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山並家 ―父親―

 


『お前の所為(せい)だ!!』



 父親の顔は、はっきり言ってあまり覚えていない。しかし言葉は覚えている。忘れることなど出来ない。


『お前の所為だ!!』


 ハルカが五歳の頃に、父親は彼にこう言った。


『お前の所為だ!! お前の所為で、死んだんだっ!』


 肩を強く掴まれ、揺さぶられる。

 両親がいないことは幼いながらに理解出来たが、それが何故なのかは解らなかった。

 父親はハルカの世話をしなかった。世話は姉――つまり伯母に任せていた。

 子供の時ハルカは、伯母を『お母さん』と呼んでいた。今は恥ずかしさもあり呼べずにいるが。

 父親に会ったのはその時が初めてだった。


『お前が――』

「……は、はははっ」


 はっとして我に返り、彼は感情なく笑う。思い出したくないものを思い出した。

 父親は自分を憎んでいる。母親を殺した自分を憎んでいる。だから捨てたんだ。捨てられたんだ、自分は。父は母を愛していたから――。




 


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