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守護精霊につき!  作者: 松代 彩瓦
指令 『悪魔姉妹の回収』
43/55

水鏡 紗恵莉

「さえちゃん、なんで?」


「なんで……ねぇ。それはこっちが聞きたいわね、穂紀」


 悪魔達の力で時間を止める空間を生み出した。

 手には竹刀を入れるための袋が握られていた

 戦う気のない穂紀の動きを止めるには十分すぎるほどだった。


「あなたは私の味方だったんじゃないの? あの時……、独りぼっちの私に優しく手を差し伸べてくれたあなたは、ここには居ないのね」


「ちがう、ちがうよ。私はさえちゃんのみ……」


「黙れ!!!!!! 私から大事なものを奪うものは味方じゃない!!!! 敵だ。」


 袋から竹刀を取り出す水鏡。

 だが、取り出されたのは竹刀なんて生易しいものではない。


 日本刀。


 さやつかつばも、鞘から抜き放たれたやいばさえも、全てが血のような赤。 

 鞘を教室の床に落とすと、水鏡は親友に向けて、構えをとる。

 刃先は、揺れない。

 腕も体も。

 迷いがない。

 完全に穂紀を敵と認識している眼。

 

「さえちゃん、嘘だよね……?」


「だまれ」


 柄を固く握る音がした。


「さえ、ちゃん……?」


「だまれ」


 音もなく、近づく。


「紗恵莉ちゃん!!!!」


「黙れぇー!!!!!」


 振り上げ、振り下ろす。


 ―――   ――――   ――――


「穂紀!!!!」


 八束が来る頃には、その刃は振り下ろされていた。

 だが、滴るものはない。

 つばぜり合いのような甲高い音が響いていた。


「この鼠がぁー!!」


「もう鼠じゃない!! ラファは天使だもん!!!」


 刃が降ろされた瞬間、穂紀は気を失い、倒れ。

 それを守るためにバリアを張り、真っ赤な刃を止めていた。


「ナイスだ、ラファ! お、おい!!」


「やめろぉー!!」

 

 八束は何も持たず走り、固く。

 力の限り固く握られた握りこぶしで、水鏡の顔面めがけて、勢いのまま振りぬいた。

 不意のこともあってか、水鏡は避けることができず、その握りこぶしをまともに食らう。

 水鏡の手から刀は離れ、ラファはあまりのことに目を見張って、八束を見た。


「はぁ、はぁ。 初めて人を殴った」


 気持ちが上回ってか、八束は感情で動いていた。

 その握りこぶしは力の限り固く握ったせいか、そう簡単に解くことができない。

 

「ラファ、大丈夫か?」


「うん、それより穂紀が」


「お前はその娘の介抱してやれ。オレたちは」


「アイツ等をどうにかする」


 ラファは無言で頷き、バリアを張ったまま穂紀を介抱し始める。

 ヴァスクは水鏡が落とした真っ赤な刀全体に結界を張った。

 すると、刀は悪魔の姉、エバリエとなった。

 結界のせいか、気を失い、倒れたままだ。 


「くっ……、アンタが清水八束……ね?」


 立ち上がるが、よろめいて、ふらついている。

 殴られたのは、結構こたえたようだ。


「そうだが……お前、親友に向かって刃を向けるとはどういうことだ?」


「親友? なに? その子、アンタらに私のことを話したの?」


「あー、お前のことは大体な。母親の浮気。父親からの虐待。そこから抜け出すために斎条家の養子になったこと。今は元親からの慰謝料を貰って、一人で暮らしていること」


「ほとんど、話してるじゃない。口が、軽いん、だから」

 

 口を切ったのか、話すのがつらそうだ。

 こっちの手は何とか直ってきたが、力が入りにくい。


「お前にとって、悪魔は家族か?」


「なに、いきなり。時間稼ぎ?」


「答えろ」


「そうね。家族のような、存在よ。同じ家に住んでるんですもの。そうなるでしょ」


「そうか。それは怒って当然だな」


 横目に倒れているエバリエを見る。

 だが、その余裕が仇になる。


「次は、正義のヒーローごっこ? いらないわよ、そんな同情」


「そんなことするくらいなら」と言いながら、手を振り上げるともう一本の刀が音もなく現れ握られた。

 (やばい……!!)


「アンタの命をくれるかしら!!!」


 振り下ろされた刃からは真空刃が出て、教室の壁、廊下を寸断した。


 (ここでは、戦えない。)

「ヴァスク! 外に出るからサポート頼む!」


「おい! まさか!」


「そのまさかだ!!!」


 また八束は走り出す。

 次は窓ガラスに向かって!

 そして、勢いのまま、その身で窓ガラスを割り、五階から外へと、広い運動場へと出ていくのだった。

 

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