ちょっとした昔話 その1。
どうして、俺が守護精霊・「天使」と普通に話しているのか、と言うと.....これは俺がまだ中学に入りたてのガキの頃に遡らなくてはならない。
この辺に住んでいれば誰しも子ども頃には必ず遊んだであろう立派な自然公園があって、俺もその例外ではなくてよく友達と遊んでいた。
「今日はかくれんぼしようぜ」
「えー、俺はおにごっこがしたいんだけど」
「ダメだよ。それだったら足のおそい人がずっとおにになるでしょ」
「そうだな。じゃあ、かくれんぼでいいぜ」
そうだった。あの時は皆でかくれんぼしてたっけか。
「じゃんけんしようよ」
「まけねえぞ」
「さいしょは、ぐう。じゃんけん、ぽい」
「また、まけた」
「お前、じゃんけん弱いよな」
「みんな、かくれろ~」
確かにほとんど、最初のじゃんけんはアイツが負けてたよな。
それから俺達は隠れては見つかり、隠れては見つかり、鬼になれば見つけてを繰り返して、日が暮れていった。
「じゃあ、またな」
「あしたもここであそぼう」
「また、あした~」
そう、ここまではいつも通り、何の変哲もなかった。
皆と別れた後、俺は帰ろうとすると何故かその公園の木々に隠れていた白い物が目についた。
その頃の俺は何かと気になったら、いてもたってもいられない質だったようで、その白い物を目指して公園の奥へと走っていく内、その白い物が建物であることに気付き、更に足の回転速度は上がり、その建物にたどり着いた。
立ち止まった足に手をついて息を整えてから俺はその建物の扉に手を掛けた。
今、思えばこの行動が全ての始まりになる。
でも、そうなると思いもしなかった俺は目を輝かせながら扉を押し開く。
その中は夕日色に染まっているシンメトリーで外と同じ白い壁に色鮮やかなステンドグラス。
固定された木製の長椅子が並んでいて、一番に目を引いたのは中央にいる女神のステンドグラスだ。
俺はそれに見とれながら奥へと進んで行く。まるでその女神に近づこうとして、蝋で固めた翼で届かない太陽を目指して飛ぶイカロスのように少しずつ近づいていく。
だが、例に出したイカロスのように手を伸ばしても届かない。
その訳は俺の視界が突然、真っ暗になって我にかえったからだ。
その感触から布に顔を埋めたのがわかる。
「あら、お待ちしてましたよ、少年」
そこから声の振動を感じて、耳にも聞こえてそのぶつかったものは人であるのがわかって、俺は慌てて離れる。
顔を見上げたのだが、夕日が眩しくて見ることができなかった。
でも、そのシルエットと声から女の人だとわかる。
「来ないのでは?っと思いましたが。ま.....神のお言葉の通りですね」
その女性は俺に背を向けて、あの女神にお祈りを捧げていた。
服装やその仕草から、シスターである事がわからなかったガキな俺は、首を傾げるばかりだった。
「今日はもう帰らなくてはいけない時間なので、良い子は帰りましょうね」
そう言いながら振り向き、俺の肩に手をやり、振り返させて背中を押してくる。
「でも、ねえちゃんは帰らないのか?」
「私はここに住んでるですよ」
扉を開けられて、俺は自然と外に出て、女性に向き変えると、俺の目線の高さにしゃがみこんで、
「それじゃあね、八束くん」
「なんで、俺の名前知ってんの?」
「それが知りたかったら明日の朝に来てね」
ニコッと微笑んだ女性は俺の目に優しいそうな印象を刻み込んだ。
その時の俺は素直に聞き分けて、手を振りながら女性と別れた。
次の日の朝、俺は朝御飯を食べ終えるや否や、すぐにあの白い建物に向かった。
着いてから見ていなかったその白い一色の外周りを見ると、入り口の上には十字架が飾られているだけで他には飾りや囲いがなく、L字の様な形で建てられていた。
教会、今はすぐに分かる事だが、無知でガキの俺には分からなかった。
そして、悪夢の扉を開いていった。




