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聴覚障害者の日常

聴覚障害者の日常 一人旅 編

作者: ぷかぷか

 今年の4月から夫は単身赴任になった。単身赴任になっても、スカイプをつかって時々連絡をとっている。(『またまた遠距離』 参照)

 ついこの間の連休のことなのだが、子供たちの了解をとって、一人で夫の単身赴任先に行った。

 単身赴任先は日本海側で、簡単に新幹線ピューッと行けるところではない。時間はかかるが乗り換えの少なさで選んだのが、夜行バスだった。バスで一泊、夫の部屋で一泊、またバスで一泊の3泊2日の夜行って朝帰ってくるというスケジュールだった。

 本当ならもっとしっかりと時間を把握していて下調べもしておくのだが、この旅行では浮かれていたのかいろいろなことがあって気持ちもそぞろで神経質になっていた。

 引っ越しを手伝って以来、久しぶりに行くのだ。

 出かける前に、子供たちが何か些細なことでケンカを始めてしまい、時間も迫っていたために後ろ髪をひかれながらの出発だった。

 さらに、待合所で外国の人に声をかけられた。時間を聞かれたのかと思い、持っていた携帯の時計表示を見せた。でも、どうにか読めた口形からは、最後が「GONE?]だったようみえてもしかしたら見当違いのことをしたのかあれこれ気になってしまった。

 窓口のお兄ちゃんに「耳が不自由なのでよろしくお願いします。」と、チケットのチェックの時に伝えることだけはしたが、そんなこんなで注意力も甚だしく落ちていたと思う。

 バスが来たのが見えたので、窓口のお兄ちゃんに、「このバスか?」と聞いた。そうすると、「隣に並んでください。2号車です。」と答えた。

 バスの前には運転手さんがチケットを確認しているので、チケットをだして「聞こえないのでよろしくお願いします」と伝えた。

 バスは案外空いていた。チケットを買ったときは△マークで残席少な目という表示だったので、不思議に思った。この違和感を後で気が付き後悔することになる。

 パスがスタートし、やれやれと思って、夫にメールした。

 「今、無事にバスに乗れたよ。」

 「早くないかい?」

 「窓口も運転手さんにもチケット見てもらったから大丈夫だよ。」

 「待ってて、調べるから。」

 ………

 「君の乗ってるバスはY行きじゃないか?Tには止まらないよ。」

 「え?」

 「同じ名前のバスだけれど、行き先が全く違うよ。君の乗るバスは30分後に来るバスだよ。」


 当然動き出したバスの中ではどうしようもなくて、冷や汗がどっと噴き出た。

 救いは、携帯メールで夫とのやり取りができたことだ。

 

 「11時くらいに高速道路のサービスエリアで休憩をとるので、その時にバスの名前を確認し、運転手さんと相談しなさいね。」


 というメールの文を繰り返し見ながら、頭の中では、「どうしよう」ばかりがぐるぐる回っていた。


 はたして、サービスエリアについて降りてみたら、夫の言う通りY行きバスだった。青くなり、運転手さんに言いに行こうとしたら、運転手さんもアタシも見つけて


 「バスが違いますよ。」


 運転手さんのほうがアタシよりも青くなっていたような気がした。耳が聞こえないということを覚えていて、筆談をしてくれた。


 「車両同士で連絡をしています。しばらくお待ちください。」


 運転手さんによると、行き先は違うが、休憩するサービスエリアは同じだとのこと。30分の時間差を調整して、乗り換えられるようにします、と説明してくれた。

 確かに、窓口のお兄ちゃん、運転手さんのチケットのチェックも甘かったが、私も時間を確認しなかったしバスの行き先を目視確認もしなかったので、だいぶ迷惑をかけてしまっているという自覚はあった。「本当にお手数おかけしてすみません」を繰り返すしかなかった。

 車両同士の連絡の結果、次の日の早朝の休憩地Kサービスエリアで乗換ということになった。

 事の次第を、夫に伝えたら、

 「このトラブルにしっかり対処できたら許してあげましょう。君のヒヤリハット経験が今後の役にたつでしょう。」

 本当にあなたの機転のおかげで助かりましたよ。バス停であなたの顔を見つけたときは本当にうれしかったですよ。

 もちろん、そのあとは仲良く二人の時間を楽しみましたけれど、こんな一人旅はもうけっこうです……。



  



 

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