第四話 「平穏な日常の終わり」 4
マスターへの謝罪は意外にも簡単だった、"今度面白いアンドロイドの話をあるんだけど…"と言ったら急に機嫌が良くなりナポリタンの味付けもいつも以上に美味しものを出してくれた。
先日話していたアンドロイド事件がマスターも気になるのだろう、アンドロイドと付けばなんでも食いつきそうだったので試しに餌を巻いてみたら案の定入れ食い状態だった…マスターって案外ちょろいな。
代償を払ったが謝罪はしてない、まぁ謝ったところで簡単に許してはくれないと思うし等価交換としては妥当だろう。両手を合わせて念じるが空気しか生まれなかった。
腹も満ちて、食後の珈琲を啜ると雲英がタイミングを見計らったように尋ねてくる。
「それで、研究施設の件ですが…砂月さんはどうお考えなのですか?まず、引き受けて下さるのですか?」
「え?どう考えるも…まだ先の事なんて分からんしなぁ。それに引き受けるもなにも、雲英の依頼は達成していな訳で…俺に断る理由はないよ」
「依頼が達成していない?それはどういうことですか?」
得心をえない解答に雲英は顏を歪める。
「雲英の依頼は"八雲に人間と同じ心が宿っているかの調査"だろ?まだ八雲に心が宿っていると確証された訳じゃない。幾つか検証が必要だ」
先日の件でほぼ心が宿っていると言ってもいいのだが、確証されていない以上、雲英の依頼は継続中だ。
それに、この事はまだ公には出来ない。今現在、アンドロイドに心を宿すことは不可能とされてきたが、もし人為的に心を宿す行為を行えば、それは犯罪として罰せられる。八雲の場合、人為的行為ではないが、その証明が出来なければ犯罪者として疑われるのは明白だ。
更に、八雲の情報が漏れてしまえば世界情勢が狂ってしまうだろう、物事には順序というものがある。確証できたとしてもすぐに情報を開示するのは難しいのだ。もし順序を間違えてしまえば犯罪者として生きる事になってしまう可能性もあり得る。
正直この依頼はリスクが大きすぎる、俺の手には余るし失敗すれば雲英の取り巻く人達にも迷惑が掛かる…失敗は許されない。
だが、ここまで来て引く俺ではない。これでも学者の端くれだからな!探究心は誰にも負けていないつもりだ。なによりアンドロイドに心が宿るってのを俺自身が確証してみたい。表向きは依頼の為と公言しているが半分は俺の探究心も含まれている。
「まぁ、時間が限られている訳ではないし気長に検証していくさ。それともなにか問題でもあるのか?」
「いえ、引き受けて下さるのなら私からは何も言う事はありません。ただ、任せっきりといのも気が引けますので…なにかお手伝いは出来ないかと思っています」
「手伝いねぇ…」
腕を組んで暫し考えてみたが、特に思いつかない…頭を捻って唸っていると、違う事が頭に過る。
「そういえば、あの事件を雲英の叔父は知っているのか?」
叔父というフレーズに雲英の顔が少し陰る。やはりあまり良好な関係ではないらしいな。
「いえ、私からは何も伝えていませんが…恐らく知っていると思います。研究施設の件もなにも言わず援助して下さいましたし…あの人はそういう方なので…知らない振りをして全て知っている人…」
…なにその神みたいな人物、全知全能なの?現人神かよ…
これ以上雲英の叔父に関わりあいたくないのでこの話は触れないようにしよう。なにか危険な臭いがする…そう囁くのよ私のゴーストが…
俺は腕組を解き、再び珈琲を手に取ると一口含む。思考を停止して、なにも考えずただ珈琲を嗜む。
すると雲英が不満そうな顔で俺を見つめ聞いてきた。
「あの…私が何か手伝いたいと申し出たのに何もないのですか?……それとも私じゃ迷惑かしら?」
…すっかり忘れてました。まだお手伝いの答えを言ってなかったね。
