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山並家 ―自室にて―
私服姿――Tシャツとハーフパンツ――で彼はベッドに寝転がっていた。かれこれ三時間は経つ。
「…………」
早く過ぎればいい。電気を点けず、薄暗い部屋でそんなことを考える。
誕生日が過ぎれば、重荷から解放される。といっても、何時も重荷があるけれど。しかし、誕生日よりかは幾分軽くなるのだ。――だから早く過ぎればいい。
机の上に置いてあった携帯が振るえる。マナーモード機能が働いたのだ。
「……ん?」
ベッドから立ち上がると机に歩み寄り、黒色の携帯を手に取って、それを開く。
「メールね……」
届いたメールはクラスメイトの女の子からだった。メール画面を開き、内容を見てみる。
「誕生日、おめでとう……か」
軽く舌打ちをし、絵文字入りのカラフルなそのメールを削除する。
めでたくもなんともない。本当に祝ってほしい人には祝ってもらえないのだから。
携帯を折り畳んで力なく床に座り込み、膝に顔を埋めつつぎゅっと携帯を握りしめる。消えない罪に、胸が張り裂けそうだった。