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魔術の師匠はフリーター  作者: 五木倉人
少女、フリーターと出会う
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二人はここから始まった

「こちらが報酬になります」


「まいどありっと」


サラの初めてのグランドクエストは無事にその幕を閉じ、舞台は再び"機関"本部。


今サラの目の前で行われているのは報酬金の配布。もっと言うと、イブリスがそれを受け取る順番である。


今回のグランドクエストでイブリスはかなりの戦果を挙げた。サラはそれを実際に見ていたし、渡される報酬袋も他の冒険者に比べて一段重そうなものだ。


その報酬を機嫌よく受け取るイブリスに対して、それを見る冒険者は穏やかではない雰囲気を漂わせている。


「ちっ……またあいつかよ」


「悪魔の手先が……」


所々からぼそぼそと聞こえてくるそんな言葉。


もう慣れたのか、聞こえていないのか。イブリスは全く気にしないように、そしてそこに居る全員を煽るかのようにわざとらしく会釈をして本部を出て行った。


「サラさん、お疲れ様です」


イブリスが去り、喧騒が戻ってくる本部。その喧騒に紛れてセレナがサラに近づく。


「どうですか?ギルド、決まりましたか?」


「セレナさん、私、師匠にしたい人ができたんですけど……」


「まあ!」


サラの言葉にセレナは笑顔を浮かべ、嬉しそうな声をあげる。


「それはよかったです!その方の名前や所属ギルドは分かりますか?早速ギルド入隊の手続きを……」


「……こっちです」


「え……?わ、わわわ、サラさん!?」


サラは冒険者の合間を縫ってそそくさと本部を出て行ってしまう。


セレナはギルド入隊用の申込用紙を片手に、焦ってそれを追いかけた。


……ほぼ同時刻、イブリス・コントラクター。


「ふんふんふーんっと……7……いや8万くらいはあるか。これでしばらくは食ってけるだろ」


黒の魔術師は道を歩きながら先ほど受け取った麻袋を覗き込み、金貨の量を見積もっていた。


鼻歌まで歌っている。相当機嫌が良いのだろう。


イブリスはいわゆるフリーターである。無所属のためギルドクエストは当然受けられず、報酬の安いフリークエストを受けて生活している。


そんなイブリスにとってグランドクエストはかなり有益な収入源だ。しかも今回はいつもよりも多く報酬を手に入れることができたために、彼はこの上なく舞い上がっていた。


「待って……!待ってください!」


「さ、サラさーん!サラさんも待ってくださーい!」


あと少しで地面に叩き落されることになるとも知らずに。


「ん……んだありゃあ」


遠くから聞こえた呼び止める声に振り返ってみると、そこにはこちらに走り寄ってくる少女が二人。


一人は服装からして"機関"の受付嬢のようだ。もう一人は……冒険者。装備からしてプリースト。


一瞬、自分をひっとらえでもするのかと思ったが、どうにもそういうわけではなさそうだ。


「はぁ……はぁ……よかった、追いついた……」


「お、おお……大丈夫か嬢ちゃん。ってかよく見たらさっきの子じゃねぇか」


自分を追ってきたらしい少女が、追いついたとたんに膝に手をついて息を荒くする。相当頑張ってきたようだ。


遠くからではわからなかったが、クエストの時に自分が助けた少女と同一人物だったことも判明した。


「何だ?さっきの礼でも言いに来たのか?気にすんな、あんくらい……」


「い、いえ、それもなんですがお話したいことがあって……」


「話?うおっ」


少女は息を整え、やっと上体を起こしたと思うとその腰を再びがばっと90度に曲げ。


「お願いします!私を弟子にしてください!」


そう言い放った。


しばしの沈黙。街行く通行人も一瞬足を止める。


「……は?」「ええええええええ!?」


キョトンとしたイブリスの声が、セレナの叫び声にかき消された。

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