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桜の夢と私たちの未来  作者: ゆりかストロベリー
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第2話 初めまして

「五月にはああ言ったけど・・・」

初めて1人で行動する愛華。今までは五月や兄の庇護の下で動いていたので、突然1人になってしまうと心細くなってしまうのです。

「1人でこれから過ごして行けるのかな・・・」

不安になってきた愛華は目の前にあった噴水の縁に腰掛けました。しかし俯いてしまうと涙が零れそうなので空を見ていたのです。すると1人の年上そうな生徒がやって来ました。

「もしかして・・・今日から初等部に入る転入生の子?」

「そ、そうです」

「良かった。初等部の先生に頼まれて迎えにきたんだ」

「そうなんですか」

「じゃあ行こうか。初等部まで案内するよ」

「お、お願いします」

目の前に居るのが年上だと分かっているので愛華は、緊張しながらも丁寧にお辞儀をしました。するとその先輩は愛華の手を握って歩き出したのです。

「でも、大変だね」

「えっ?」

「この時期の転入生って珍しいからさ」

「そ、うなんですか?」

「うん。この学園では過去に1人か2人居たくらいかな」

「そうなんですか」

「そういえば前はどの学校に行ってたの?」

桃音とうおん学園です」

「桃音って事はこの学院の姉妹校で、唯一の音楽学校だね。じゃあ音楽、得意なんだ」

「それほどじゃ・・・」

「別に無理して下手だって言わなくて良いよ。私の従姉もこの学園に居て、音楽が得意なの。だから得意な人に会うと凄いなぁって思えるんだよ」

「そうなんですか」

愛華は話をしていて気兼ねせずに何でも言える先輩だな、と思っていました。そんな愛華の気持ちを察してか、先輩も優しい表情をしていたのです。

「さぁ、此処が初等部の校舎だよ」

「此処が・・・」

「うん。えっと・・・転入するのは3年A組だから、3階かな」

「あそこですか?」

「そう。この学園は色んな事情で階段が全てエスカレーターになっているから。疲れる事はないよ」

「それは便利ですね」

「でしょ?あっ、担任の先生が来たみたいだね」

校舎の方を見ていると1人の若い女の先生が出て来ました。その先生が愛華のクラスの担任だと知っている先輩は、愛華をその先生の元へ連れて行ったのです。

「先生、転入生の子をお連れしました」

「ご苦労様。蘭乃(らんの)」

「それでは、私はこれで」

「えぇ。あの子にもよろしくね」

「分かりました」

「あ、あの。ありがとうございました」

「また会おうね」


「ようこそ。桜林学院の初等部へ」

「今日からよろしくお願いします」

「こちらこそ」

初等部の校舎に入った愛華は担任の先生の後について歩いていました。初めて見る場所という事で全てが新しく見えます。

「さぁ、此処が貴女のクラスになる3年A組よ」

「何だか賑やかな雰囲気ですね」

「転入生が来ると知らせてあるからね」

「そ、うなんですか」

「じゃあ中に入ろうか。今日からこの教室が貴女の居場所になるのだから」

「はい」

そして愛華は担任の先生について教室の中に入りました。するとさっきまでは賑やかだった空気が一瞬で水を打ったかのように静かになったのです。

「皆、おはよう」

『おはようございます』

「今日はこのクラスに転入して来た新しい仲間を紹介します。皆、仲良くしてあげてね」

『は~い!』

そのクラス全員からの反応に安心した先生は、黒板に愛華の名前を書き始めました。その間、愛華は自分を見つめる視線にしばらく笑顔をキープしていたのです。

「はい。じゃあ自己紹介してもらおうかな」

「は、はい。えっと・・・桃音学園のピアノ科から転入して来ました。夢園愛華(ゆめぞの あいか)です。分からない事ばかりなので仲良くして下さい。よろしくお願いします」

『よろしく』

「それじゃあ座席は・・・あの空席になっている窓側の席にしましょうか」

「は、はい」

「ゆりか、色々教えてあげてね」

「分かりました」

愛華は先生に示された座席に行きました。すると通路側の席には黒髪でボーっと外を見ている1人の少女が居たのです。

「あっと・・・初めまして。夢園愛華です」

「初めまして。私、雪宮ゆりか。これからよろしくね、愛華ちゃん」

「こちらこそよろしく」

愛華が隣の席になった生徒、ゆりかは愛華を笑顔で迎えてくれました。愛華は内心ホッとしていました。これなら楽しく過ごせそうです。


「さて、今日の予定だけど・・・」

「あの、先生」

「どうしたの?灯(あかり)」

「折角クラスに新しい仲間が加わったんですから親睦会をしたいなと・・・」

「なるほどね」

「もっとリラックスして親睦を深めたいです」

「耶弥(やや)も同じ意見ね」

するとクラス中から愛華と仲良くなりたい、という意見が溢れ出したのです。すると先生はパンパンと手を鳴らして、賑やかさを止めました。

「皆の気持ちは分かったわ」

『それじゃあ・・・』

「仕方ないわね。今日だけよ」

『やった~!』

「ただし他のクラスは授業中だからレクルームへの移動は静かにね」

『は~い』

担任の先生からの指示が出ると、次々に生徒たちは席を立ち始めました。しかし転入してきたばかりの愛華にしてみれば何処に行けば良いのか分かりません。

「ど、どうしよう・・・」

「愛華ちゃん」

「あっ・・・雪宮さん」

「レクルームだよね。一緒に行こうよ」

「う、うん」

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