神との邂逅
次話は少しお待ちいただければと思います。
俺は、自分の体が浮いているかのように感じ、目開ける。
そこは、白い壁に囲まれたベットの上だった。
なぜベットの上だと分かったのかというと、俺の下には柔らかい布団が敷いてあり、布団を囲むように柵があり、柵まで近ずいて向こう側を見ると、少し高さがあり下の方に赤い絨毯が敷いてある。
そして、周りを見回して分かったことは、この部屋に入ってくるための扉は1つ。それも装飾が派手すぎず、一目見て豪華であると思わせられるものだった。
また、壁際に置いてある装飾品や家具などを見ても、その一つ一つが値の張るものだと感じさせられる。
さらに、俺自身の方はなぜか赤ん坊と同じ位の大きさである。
というか、赤ん坊である⋯⋯⋯。
そんなことを確認していると、突然頭の中にお爺さんのような声が響いた。
『ようやく目覚めたようじゃのう。』
俺は、その急に聞こえた声に驚き、驚きのあまり後ろに倒れこんでしまった。
その拍子に俺は、頭を強く柵にぶつけてしまい、襲い掛かってくる痛みによって泣いてしまった。
俺が泣き始めてすぐに扉が開かれ、外から女性が2人中に入ってきた。
その2人の内の茶髪の女性の方が俺の側にまで来て、何やら身振り手振りで何かを伝えようとしている。
俺は、その奇妙な行動を見て笑った。
その女性は俺が泣き止んだのを満足そうに見て、彼女の後ろで冷めた視線を送っている黒髪の女性に振り返って何やら話しているようだ。
(奇麗な人達だなぁ)
おれはその2人の女性のを見てそう思った。
日本とかでは一般的に黒髪は多く見るが、中には髪を染めていて茶髪にしたり金髪にしたりする人が多い。
だが、茶髪の女性は染めたような違和感は全く無く、外国人のような自然な色で、頭の後ろで一つにまとめていて、肩のあたりまでの長さだ。
黒髪の女性の方は、漆黒というイメージが湧くような色で、特にまとめたりなどはせずにそのまま下しており、腰のあたりまで届いている。
この二人に共通していることは、黒を基調としたメイド服を着ていることだ。
そのメイド服をよく見てみると、仕立てが良いのがよくわかる。
そして、茶髪の女性の方が、先程入って来た扉へと小走りで向かって行った。
それから、5分も掛からないうちに服装の違う女性を連れてきた。
その女性は俺のことを愛おしそうな目で見つめてくる。
(この人もすごい美人だな)
俺のことを見つめてくる女性は、透き通るような金色の髪で、メイド服よりも仕立てが良さそうな服を着ている。
その女性がゆっくりと両手を伸ばし俺のことを抱きかかえて、なにやら話しかけてくる。
当然ながら、俺には何を話しているのか分からない。
そのまま、俺に向かって微笑んで話し掛けたり、俺のほっぺを突いてきたりしていたが、暫くして満足したのか俺をベットに下ろし、最後に頭を撫でてから、彼女と黑い髪の女性は部屋から出て行った。
残った茶髪の女性は部屋の中にある棚から本を取り、近くの椅子に座って読書を始めた。
俺は、その女性を暫く見ていたが、だんだんと眠くなり、そして意識は暗闇の中に沈んでいった。
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どの位経っただろうか。
俺は不自然な浮遊感に包まれ、その不自然な何とも言えない感覚が嫌で目を覚ました。
その空間は見渡す限りの白、白、白、白、白......。
その空間に暫く呆然としていると、後ろから何度か聞いたお爺さんの声が聞こえた。
「また急にすまんのう。」
俺は、後ろを振り返りその声の主を見た。
声の主は、全身を白いローブで覆っており、フードの中にはその声の印象通り、日本でいう80代から90代くらいの年齢を思わせる顔をしており、長年生きてきたと感じられる深い皺が刻まれていた。
「儂はこの世界の神をやっておる。お主の以前住んでいた世界の神から頼まれてお主の面倒を暫く見るように言われてしまってのう。それでお主が最初にが覚めてから簡単に説明をしようと思って、声をかけてみたのだが、思った以上に驚かせてしまったようでのう。本当にすまんかった。」
そう言って、その老人は俺に対して頭を下げてきた。
だが、俺は正直何のことを言っているのか理解が追い付いていない。
そんな俺に対して、目の前にいる爺さんは俺が呆然としていることを許さないという意思だと受け取った様で、更にこんなことを言ってきた。
「も、もちろんタダで許してもらえるとは思ってはおらんぞ。いくつか儂からも特別なスキルや力を与えさせてもらう。お主の前世で住んでいた地球の神には借りがあるからのう。」
また何か話を進めているようだが、俺は話の内容が全く分かっていないため、
「え、えっと、お話の途中ですみませんが、何の話をされているのか分からないので、先に説明をして頂きたいのですが。」
「そうであったな。」
俺が話についていけないことを正直に話すと、目の前の爺さんが詳しく説明をしてくれた。
俺は、前世で自殺をしたこと。自殺した俺を不憫に思い、地球の神様がもう一度人生をやり直すチャンスをくれたこと。その際に俺の前世でのほとんどの記憶を消して、こちらの世界では不便な思いをする事がないように、いくつかのスキルや能力を特典として俺にくれたこと。そして、この世界である程度の便宜を図ってくれるように、この世界の神様(目の前の爺さん)に話していてくれたこと。
俺は、それらを聞いて正直に言うとかなり衝撃的だった。だが、何故目の前の神様はこんなにも俺に対して腰が低いのだろうかと思ってしまいそのことを聞くと、
「地球の神は、儂の上司に当たるからのう。もし、地球の神がこちらを覗きに来た際に、今、儂がお主にしているように、地球の神がお主に会った時に今回の事を言われてしまうと、気難しい人だから儂が不利になってしまう可能性がある。というか、絶対に儂に地球でのストレスを解消するための口実にする。だから、地球の神にはこのことは言わないで下さい!」
と言って、俺に対してこの世界の神様は土下座してきた。
なんとなく事情は理解したので、話を前に進めるために俺は
「言うかどうかは、これから決めますよ。」
と、満面の笑顔で言った。
目の前の神様はその返答に対して、かなり引き攣った苦笑いを返してきた。
「それよりも、質問ですがいいですか?」
「なんじゃ?」
「地球の神様からは、どんな特典を与えてもらったのか教えてもらってないんですが。」
「そうじゃったな。地球の神が与えた能力は、〈言語理解〉と〈アイテムボックス〉と全ての基本属性の〈魔法適正〉の最大値、そして、〈剣術〉、〈槍術〉、〈弓術〉の最大値じゃな。」
その返答を聞いて、俺はかなり驚いた。
「魔法適正って全種類持っているのが普通なんでしょうか?」
「そんな訳ないじゃろう。異常じゃよ。周りの者たちにばれたら、間違いなく面倒ごとに巻き込まれるじゃろうなあ。」
と疲れたような声が返って来た。
(いったいどうすれば良いんだ......)