上手く誤魔化せたかと思ったがそう簡単にはいかなかったらしい、雲英は不安そうな表情で視線を落としテーブルを見つめていた。そこまで落ち込まなくていいと思うけど…
仕方なく再び頭を捻ると一つの閃きが降りてきた。頭に電球でも付いた気分だ。
「それじゃ、たまに来て八雲の話し相手になってくれ。いつもオッサン相手じゃ八雲もつまらないだろうからな」
「え?そんな事でいいのですか?それではお手伝いと言うより遊びにいくようなものかと思いますけど?」
お手伝いの内容にご不満な様子の雲英は疑うような視線を向ける。
その誤解を解く為、俺はお手伝いの内容を詳しく説明した。
「そんなことはないぞ。八雲にも息抜きは大事だし、人と接することで心は成長する。心の成長は八雲を研究するうえで重要な事だ。だから立派なお手伝いだよ。八雲は息抜きが出来る。雲英は八雲に会える。俺は研究が捗る。一石三鳥とはこの事だ!」
自信満々に俺の見解を説いてみたが、雲英には屁理屈のように聞こえたのだろう。呆れたように軽く笑っていた。
一頻り笑ったら、雲英は姿勢を正し俺を真正面に見据えた。
「砂月さんがそうおっしゃるなら…そのお手伝い、快く引き受けますわ。」
雲英は満面の笑みで答えてくれた。
依頼の件もお互い納得できたようで、窓から差し込む斜陽をバックに多愛もない会話をしていると雲英の携帯から着信音が鳴る。ポケットから取り出し画面を確認すると"少し失礼します"と俺に断りを入れて電話に出る。
俺は特に返事をすることなく雲英とは反対方向へ体を向け、なるべく電話の内容が耳に入ってこないように努めた。
「……はい、雲英です。……はい……はい。…分かりました。…では、そろそろ其方へ向かいます。…では…」
電話を切ると、自然とお互いが視線を交わす。
内容は聞こえなかったが雲英の返答で大体の予想がついた。雲英も既に俺が理解している事を表情で読み取り多くは語らない。
「では砂月さん、そろそろ行きましょうか」
「……おう」
雲英に続くように俺は席を立ち、二人でマスターに"御馳走さま"と一言伝え雪月花を出る。
マスターの寂しそうな顔が忘れられない…どんだけ雲英の事がお気に入りなの?マスターこそロリコンではないだろうか…いやフェミニストか?そう考えると雲英にこのお店を紹介したのは間違いだったかな、雲英の身が危険だ!俺が命を懸けて守ってあげないと!…いや、守るのは氷華がいるから安心か。それじゃ遠くで見守っているのが一番安全だ。YES・ロリータ・NO・タッチ!
ロリコン疑惑が掛けられたマスターは置いといて、雲英と二人肩を並べながら夕日が照らす住宅街を歩く。陽が傾くと暑さも大分和らぐ、さらに夕風が吹き乱れ体感温度は気温数値より涼しく感じた。日差しは未だに強く視界を眩ませるが、先程の猛暑に比べると幾分か過ごしやすい。
雲英と二人で目的地を目指す。こうして歩いているとお互い昔から知り合っている仲だと錯覚してしまうが、実際は出会って一週間程しか経っていない。もう少し詳しく言うと、雲英と共有した時間は一日ちょっと言ったところか…はっきり言ってまだ他人も同然だ、知人でもなければ友人でもない。俺達は不思議な関係で成り立ってる。
でも、俺はこんな関係も嫌いではない。寧ろちょうどいいとまで思っている。
俺の人脈は浅く狭く。これ以上の関係を望むべきではないと自分に言い聞かせる。
俺って寂しい人間だろ?そんな事は重々知っている。俺はそういう生き方しか出来ないし、生き方を変えるつもりもない。ただ…
……その後に続く言葉が見つからない。言葉にしたくないだけかもしれないが、こんな心境は久しぶりだ…
雲英の歩幅に合わせ歩いていると、不意に雲英が此方を向いて声を掛ける。
「私、今が一番充実している日々を送っていると感じています。出来ればこんな日がいつまでも続くといいですね」
夕日に照らせれる雲英の微笑は歓喜とも哀愁とも見て取れる、その真意は分からない。分かったところで俺にはどうしようもない。
