交渉につき。
遊園地から帰ってきてからの月曜。
つまり、学校な訳だが、今日は4人ともそれぞれの席に座っていた。
昨日、穂紀からの話が本当ならば、悪魔姉妹の宿り主が同じ学校にいる事になる。
しかも、穂紀の親友だと言う。
四人はもちろん、面識はない。
その親友のことはだいたい、聞いている。
名前は、水鏡紗恵莉。
剣道部に入っていて、前に穂紀が友達の試合を応援しにいったのは、紗恵莉の試合を応援しに行っていた。
期待の新入部員として、高校に入ってからすぐに練習試合に起用され、健闘したらしい。
戦う事になれば、その腕は間違いなく発揮されるだろう。
今、悪魔姉妹が全快ではないことから話し合いを進めるにはもってこいなのは間違い。
剣道の腕がたったとしても、悪魔姉妹の力が少ないのであれば、勝ち目はある。
それに紗恵莉側も身元がばれているのは、わかっていることだろう。
だからこそ、こちら側から先手を打とうと考え、穂紀に最初に接触してもらっている。
「何とか成功すればいいんだが……」
『おいおい、口からもれてるぞ』
(すまん、ついな)
今日、戦いになるかもしれないからこそ、日頃、出てこないように言っているヴァスクたちが出てきている。
それがいつ起こるか。
敵とはまだ思いたくないのは、相手と近しく親しい穂紀が一番思っていることだろう。
(こんな気分になるのは、勉強が全くできていないのに試験が来てしまったような! 手の届かないところがかゆくて仕方ないような! そんな気分だ)
『落ち着いてくれよ。オレがバックアップするが、今回戦うのはお前になるだろうからな』
(わかってるさ、そんなこと。けど……)
「おい! さっきから後ろで何をやってんだ、気が散るだろうが」
一人で葛藤していると、前の席の草壁が話しかけてきた。
えらく久々にあった気がするが気のせいだろう。
「すまん、ちょっといろいろあってな」
「ん? いろいろ~?」
そういうと俺の顔をジロジロと見まわし、何か勘違いに近い真実にたどり着いたらしい。
「そうか……。気になる子ができて、どう告白したもんか考えてたんだろ」
「いや、まったくもって、そんなことはないんだが」
「俺に隠すってことは、このクラスの女子か? あ、お前がいつもつるんでるあの二人か? それとも、A組の斎条さんか?」
「だから、違うって言ってるだろ」
そう言って、俺は机に頬杖をついて、外を眺める。
見ていないが、入学初日に俺が騒いだ時の三人の顔が思い浮かぶ。
流れる雲、何の気なしになく鳥、登校中の生徒たち……、また勘違い野郎の無駄話……、教室の声に音……その全てが止まった。
上がっていく視界、椅子が動いた音、手と足の触覚、呼吸に鼓動。
いきなりのことに全ての感覚が遅く感じた。
バタン! ガラガラ!!
そう音を立てたのは、俺が立ち上がった時に倒れ始めていた椅子が倒れたみたいだ。
そのおかげか、俺は変な感覚から立ち直れた。
「尋斗! 夏美! 友理乃!」
呼んでも聞こえていない。
動きもしない。
「いったい、何が……起きたんだ」
「何言ってんだ。これをお前は経験済みだろ」
ここで動けるのは、俺とヴァスクだけ。
そうこんなことができるのは、アイツ等以外にはいない。
ということは……。
「穂紀が危ない!!」
「あと、ラファもだ」
俺とヴァスクは、E組を飛び出した。
向かうのは、穂紀とラファのいるA組。
今となっては、敵なのかもしれない水鏡紗恵莉から守るために。




