1/4
プロローグ
♪ラララ~ラ ラララララ~
桜が町の花である静かな町、桜林町の夕暮れ。穏やかな川の流れと共に聞こえる小さな歌声。川の近くを歩く人々はその優しい調べに聞き入っていました。その人々の中には1人の少女が居ました。
「何て綺麗な曲なんだろう」
「どうなさいました?お嬢様」
「あっ、五月(さつき)。歌が聞こえるの」
「とても素敵なメロディーでございますね」
「うん。明日からが楽しみ」
「左様でございますね。では屋敷へと戻りましょうか。兄上がお待ちですよ」
「あっ、そうだね」
そして1人の少女・・・いえ、1人のお嬢様は執事にエスコートされて車に乗り込みました。車が走り去ると川辺で歌っていた人物も歌うのを止めました。
「あの子、見かけない子だったなぁ」
歌っていた人物は足元に置いていた鞄を持って土手を上りました。そのまま小高い丘の上にある学園の方へと向かって行ったのです。
「また明日も会えたら良いなぁ」