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心機(仮題)  作者: 山葵
第一章 「アンドロイドと心」
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第二話 「依頼」 2

さて、目的地まで約300メートル。この窮地をどうする…

既にこの少女、東雲 雲英の目的は達成しており俺が手伝うことはほぼないに等しい。

だが、すぐに俺の正体を明かすのは色々と面倒ごとに巻き込まれかねない、ここは少女の目的を聞き出すために探りを入れる必要がありそうだ。

しかし、なぜ俺の名前と住所を知っている?名前くらいなら今の情報化社会で容易く情報を得る事は可能だろう。SNS・ネット掲示板・検索サイトなど色々な可能性がありすぎて、正直情報漏洩の特定は難しい。

だが住所ってのはなかなか特定されずらい。なぜ名前と一緒に住所まで漏洩している?俺の周辺に情報を流す人物でもいるのか?もしくはこの少女が天才的なハッカーとか…いや、後者はあり得ないだろう。それなら俺の顔まで特定されている可能性が高く初対面で気付くはずだ。

…少女は俺の顔を知らない。知っていたのは名前と住所だけ、そこが不自然だ。それに俺に会わなければいけない理由とはなんだ?分からないことだらけで頭が混乱している…とにかく情報が必要だ。

今のところ少女から情報を聞き出すしかない、その手段を得なければ…


様々な憶測が飛び交い、思考回路がフルスロットルで働いていると後ろから声が聞こえた。

「ちょ、ちょっと待って下さい。歩くペースを私に合わせてもらえないかしら?」

その声で俺の意識が現実に帰ってくる。

後ろを振り向くと、少女は俺の歩幅に合わせるように早歩きになっていた。慌ててペースを落とし謝罪する。

「あ、あぁすまない、考え事をしていた。気を付けるよ」

だが、俺の謝罪がお気に召さなかったのか、少女は不機嫌な表情を浮かべていた。

「本当に心から謝っているのですか?誠意が込めてあるようには聞こえませんでしたが、…まぁいいでしょう。ところであなたのお名前をお聞きしていませんわ、なんとおっしゃいますの?」

「え!?あぁ、名乗っていなかったな…えぇっと」

思わぬ質問に俺は口籠ってしまった…思わぬもなにも、まだ少女に名乗っていなかったのだから少女にとっては当然の質問だ。これ以上怪しまれないように適当な偽名を考える必要がある…

頭を掻いているとふと脳裏に名前が浮かんだ、俺はそのまま少女に偽名を伝えた。

望月もちづき まことだ。よ、よろしくな。」

なぜこの名前が浮かんだのか…自分でも分からない。なにかアニメの主人公的な名前だったかな?まぁそれは置いておくとして。

恐る恐る少女の顔を伺うと、納得をした表情で素直に受け取ってくれたみたいだ。…少しは疑えよ。


「望月さんですね、よろしくお願いしますわ。ところでどこに向かってますの?行先くらい教えて頂けないかしら?」

「あぁ、俺の行きつけの喫茶店だよ。情報交換にはうってつけの場所だ」

情報交換という言葉が引っ掛かったのか、再び少女は怪訝な顔を浮かべる。

「情報交換?私は情報というより砂月さんに会えればいいのですが、別にあなたの情報は必要ないのだけれど」

「え?あぁ!言葉のあやだよ、そこまで深い意味はないさ。そういえば君はなんと呼べばいい?ニックネームとかないのか?ちなみに俺は望月さんでも、理さんでも、お兄ちゃんでもいいぞ」

