみんなからはかなり責められた。

 試合が終わってからも、普段の生活で殴る蹴るの暴力はもちろん、鞄から何度財布を盗まれたのかは数えるのも嫌になり、途中からは数えていないが、覚えているだけで20回に届いたはずだ。


 今思い出してもかなり憂鬱だ。

 それがきっかけで俺は人を信じきれなくなった。


 だが、俺の人生の苦痛はそれだけでは終わってくれなかった。


 高校を卒業してすぐに俺は就職をした。


 地元の中の中小企業の中ではそれなりに大きな会社だった。


 最初は同僚だけでなく、先輩方もみんな優しかった。

 わからない事があれば、理解するまで根気強く教えてくれた。

 だが、途中からその環境は一変した。

 俺は営業をしていたが、その事業部の部長がとにかく突っかかって来た。


 事ある毎に、俺に対して仕事を押し付けていく。

 それが社員全員に割合の差はあれども、割り振っていくのなら納得はできた。

 だが、その部長⋯⋯⋯⋯もうこの際あいつでいいか。あいつは俺1人に仕事を集中させて押し付けていた。俺がその仕事をやりきれずに残業をしていると、次の日には毎回怒声が飛んだ。理由は、あいつが営業をしていた時はこの程度の仕事量でも定時に帰っていたとのことだ。だが、俺は知っている。あいつは俺が残業をすることによって、残業代(経費)が増えるのを上から注意をされているという事を⋯⋯⋯。俺は大して悪くはない。いや、寧ろよくやっている方だと思う。俺は全体の成績では1番か2番を常にキープしている。そんな俺だけに自分の仕事を押しけるのはどうかと思うぞ。女子社員には一切仕事を押し付けずに、男性社員のみに仕事を押し付けるというのは会社内では有名な話だった。


 そんなあいつにいつまでも好きにさせたくはなかった俺は、毎年ある社員と社長との面談の際に直談判することにした。だが、実際に話してみて感じたのは、あいつだけが腐っていたわけではなかった。会社の役員全員が腐っていたのだ。もはやこうなってしまっては、流石に俺1人の言葉程度ではどうしようもなかった。しかし、意外なことにその直談判をしたのは俺だけではなかったようだ。他にも店長クラスからもそういった話は出ていた。その話を聞いたときに俺は素直に嬉しかった。俺だけが異常だと捉えていた訳では無かったのだ。


 数日後のボーナスが払われる日に、事件は起きた。

 周りにはボーナスが手渡しされているのに、俺には何もない。

 俺は不振に感じ、直接聞くことにした。


 ⋯⋯⋯⋯だが、俺の疑問に返って来たのは、無情な仕打ちだった。

 俺には無いらしい。

 俺は3年間ずっと営業の実績は常に良かったはずだ。

 それなのに俺に対しては何もない⋯⋯⋯⋯。


 俺はおかしいと思って、再度社長に直接聞きに行った。

 が、返って来たのは社長の気持ちの悪い笑顔だった。

 社長が言うにはこうだ。

「君みたいな生意気な社員はうちにはいらないよ。君は入社してまだ5年しか経っていないよね。君みたいな立場のよくわからないような社員に払うお金は無いよ。君は何を勘違いしているのか知らないけど、私がこの会社では神なんだ。私の一言で君の事はどうとでもできるんだよ。君は、ここまで言っても分からない訳じゃないよね?」


 何が神だ!自分の都合の良いことしか考えていないお前の方がいらないんだよ!社員の言葉に耳を傾けない方がおかしいだろ!

