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守護精霊につき!  作者: 松代 彩瓦
指令「人探し」
15/55

昼時の騒動 Ⅰ

「あいつはホントに適当よね。何が『ヴァスクに任せたから後はよろしく』よ! アタシらは、あんたのパシりじゃないっての!」


「夏実、とりあえず落ち着こ、ね」


「落ち着いてられるか! 友理乃は、ムカつかないの! パシりにつかわれてるのよ! 病気が治ったら容赦しないんだから!」


「友理乃、触れぬ神に祟りなしだから」


「そうだね、この勢いだと私達に八つ当たりが来そうだもんね」


「なんか言った!」


「「いえ、何でもありません!」」


 フンっと鼻を鳴らし、弁当を食べる事でストレス解消しようとする夏実はその言動からわかるくらい八束に苛立っている。そして、友理乃と尋斗はこれ以上に夏実を苛立たせてはいけないと思いながら、肩身を狭くして弁当に手をつける。

 今は昼休みで三人は中庭で昼食をとる事にした。

 教室で食べない主な理由は言わずもがなだが、夏実の苛立ちがクラスの人に飛び火しないようにと、尋斗と友理乃が気を遣ったからである。

 それに加えて、守護精霊についての話もおおっぴらに話す事はできず、八束の書き込みの事を考えるとヴァスクがこの高校に一人で来るようなので放っておく訳にもいかない。

 今、八束達が探している人もきっと守護精霊が見えるはず。いきなり、他の天使が現れたら驚くだろう事は火を見るよりも明らかだ。

 騒ぎにならないように尋斗達もその守護精霊達もヴァスクがくるのを待っている状態である。

 出会い次第、守護精霊達は尋斗達と合流する事になっていて、こうして中庭でのんびりすることができるのだ。


「それにしても、ヴァスクがよく八束君の頼みを聞いたよね」


「確かに意外だよ。普段は八束の事を小馬鹿にしているのに」


「何か条件でも出したんじゃないの? この際、依頼が終わるならどうでもいいわ」


 苛立っている夏実に二人は苦笑いを返すしかない。


 

 ちょうど、尋斗と友理乃が弁当を食べ終え、自前のお茶を飲んでいると尋斗達の守護精霊がヴァスクと現れた。


『尋斗様、友理乃様、夏実様、お待たせしました』


「ありがとう、グライフ」


 尋斗は自分の守護精霊のグリフォンに礼を言いながら、くちばしを優しく撫でる。

 グライフも少しだけのどを鳴らす。

 そして、後ろにいた妖精とドラゴンも、それぞれの主人の元に寄っていく。

 友理乃も「フェリア、ありがとうね」と言うと、妖精のフェリアも「フェリア達にかかれば、こんなのちょちょいのちょいですよ♪」と友理乃の肩に座り、腕組みしながら自信満々に言う。

 夏実は「お疲れ」と言うだけで、ドラゴンも頷いて、夏実の肩近くにいるだけだ。

 三人の守護精霊達は、フェリア以外はヴァスクと同じく小さい姿をしている。

 等身大でいると、霊感がある人に容易くわかってしまうからだ。

 フェリアの場合は、もともと小さい姿なのでその必要がない。


「単刀直入に訊くけど、天使の宿り主は見つかったの?」


 夏実は、守護霊と戯れている二人をほっといて、今は傍に主人のいないヴァスクに問いかける。


『ああ、これの屋上にあるのを感じるぜ』


 そう言って、全学年が日頃、勉強している棟の屋上を指さす。

 尋斗達も見上げると、囲いのしてある屋上に目が止まる。

「ふーん、そこね」っと軽く返答する夏実の声に友理乃の慌てた声が重なる。


「あ、あれって!」


 友理乃は天使が指差した屋上とは違う反対側の空を指差した。

 その先には晴れやかな空には激しい違和感を醸し出す一つの雲である。

 ただの雨雲など生易しく感じる程のどす黒い雲がゆっくりと近づいて来ている。

 三人と守護精霊達はその雲と対峙する。


「間違いない、ヤツだ。もしかして、天使が狙いなのか?」


「とにかく、屋上に急ぎましょ! アタシらで守ってあげないと!」


 夏実がそう言うと、友理乃も力強く頷く。


「二人とも、グライフの背中に乗ってくれ」


『俺達は先に行くぞ!』


 ヴァスクとフェリア、ドラゴンは先に屋上へ向かう。 


『さぁ、お三方も』


 等身大の姿になったグライフが乗りやすいようにかがみ、三人が股がる。

 股がったのを確認するた立ち上がり、たんでいた大きな翼を広げ羽ばたき、屋上に向かのだった。



「うーん、空の下で食べるご飯は美味しいね~。しかも、私しかいないのは、貸し切りみたいで嬉しいな」


 ヴァスクが指差した屋上の上では、一人の女子生徒が寂しく昼食を食べていた。

 しかし、その生徒は逆に、その状況を嬉しがっている。


「今日こそは、清水君の家のチャイムをならさないとね。あ、もう昼休みも終わりみたいだから、教室に戻らないと」


 腕時計の針を見て慌てて、持ち前の弁当を閉め、弁当包みで包み、袋に入れてから立ち上がり、スカートの汚れを手で叩くと、屋上の扉に駆け寄り、ドアノブをひねり引くが、


「あ、あれ? 扉が開かない」


 何度やっても開かないのは、鍵がかけられてしまったからである。

 そして、その鍵をかけた張本人は、その女子生徒から離れた空に浮かぶどす黒い雲の中で、


【な~かま、は~ずれ、み~つけた。】


 怪しく口ずさみながら、その口元は妖艶につり上がる。

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