「…そうだな」
その言葉に俺は曖昧な言葉で返すしかなかった。
ようやく俺の根城にたどり着く。根城(雲峰壮)は夕日に照らされ、塗装剥げが目立つ外観が露わになり今にも崩れそうなほど脆く感じた。これは大家さんに相談した方がよいだろうか?でも、いらん事を言ってまた説教を頂くのは本意ではない。
ここはさり気なく塗装剥げの所を大家さんに気付いてもらい、大家さんの意思で壁の塗り替えを実施してもらうように仕向けるのが得策か。しかし、どうやって仕向けるのかが問題だ…
雲峰壮の改装計画が脳内で構築されていると、玄関先に二つの人影が見える。だいたい察しは付いていたが、雲英の呼び声で予想は明確になる。
「氷華!八雲!ただいま」
「雲英お嬢様、お待ちしておりました。既に準備は整っていますので視察をお願いします」
「雲英オカエリナサイ、私ノ新シイ住処ヲ、是非見テ下サイ」
氷華と八雲は雲英にお辞儀をすると、俺の部屋へ誘う。
あっれれー、おかしいなぁー、ここって俺の家なんだけどー?もしかして自分の家間違えたかな?
自分の家を間違える程、俺もボケちゃいない。俺は顏を引き攣りつつ三人に話し掛ける。
「ねぇ、君たち?まず俺に言うことがあるんじゃないのかな?あと、雲英。そこは土足禁止なんだから靴を脱いで上がるんだぞ!」
土足で上がろうとする雲英を注意し、二人の答えを待つ。先に口を開けたのは八雲だった。
「砂月様、御久シブリデス。御機嫌ハ、イカガデスカ?砂月様モ見テ下サイ。私ノ新居ヲ!氷華様ガ私仕様ニ、リフォームシテ下サイマシタ。キット砂月様モ、気ニ入ルト思イマスヨ」
「気に入るもなにも、ここは俺の家だから。既にお気に入りだしブックマーク済だよ!」
八雲には俺の家だと知らせてなかったのか、俺の家と聞いて少し俯いていた。俯きたいのは俺なんだけど…
続けざまに、今度は氷華が答える。
「私からは何も言う事はありません。雲英お嬢様と一緒だったという事は研究施設の件は既に了承済みと見えます」
「まぁ、確かにそうなんだが…お前には伝書鳩やらメールの事で色々文句があるんだよ」
「伝書鳩?メール?知らない子ですね…」
「お前…!」
怒りが爆発しようとしたが再び雲英に邪魔された。
「砂月さん!立派な研究施設が出来ていますわ。砂月さんも是非ご覧になって下さい!」
不意に裾を引っ張られ、バランスを崩しながら部屋に引き込まれる。
「ちょっと、待て!俺は氷華に言わねばならんことが…」
俺の声が聞こえていないのか、雲英は無視して俺を無理矢理引っ張ていく。抵抗しようにも転ばないようバランスを整えるのがやっとだ、それに服も破れそうなのでここは観念して雲英に付いて行くことにした。
部屋の一室にたどり着くと、天井まで届きそうな程にそびえ立つ機械が待ち構えていた。赤・黄・緑と点滅するランプに、無数のスイッチには小さく文字がうってある。
機械の中央にはドームの様な人一人が入れるスペースがあり、そこで八雲が休んだり、研究する場所なのだろうと予想出来たが、他の機械は一体何のためにあるのかさっぱり分からない…
雲英の言う通り、凄い設備だとなんとなく分かるのだが、これを喜んでいいものかは別問題のような気がする。まず、俺に扱いきれるの?普段からパソコンを扱っているからって、高度な機械を扱いきれる保証はないんだからね…
そんな不安を知ってか知らずか、雲英は目を輝かせ設備をまじまじと眺めていた。
このまま設備を眺めていても話は進まないだろう。ここらで一旦、二人の元に戻るよう提案しようとしたが、後ろを振り向くと既に二人ともこの部屋に来ていた。
設備眺めていた雲英に氷華が声を掛ける。
「雲英お嬢様、視察の方はよろしいでしょうか?」
「えぇ、実際に動いているところを見てみたいですが…また次の機会もありますし、今日はこれでよしとします」
