屋上にて戦闘 Ⅱ
「やったかな?」
友理乃はタクトを握ったまま、ヴァスクに聞く。
〔俺の攻撃は相方がいねぇから多少弱くなってんだ。殺れたかはわかんねぇーな〕
「このまま、終わりなら楽で良いんだけど」
「アタシは嫌よ、まだストレス発散出来てないし」
四人ともが、ヴァスクの攻撃を受けて吹き飛んだエバリエがいるであろう砂煙を見る。
壁ーーといっても、鉄編みのネットだがーーにぶち当たる音は大きなものだった。
攻撃は弱かったとしても、確実にダメージは与えられている。
だから、こちらも少しは余裕ができると思えた……だが、
「ふふふふ」
砂煙の中から不気味な笑い声が聞こえる。
三人は、武器を改めて持ち直した。
ヴァスクは、穂紀の所に戻って、念のために結界を張った。
すると、皆の視線の先では、片翼の黒い翼が現れた。
その翼は、羽ではなく、蝙蝠の翼に似通っている。
「やってくれるじゃないの。さすがにムカついてきたわぁ」
その片翼がはためくと、砂煙を払った。
すると、そこには先程までとはエバリエの姿が変わっている。
眼は紅く発光しているかのように眼光が強くなり、頭にはうねった角が二本生え、体も小麦色から黒くなっている。
本来ならもう一枚翼があるのだろうが……
〔はっ! 最初から本気出していれば、俺の攻撃でもう一枚の翼が出なくなるなんてことはなかっただろうによ!〕
そう、あの攻撃を受ける寸前に彼女は本来の姿になろうとしたのだが、間に合わず不格好になってしまった。
「うっさい、ハエね。アンタは最後でいたぶってあげるから、そこでその天使見習いちゃんでも守ってなさい」
「天使見習い…って、何のことだ!」
「そんな素直に話すとでも、思ってるのかしら? 悪魔は人間の女より口は堅いのよ? 覚えておきなさいな」
「なら、ボコボコにして吐かすまでよ!!」
そう宣言すると、夏実のガントレットが燃え上がった。
つけている本人は熱くないらしく、それよりもまた一段と雰囲気が違って感じられる。
「人間風情ができるならしてみなさいな、小娘!!」
空中に三叉の槍を五本作り出して、滑らかに不気味に動きだす。
それに加えて、両手も紫に発火しているようにも見受けられた。