 俺は思ったことが口から出そうになって、必死に堪えた。

 俺は、こんな事で職を失うわけにはいかない。

 実家には病気の母と、定年退職をした父がいる。

 それに、妹もようやく高校に入学をしたばかりだ。

 

 そんな状況で、実家への仕送りを打ち切れる訳がない。


 ただでさえ、妹にはこれからお金がかかる時期なのだ。


 それなのに、俺がこんなことで仕事を辞めていい訳がない。


 せめて、妹が就職をするまでは面倒を見なければいけない。


 だから、ここは堪えなければいけないんだ。


 そう考えて、俺は非常に嫌々ながらも、目の前の社長に頭を下げる。

 そうして、社長の前から逃げるように立ち去った。



 ――――――それから2年が過ぎ、妹もようやく就職先が決まった。


 これでようやくこの地獄のような日々から解放される。


 そう思った時、突然社長の怒鳴り声が俺の後ろから聞こえた。

「お前!何てことをしてくれたんだ!!」

 俺は何があったのかと振り返って確認をした。


 しかし、所長は俺の方を向いて明らかに怒っている。

「お前のせいで、大口の取引が取りやめになったんだ!この責任をどう取るつもりだ!」


 明らかに俺に向かって怒鳴り散らしている社長。

 その斜め後ろには、ニヤニヤとした顔でこちらを見ているあいつ。


 その顔を見て大体の予想はついた。

 恐らく、あいつが何かをやらかして、その責任を俺に擦り付けようとしている。


 こういった事は今までも何度か起きていた。

 俺にいつも良くしてくれていた、店長。途中から違う支店に配属された同期の社員。いつも俺とあいつとのやり取りを心配そうに見ていて、終わったら毎回声を掛けてくれていた後輩。今はみんな辞めていってしまい、原因を俺は本人から聞かされていた。みんなが口を揃えて、身に覚えの無いクレームや問題が原因で心が病んでしまった人もいた。

 今回は俺の番なのだろう。

 だが、何でもかんでも受け入れるつもりはない。


 俺は、自分に身に覚えが無い事と、その担当者があいつだという事を話したが、社長は全く聞く耳を持たない。


 それどころか、更に畳みかけてくる。


「お前のせいで、今回の商談が無かったことになったんだ!この商談が成立していれば、うちにとっては大きな利益だったんだ!それをお前みたいなポンコツが余計なことをしたせいで、この話が無かった事になったんだ!お前が責任を取るのが当たり前だろう!それをあろうことか、上司の責任にしやがって!お前みたいなヤツには暫く給料は出さん!!お前が責任を取り終わるまで、給料は無いと思え!!!」


 そう言って、社長はあいつを伴って帰って行った。




 そこからは、本当に地獄だった。


 まず、納得のできない俺は、さっさと退職をしてしまおうと思い、退職届を書いて提出した。


 だが、俺の目のでとんでもない事が起きた。


 なんと、社長が俺の目の前で退職届を破り捨てた、俺にこう言った。

「簡単に逃げられると思うな。お前が責任を全うするまで、辞めさせる訳が無いだろうが。」


 俺は、その言葉を聞いてここまでするのかと思った。


 だが、俺はまだ甘かった。


 俺は寝る間を惜しんで、一刻も早くあいつの尻拭いを終わらせるために働きまくった。


 そうして、俺は自分の成績があいつの損失分を上回ったのを確認してから、再度退職届を提出した⋯⋯⋯⋯しかし、

「お前はまだ責任を全うしていないだろうが!」 

 そう言われて、再度目の前で破り捨てられた。


 俺は、何を言っているのか分からず、聞き返すと

「部長からの報告では、お前はまだ半分も稼いでいないぞ!それなのに、何をぬけぬけと辞めようとしているんだ!」

 そう言って、俺の前にここまでの成績表が投げ出され、手に取って確認してみると、明らかに俺の成績が少なく記載されていた。そして、あいつの成績が鰻上りで増えていた。


 ここまでされて、ようやく俺は自分の考えが如何に甘かったのかを痛感させられた。


 そして、ここにきて俺の精神は耐え切れなくなり、その日の夜に俺は家族宛の遺書を残して自殺した。



『みんなごめん。俺はもうこれ以上耐えられない。もうこれ以上苦しみたくない。父さんと母さんにはもう一度顔を見せとけば良かったと思っている。でも、もう無理だ。ごめん。今までありがとう。』




 その遺書を書いてすぐに、俺の意識はブラックアウトした。




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