「ありがとうございます。では、今日の行程は無事終了いたしました。後は砂月さんとメイドロボにお任せし、私達はお暇いたしましょう」
「そうですね。では砂月さん今日は楽しい時間を過ごせましたわ、またお会いしましょう。ではさようなら」
小さくお辞儀をし、氷華に誘われるように二人とも部屋から出ていってしまった…あの、この設備の説明はないのですか?俺、使い方分からないから研究しようにも出来ないんだけど…
撫肩の肩をさらに落としていると八雲がチョンチョンと人指し指で俺を呼ぶ。頭だけそちらに向けると、そこには大量の資料と説明書らしき紙媒体を抱える八雲がいた。
「……嘘…だろ?」
「イイエ、本当デス。」
まさかの独学を押し付けられ俺は落胆の極みを見せる。その仕草を読み取ってか、八雲は俺をフォローするように語り掛けてきた。
「砂月様ハ勉強ガ、御嫌イデスカ?私ハ勉強、楽シイデスヨ。勉強ヲシテイルト、自分ノ知ラナイ事モ学ベマスシ、ナイヨリ…」
「いや、今更勉強について説かなくていいよ…この歳になれば自然と勉強するもんさ。楽しいとは思わないけどな…」
八雲はそれ以上何も言わず、大量の紙媒体を渡してきた。
俺は嫌々ながら受け取りその場に腰を掛けると一枚、一枚とめくり黙々と目を通しはじめる。
暫く八雲と一緒に資料を読んでいたが、不意に八雲が提案をする。
「砂月様、ソロソロ喉ガ渇ク頃ト、御見受ケシマス。オ茶ノ準備ヲ致シマショウカ?」
「おう、気が利くじゃないか。よろしく頼むよ、台所にある物は好きに使っていいから」
流石メイドロボだ、俺は安心して八雲を見送る。
しかし、数十秒後に聞こえてきたのは雷でも落ちたのかと錯覚するような音だった、俺は急いで台所へ駆けつける、そこには派手に転んでいる八雲の姿があった。
周辺には数枚の皿と湯呑が割れ散乱している。水を汲んでいたであろう薬缶も床に転げ水浸し、頭には持参していた緑茶の茶葉が髪を緑色に染めていた。
この数秒でここまで散らかせるのはある意味才能かもしれないな…
俺は頭を抱え雲英の言っていた言葉を思い出す。
そういえば、このメイドロボ…恐ろしい程、家事が苦手だった…
凄まじい光景を目にした俺は一つの誓いを立てる"八雲には二度と家事を頼まない"と。
溜息交じりで八雲へ手を伸ばし引っ張るように体を起こすが、八雲は何も言わず俯いているだけだった。
俺は八雲に部屋へ帰っているように伝え、八雲から茶葉を受け取ると掃除を始める。
大方掃除も済みお茶の準備を始めたのだが、俺はふと何かに気付く。
それは違和感だった。この家に住み始めて数年経つが、こんなに騒がしい我が家は初めてだ。騒がしいことを悪くは思っていないが、何分独り暮らしが長かった為かこの空気に慣れない。まるで自分の家じゃないみたいだ…
今後は、八雲と一つ屋根の下での生活が始まるのだと思うと不安な気持ちが押し寄せてきた。だが、こんな俺でも、徐々に賑やかな日常を受け入れていくのだろう。人間なんだかんだで環境に適用していく動物なのだから、俺も例外ではない…そう思うと少しは気が楽になった。
今後は生活環境を見直さなければと、沸騰する薬缶を見つめながら一人思い耽ける。
お茶の準備が終わり、部屋に戻ると八雲は着替えを済ませ部屋の片隅に体育座りでブツブツ呟いていた。落ち込んでいるのは分かるが、その行動は怖いからやめてほしい…
資料の山を乱雑に片付け部屋の隅へ置く。隣の部屋からちゃぶ台を持ってきて、そこにお茶を二つ並べた。
「おい、お茶が出来たから熱いうちに呑んどけ」
俺の言葉にピクっと反応した八雲だが部屋の隅から動くことはなく、腕で顔を覆い隠している。
なんだこれ、久しぶりに面倒臭いことになってしまった…これは慰めなきゃいけないパターンなの?俺が悪い訳じゃないのに?……めんどくさ!!
