表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

ジャンケン王①

 玉木久史たまきひさしは、小さい頃からジャンケンで一度も負けたことがない男だった。史上最強ともうたわれ、知り合いの中では、誰も彼に勝負を挑もうという者はいなかった。

 久史の戦術を支えていたのは、その類まれなる洞察力である。

 彼はジャンケンの際、腕を振り下ろす直前に、相手の手の動きを凝視するのだ。

 握り締めた拳から人差し指と中指が動けばチョキ、全ての指を開く動作であれば、パー、微動だにしなければグー。それを、ほんの一瞬の中で判断できてしまうのだ。

 そうして相手の動きを見た上で、自分の出す手を決める。要するに、瞬間的な後出しジャンケンである……。

 そんな奇跡的な技を持つ久史にとって、うってつけのイベントが開かれた。


『第一回、全国ジャンケン大会』


 ルールは語るまでもないもので、単純にジャンケンで勝った者がトーナメントを進んで行き、最後まで残った時点で優勝だ。

 商品は百万円と、王者の称号。

 全国各地で予選会が行われ、勝ち進んだ猛者たちが今日の全国大会へと駒を進めていた。


 その中においても、久史の力は他を寄せ付けないほどに圧倒的だった。

「勝者、玉木久史!」

 歓声が沸き起こり、対戦相手が肩を落とす中、蝶ネクタイを締めた大柄なレフェリーによって、久史の腕が高く掲げられる。

「おめでとうございます、玉木さん!」マイクを持った司会者が、にこやかに駆けつけてくる。「これで決勝進出です。お気持ちをお聞かせください!」

 久史は感情を表に出さず、ステージ上から周囲を見渡しながら、事も無げに言った。

「特にありません。目的はただ一つ、優勝のみですから」

 余裕綽々なコメントに、再び客がざわめき立つ。

 ――ふっ。ちょろいぜ。

 その場にいる全ての人間が、自分に注目していることがひしひしと伝わってくる。そんな心地良さを背に浴びながら、久史は悠然とステージの裏へ下がっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