家で
「ただいま」
俺がドアを開けた音で気づいたのか、棗が出迎えに出て きてくれた。
「おかえり、兄貴」
「お、棗も帰って来てたのか。学校はどうだったんだ?」
靴を脱ぎながら背中越しに聞く。
「小学校の時とみんな同じだからいいけど、制服で変な感 じだったな」
「そうか、じゃあ、友達を改めてつくらなくてもいいな」
「でも、新しい友達を作りたいな。兄貴はどんな感じだったんだ?」
玄関から廊下を少し歩きながらそう聞かれて立ち止まり 頭に手を添える。
「高校って感じかな」
「中学の時もそんな事、言ってたぞ」
妹からの指摘に思わず顔を見て、「そうだっけ」とクチパクで言うと棗は頷く。
(参ったな、棗みたいに具体的には言えないし。)
「それじゃあ.....棗は今どんな感じだ?」
「.....中学生になったんだなって」
少し考えてから言ったのだろうが、棗も具体的には言えないらしい。
「俺もそんな感じだったんだよ」
「兄貴もこんな感じだったんだ.....えへ」
俺には聞こえなかったのでわからないが、何か喜んでい るみたいだ。
「あ、着替えたら遊びにいくから」
「え、自分も行きたい!」
「う~ん、みんなに相談してみるから待っててくれ」
うん!っと大きく頷き、居間に駆けて行った。
俺は短いポニーテールが楽しそうに揺れるのを見ながら階段に座り込んで、ポケットの中にあるスマホを取り出して、書き込みチャットのアプリを使って、みんなに連絡する。
八束:棗が行きたいって言ってるんだけど、
俺が書き込みを書き出すと、鳥の横顔をアイコンにし ている尋斗が書き出した。
尋斗:僕は構わないけど、遊びに行く前に教会に行くんじゃなかったの?
八束:それなんだが、明日の帰りにしようかと思って。
俺と尋斗のやり取りを読んで、厳つい爪が主張してくるドラゴンの手をアイコンにしている夏実が書き込んできた。っていうか、このアイコンをどこで入手したのだろうか。
夏実:そういう事ならアタシは構わないわよ。友理乃は?
夏実が問いかけると、妖精のシルエットをアイコンにしている友理乃が書き込む。
友理乃:棗ちゃんも中学生になったんだっけ?
八束:ああ、今日、俺達と同じ中学に入学した。
友理乃:じゃあ、私達と一緒にお祝いしょうよ!
夏実:そうね、棗と一緒に遊ぼっか!
尋斗:決定みたいだね。
八束:あんがと、棗も喜ぶよ。
「お~い、みんなも良いってさ」
居間に向かって声をかけると喜びながら駆け寄ってきた。
「やった~! じゃあ、自分も着替えるね」
「その服でいいんじゃないか?」
「こういう時のためにお気に入りの服があったりするんだ ぞ、兄貴」
「そうか、お互い着替えを終えたら、玄関に集合だ」
わかった!と言って階段を楽しそうに駆け上がっていく。
本当なら遊びに行く前に教会に寄りたかったのだが、棗が喜ぶのなら明日にまわすのも苦にはならない。
(そういえば、みんなで遊びに行くのも久しぶりな感じだな。「指令」の事で集まったりはしたが、本当の意味で遊ぶと いう行為をしていなかった。今日は目一杯遊ぶとしよう。)
俺も棗の後を追って階段を上がりながら、携帯を取り出すと夏実から、
夏実:言っとくけど、アンタの奢りだからね!忘れるんじゃないわよ!
と書き込まれていた。
(お年玉・・・はまだ、あったっけ?)と考えながら、喜んでいる棗とは対照的な暗い気持ちで部屋に入った。