…しかし、これからは八雲との共同生活が始まる訳だし、これくらいで根を上げていてはすぐに破綻してしまうだろう。
俺はフッと息を吐き八雲に語り掛ける。
「いいか八雲、俺はこれ位の失敗どうも思っちゃいない。それに事前情報がありながらお前に家事を任せた俺にも責任があるってもんだ。だからいい加減、機嫌なおせよ…」
アンドロイドを慰めた事なんてない、その戸惑いがやや口調が荒くする。
俺の声は届いているはずだが、八雲は顏を埋めたまま自分の気持ちを吐露しはじめた。
「砂月様ニ、責任ガアルノハ、間違イダト思イマス。全テ私ノ責任ナノデ、砂月様ガ心ヲ痛メルノハ、誤リデス。ナゼ私ハ、家事ガ出来ナクナッテ、シマッタノデショウカ?自意識ガナイ頃ハ、失敗ヲスルコトナンテ、ナカッタノニ…ドウシテデショウカ砂月様?」
「それは俺にも分からん、だから調べるんだろ。その為に雲英はこの設備を用意してくれたんだぞ?」
「デスガ、モシ、調ベテモ分カラナカッタ時ハ…私ハ、ドウシタライイノデショウカ?人ノ役ニモ立テナクナッタ私ハ、アンドロイドトシテ、ドウ振ル舞エバ、イイノデショウカ?」
「その時は勉強するしかないだろ?お前が好きな勉強だよ」
八雲は腕で隠れていた顏をようやくこちらに向けた、勉強というフレーズに反応したのだろう。俺はお茶を一口含み、話を続ける。
「家事が完璧に出来るまで勉強と練習の繰り返しだ。失敗した時はなぜ失敗したのか反省し、次回に生かす。その繰り返しで人は学習していくんだよ。それが成長と言うものだ、初めからなんでも出来る奴なんてこの世にはいない。アンドロイドにその過程はないが、今以上成長するには人の手がいる。まぁシステムアップデートみたいなものかな、しかし、人にはアップデートなんて便利な物はない。地道な努力と経験がその人を作り上げていく。それが人間だ」
八雲は真っ直ぐな眼差しを俺に向けている。俺も視線を逸らすことなく八雲を見つめ返す。
「八雲、いま君が立っている所は非常に曖昧なラインだ。君がアンドロイドを望むのなら、アップデートを施しすぐにでも家事の問題は解決するかもしれない。しかし、君が人を望むなら、自ら勉強し経験を得る事で家事以上の物…アンドロイドでは到底得ることが出来ない物を掴むかもしれない。これは可能性の話で必ず掴める保証はないが…さて、八雲はどちらを望んでいるんだ?」
俺の問いに八雲は座り直し、綺麗な正座の姿勢で答えた。
「私ガ今、ココニイルノハ、砂月様ヤ雲英、氷華様ノ御蔭デス。モシ、私ガ、アンドロイドノ道ヲ選ンデシマエバ皆様ヲ落胆サセテ、シマウデショウ……私ハ皆様ノ期待ニ応エタイ。コノママ曖昧ナ存在デハ、イタクナイノデス」
「それじゃあ既に答えは出ているだろ?」
「エェ、私ハ人デアリタイト、望ンデイマス。モシ検証ノ結果、人ジャナカッタトシテモ、ソノ望ミヲ捨テルコトハ、シマセン。砂月様、コンナ曖昧ナ存在ノ私デスガ、ヨロシク御願イシマス。」
深々と頭を下げる八雲。これでようやくお互いスタートラインに立つことが出来た。
この先長い道のりが待ってるのだが…その第一歩ととして、まずは手始めにやらなければいけないことがあった。
