次の日
火曜日、昨日の朝と同じように携帯が7時10分を知らせて、目が覚める。
今日は何だか頭がホワホワとして変な感じだ。
でも、体が動かない訳でもないので俺は布団から出ると、真っ直ぐ立っていられず後ろに倒れた。
後ろはベッドだったから良いものの、ベッドでなかったらと思うと全身に寒気が襲いかかる。
多分、これは恐怖から来るものではなく.....
「熱か、インフルエンザね」
「やっぱりか」
そう審判を下したのは俺の母である。
手に持っていた温度計を見れば、誰でもわかる8度8分。
(そりゃあ、後ろにも倒れるはな。居間に来るまで何かに掴まってないと歩けなかったもんな。参った。)
「おはよう、兄貴! 今日は早いんだねってなんかだるそうに見えるけど、大丈夫なの?」
「八束は熱があるの。もしかしたら、インフルエンザかもね」
「ええぇ! もしかして、昨日、棗が兄貴の上着貸してもらったから......」
「違うわよ。多分、遊びに行った所でうつされたんでしょ。だから、棗のせいじゃないわ」
また、べそをかきそうな棗を母は優しく頭を撫でる。ちょっと泣き虫なのは中学生になっても変わらない。
(ここにいても心配かけるだけだし、部屋でゆっくりしてれば、治るだろう。)
だが、ドアにかけた俺の手はしっかり母に掴まれた。
「ちょっと、どこ行こうとしてるの?」
「いや、部屋で休もうと思って」
「寝て起きたら治りました、なんてそんな事ある訳ないでしょ。あなた、学校に電話してくれる?」
「もうかけておいたよ。いつもの病院にも予約しておいたから、今から行ってくると良い」
そう言って受話器を置いた父はいつになくだらしない格好でキリッと母を見る。
(父さん、その格好ではお世辞にもカッコいいとは言えないぞ。棗だって.....、あれ? その惚けた顔は少しカッコいいとか思っちゃってたりするのか?)
「ありがとう、あなた。しっかりスーツ着て、会社に行ってね」
そう言われた父は頷くだけだった。
そんなこんなで、棗に見送られた俺は重い体を引きずりながら母に引っ張られ病院で診断を受けた。
そして、診断の結果はインフルエンザだった。