我ながら危ない言葉を使う。話題を逸らすことでなんとか誤魔化せたみたいだが、今後はちゃんと言葉を選ぶ必要があるな…気を付けよう。

それと呼び名は、出来ればお兄ちゃんって呼んで欲しいなぁ…なんて淡い願望を晒してみたが、少女は当然のように答えた。

「なぜお兄ちゃんなんて呼ばなきゃいけないのですか…普通に望月さんっとお呼びます。私の事は雲英とお呼び下さい。呼称は必要ないですわ」

「えっ…いいのか?今時呼び捨てを望む子って珍しいな、それじゃ遠慮なく雲英と呼ぶよ」

雲英と呼ばれると少女は、はにかんだ笑顔を見せた。ほぼ初対面の人に呼び捨てで呼ばれて喜ぶ女の子もいるんだな…いや、この子だけだろう。


「それで結構ですわ。では、あなたの言う喫茶店という所に向かいましょうか。その喫茶店という所には、なにがありますの?」

雲英は俺より数歩前を歩きながら、興味深々な様子で尋ねてくる。

「そうだな、軽食からディナーまで色々ある。簡単に説明すると小さなレストランってところか…ちょうど腹も減っている頃だろ?ここはお兄ちゃんが御馳走してやるよ」

如何にもお兄ちゃんらしく振る舞ってみたが、雲英は妹みたいに甘えることなく丁重にお断りする…お兄ちゃん悲しい。

「あの、望月さんは私の兄ではないので、そこまでの施しを受けるわけには…砂月さんを一緒に探して頂けるだけで十分ですわ。それに、そこまでお腹もすいて…」

雲英が話しているとタイミングが良くお腹の音が鳴る。

お前はギャルゲーのヒロインなのか?タイミングがバッチリ過ぎて逆に怖いわ…

だが、さっきまでは独りで住宅街を彷徨っていて空腹どころではなかったのだろう。そう考えると俺がいて安心感を得られているって事か…こんなクズニートでも、たまには役に立つもんだ。


「こ、これは………レディーとして恥ずかしいですわ…」

赤面の顔を手で覆い隠す雲英。だから漫画のヒロインかお前は…

だが、俺はそれくらいの萌えポイントには引っ掛からんぞ。ギャルゲーで散々鍛えてきた萌え耐性は鋼より硬いからな!

まず、お前はレディーじゃなくガールだと訂正しておこう。

俺は頭をボリボリと掻き、羞恥心で満たされている雲英を宥める。

「まぁ…腹が減っているのは分かったよ。腹が鳴るのは生理現象だから、恥ずかしがることはないと思うが…空腹も食のスパイスとも言うし、今が最高のコンディションとも言えるだろ?という訳で、早速喫茶店に向かうとするか。俺のお気に入りスパゲティを御馳走してやる。食後のコーヒーも最高だし、病みつきになること間違いなしだぜ」

雲英からゴクリと唾液を飲み下す音が聞こえる。相当空腹なんだろうな…

「そ、そこまで言うのなら……お言葉に甘えて…御馳走になろうかしら………」

手で顔を隠しつつ、指の隙間から覗き込むように俺を見つめ渋々了承した。

そこはツンデレになんのかよ…こいつの属性がわからん。


「それじゃ行こうか。俺も空腹だし、ここで立ち話をしていても仕方ないだろ?」

「そうですね、私も喫茶店には興味があります!どんな喫茶店か楽しみですわ」

満面の笑みで答え、二人で肩を並べながら歩みを進める。

俺も結婚して子供が出来たらこんな日常を送るんだろうなぁ…なんて勝手な妄想を抱きながら俺は横目で雲英を眺めていた。


結局、大した情報を得られなかったが、雲英という少女の内面が少し垣間見えてきた。

今のところは危険な要素はないと判断し少し安堵する。

しかし、まだ核心には触れてはいないし、雲英の素性も不透明なままだ。今はこれ以上の情報を得るのは難しいかもしれないが、まだ喫茶店でも情報は聞き出せるチャンスはある。

だから急ぐ必要はないだろう。大丈夫!まだ慌てるような時間じゃない。

それに、俺も腹が減って思考が鈍ってきている。思考回路を向上させるためにも、糖を摂取しなければ…取りあえず腹ごしらえだ。

腹が減っては戦はできぬって言葉があるくらいだし…まぁ戦なんてしたことないし、これから戦をする予定もないけどな。

そして、なによりもあのカップ麺だった物体Xを食べずに済んでよかったと心から安心した。

※8/24 推敲・校正済み。

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