どうして、こうなった!?
八束達は今、電車で遊園地へと向かっている。
朝早いからなのか、乗っている車両には人が少なく、八束以外は向かい合いの席で四人楽しそうに会話を楽しんでいる。
「みんなで遊園地なんて、いつぶりだろうね?」
「小学生以来じゃない? 中学からは精霊の事もあったから言ってない気がするわね」
「ほのちゃんとは初めてだから、ものすごく楽しみ!」
「いつもラファが一緒だったから、すこし寂しいけど、私も楽しみだよ」
八束は一人でその隣の向かい合わせの席に座っていた。
四人を横目で見た後、外を見ながら先日のティナの話を思い出していたのだ。
――― 先日 ―――
「私の正体を話したところでもう一つ、話さないといけない事があります。これは精霊、そして、私自身がここにいるのか、その理由と目的です」
人間界にいるはずのない存在、精霊とエルフがここにいる理由。
話さないといけない、成さなければいけない、その目的。
「私は、ある方に命を受けて、こちらの世界にやってきました。その命は『人間界に失踪した堕天使の姉妹の身柄確保』というものです。言ってしまえば、この命自体が理由であり、目的。そして、皆さんに精霊が宿っている原因とも言えます。穂紀さん、ラファさんはまた別ではありますが……」
「ちょっと待って。もしかして、そのある方が失敗したことの尻拭いを私たちがしないといけないってこと?」
「焦らないで下さい。指令として皆さんに話しているのではなく、私に関わっている皆さんに話さないといけない事だからこそ話しているのです。事が起きてからでは遅いですから」
「どういうことなの?」
「先日もそうですが、皆さんが戦っている悪魔こそ、堕天してしまった姉妹の姉・エバリエ=アザゼルなのです」
「「「「?」」」」
「精霊界では、天使が天使としての務めを放棄した時、それを天使という位から堕ちる事を『堕天』と言います。さらに、そうなってしまった天使を『堕天使』と言います。そして、堕天使になった者が更正する事無く辿り着くのが『悪魔』なのです。悪魔になったものは、天使の頃に比べて大きな力を得ることができますが、力を失うとたちまちその体に悪影響を及ぼされます。個人によるもので、エバリエの場合は身体の縮小ですね。」
「あの悪魔が…。でも、そこまで脅威と思いませんでしたよ。八束が居なくても僕たち、三人とヴァスクがいれば…」
「先程も言いましたが、悪魔は大きな力を持ちます。もし、相手が本気を出せば、皆さんの学校を粉砕できる力も出せるかもしれません。相手にもリスクはあるでしょうから滅多にないでしょうが……それに近い力を出すことはできるでしょう……。その悪魔が二人。それに一人の悪魔に対して、人が三人と精霊が四人で、脅威でないと言えますか?」
四人は固唾を飲んだ。
自分たちが戦っている相手がもし、最初から本気で来ていたら、穂紀をラファを守る事は出来たとしても、こちらも危なかった。
もし、二人で来られていたら……、考えるまでもなく、守ることができなかっただろう。
「なので、皆さんを鍛えなくてはなりませんね」
「「「「え……」」」」
柔らかく笑みを浮かべるティナだが、四人は死んだ魚の様な目をする。
「そんなに厳しいの!!?」
「そんな事無いですよ? ただ死にかけるかもですが♪」
「死!!?」
穂紀のリアクションが良いばっかりにティナはそれに乗っかって、楽しんでいた。
「冗談ですよ。とりあえず、皆さんでこれを使ってもらえますか? 福引で当てちゃって困っていたんですよ。皆さんの交友の証だと思ってもらえれば、嬉しいです♪」
穂紀に手渡されたのは、今向かっている遊園地のチケット五枚である。
――― 電車内 ―――
(なし崩しで遊園地に行ってるのは良いけど、ティナの言っていた事も気をつけないとな。俺は体調管理しっかりしないと。)
「何を考えてるんだい?」
「なんだ、こっちに来たのか。体調管理しっかりしないとなって」
「ティナさんの話の事、考えてたんでね」
「なんで、わかるんだよ」
「それはそうと、八束…遊園地にもジャージはどうかと思うんだけど」
「え……」
視線を感じる方を見ると、そこにはふくっれつら、にらみ、苦笑い。
どれも向けられた方は反応に困る表情だった。
「いや、これは妹の眼から逃れるために仕方なく着てきたんだ!」
「日頃からちゃんとした服装なら、こんな時でもジャージにならなくていいでしょ!」
「う、うるせ~な! いつもはジーパンのくせに!」
「まあまあ、今度から服装を考えればいいんじゃない?」
「とりあえず、しばらくはジャージから離れといけないね」
「男の人なら、やっぱりジーパンかな?」
「アタシと一緒とかごめんなんだけど、ジャージよりマシか」
「お前は何様だ!」
八束の今後の服装を話ながら、電車は魅惑の遊園地へと向かっていく。




