一方、その頃
八束達が教会で話をしている頃、そう遠くない一軒家でもカリジナのことで話をしていた。
「で、今日、その子に何があったの?」
八束達が通っている学校の制服を着た彼女は、自分の勉強机であろう机に学校カバンをしんどそうに置いた。
そのカバンは彼女の体重が少し乗ったせいか、悲鳴をあげるように形を歪めたが、どうでも良い事である。
「遊園地に行ってたみたいよ。遊べもしないのに物好きよね」
悪魔の状態になっているエバリエは、先日の戦闘でやられた片翼の様子を見ていた。
少し痛むのか、動かしては時に眉間にシワをよせて、治癒魔法を当てている。
「私が聞いているのは、なんでこの子が小さくなってて寝てるのって事なんだけど?」
首元の学校指定のリボンを外して、彼女の枕の上で丸くなって寝ているカリジナを見ながら、再度問う。
見たところ、怪我がないことに安心して、その本当に小さなほっぺを優しくつついた。
すると、軽くぐずられて微笑みがこぼれた。
「どうやら、アイツらと鉢合わせたみたいね」
「なんですって!」
大きな声を出した彼女に人差し指を口に当てるエバリエは、悪魔であっても妹思いの姉である。
また軽くぐずったのを2人で見て、頷きあう。
血のつながりはなくとも彼女もまたカリジナを思う一人の姉であるのは、言うまでもない。
「見てわかっただろうけど、怪我をしていないでしょ? どうやら戦ってはいないみたいなの。アイツらの精霊達も居なかったし、アイツらからも戦っていないと言っていたわ。もちろん、疑いはしたけれど、怪我をしていなかったし、嘘をついてもいなさそうだったわ」
「そう……。精霊達が居なかったなら、間違いなさそうね。精霊と力を合わせて戦うスタイルなんだから、戦えなくて当然といえば当然か……。それなら、なんでその子は小さくなったのかしら?」
エバリエと話をしている間に彼女は制服から着替えて普段着になって腕組をする。
「アタシ達がこの世界に逃げてきた時に、追手が使った結界に似たモノをその遊園地から感じたわ。それに似た結界を精霊達に出させていたから何かしらのアイテムで出して、この子の力を奪ったんでしょうね」
「その可能性が高そうね。あっちにはバックがいるだろうし、そいつが持たせたモノって解釈でよさそうね」
「アタシもそう思うわ。こっちの世界の人間は当然のように誰もが精霊を宿せるわけじゃないし、絶対にバックに誰かはいるわね。まあ、あの子と貴方は例外だけど」
「とりあえず、この線が強そうだし、バックも叩くようにしないと……」
「でも、向こうは正義あってでしょうから、誰かさんみたいにアタシ達の宿り主自体を叩こうとはしないでしょう、ね?」
悪魔の状態から人間の姿に戻ったエバリエは、彼女の顔を見ながら今まさに考えていることに茶々をいれる。
「何か、文句でもあるの?」
「いえ、別に~」
彼女の気に障ったようで、あからさまに機嫌を悪くしていた。
軽く睨みつけられたエバリエは、「おー、怖い怖い」と呟きながら笑った。
「全く、何がそんなに面白いんだか。 ちょっとシャワー浴びてくるわね」
「え、もしかして、誘ってるの?」
「馬鹿。部活で汗をかいたから流してくるだけよ。言っておくけど、あがってからも何も無いから」
「あら、残念」
キラキラとした瞳で彼女を見るエバリエはどうやら、ふしだらな事を考えて期待をしていたようだが、釘を刺されて、ベッドに倒れた。
もちろん、妹を起こさないように気遣っていた。
「あ、そうそう。あなたが気にかけてたほのり? と少し話をしたわよ?」
部屋を出ようとした彼女にエバリエがぼそっと言うと、部屋から出る事無く、扉をゆっくり閉める。
その扉にもたれかかって、腕組をする。
「ど、どんな話をしたのかしら?」
たれ目を無理につり目にして、ゆるみそうな顔を必死に隠そうとするが、頭の中では穂紀でいっぱいのである。
エバリエにはバレバレで、体を起こしてベッドに座りなおしてからにやけた口元を隠した。
「そんなに聞きたい?」
「な! い、いいわよ……別に!」
そう言うと、部屋から出て行ったが、部屋から離れていく足音は聞こえてこない。
すると、ゆっくり扉をあけて。
「でも、あがったら聞きたい」
隙間からエバリエを見る目は、たれ目で無理をしていなかった。
「わかったわ。早く入っておいで」
照れながら頷いた彼女を見て、愛おしく思うエバリエの顔は、遊園地でカリジナの無事を喜んだ時のような目を細めて優しい表情を浮かべた。
彼女が戻ってきて、起きたカリジナから思いがけない事を聞かされるのは少し先の話。