「こちらこそ宜しくな!…じゃあ早速設備の勉強からだ!」
設備を扱えなければ研究も出来ない…そう考えるとまだスタートラインすら程遠く感じてしまう。だが、八雲はその不安を払拭するように元気な声で"ハイ!"と返事をしてくれた。
その後、八雲がお茶と俺を交互に見つめ、俯きながら俺へ申し出る。
「……ソレト、一ツ申シ上ゲタイコトガ、アリマス」
「ん?なにかあったのか?」
「私、体ハ、アンドロイドノママナノデ、オ茶ヲ嗜ムコトハ、出来マセン。一応オ伝エ、シテオキマス」
……うん、知ってた。
この場合、俺だけお茶を飲むのことに気が引けたので一応八雲の分を用意したんだよ。その心遣いを分かってくれると嬉しかったんだが…まだそこまでは理解できなかったらしい。
今後、俺が食事や水分を取る時はどうしたものか……それ以外にも考えることが山積みなんだが、一つ一つクリアしていくしかないだろう。
俺は頭をボリボリ掻いたあと、二杯目のお茶をグビっと勢いよく飲み下した。
八雲と二人で資料を漁っていると、何気なく窓の外に目が行く。既に日は暮れて夕闇が広がっていた。その夕闇に紛れ街頭や、家の明かりがポツポツと小さな明かりを灯す。ゆっくりではあるが確実に少しづつ増える明かりを眺めていると、俺は物悲しい気持ちになってしまい心の中で静かに悟ってしまう。
"もう俺の平穏な日常は終わってしまった"と…
皆様こんにちわ、山葵と申します。無事第一章が終わりましたのであとがきを書いてみたしだいです。
まず、こんな拙い小説をここまで読んで頂きありがとうございます。私自身、小説を書くのが久しぶりで始めの方はなかなか執筆が進まなかったのですが、徐々に慣れてきまして昔の勘を取り戻しつつある今日この頃です。
しかし、ここまで来れたのは読者の皆様のお蔭かと私は思っています。感想はなくてもアクセス数があるだけで私はこの小説を続けて良かったと投稿するたびに思い耽っています。もし感想があれば是非よろしくお願いします。辛口の感想もある程度なら大丈夫かと思いますが…辛辣過ぎるのは心を痛めてしまうのでお手柔らかにお願いします。
さて、無事第一章も終わり今後、主人公とメイドロボを中心とした話になっていくと思いますが、この先どうなるのかは私自身も分かりません。…嘘です。一応三部構成になっていますので、そこまで読者の方々にはお付き合いして頂ければ幸いです。
では、今回はこの辺で、第二章のあとがきでお会いしましょう。
あと今更ですが、一応毎週日曜日の夜に更新しています。僭越ながら社会人の身なのでこのペースがやっとです。もし更新を楽しみにしている方がいらした申し訳ございませんがお許しください。なんでもしますから!!
それと来週は更新はお休みさせて頂き、第一章の推敲と校正をしていきたいと思っています。何気なく読み返すと文章は酷いし誤字脱字が多すぎ…毎回投稿前には一度読み返しているのですが、人間そんなものですよね。ヒューマンエラーは私の十八番です。因みに内容が大幅に変わる事はないので安心して下さい。
という訳で、第二章の更新は9月からになります。また皆様に会えることを楽しみにこの物語を続けていきます。それでは、よき小説ライフを!




