遊んで、帰る
二十分くらいかかる駅に着くと、集合場所である駅の北口に向かう。
集合時間より少し早めにもかかわらず、みんなが集まっていた。
「お、来たね。八束に棗ちゃん」
上はセーターとカッターを合わせ着して、下はジーパンの尋人。
「棗! 久々~!」
上は無地の黒い長袖のTシャツに、下はジーパンの夏実。
「夏実だ! 久しぶり~!」
夏実と棗は、すこぶる仲が良くて会うたびに抱き合っているのをよく見る。
(一か月前も、見たな。)
「棗ちゃん、久しぶり」
淡い暖色のワンピースを中に少し大きめのコートを着ている友理乃。
夏実とは違って、女の子らしい服装である。
で、俺の格好はというと.....。
「八束.....、さすがにジャージはどうかと思うんだけど」
「そう、だね。八束くんらしいけど...」
そう、俺の格好は正真正銘の上下共々、ジャージ!
これほど機能的かつ気心地のいい服はない。
「俺はジャージをリスペクトしてるから問題なしだ」
「アンタ、ズボラも大概にした方がいいわよ」
「その格好で言われたくねえな」
「ふん! その生意気な口は数時間後に聞けなくなるのが残念ね」
夏実は腕組みしながら、ふんぞり返って俺を見る。
さすがの俺も少し冷汗をかいているのは、否めない...。
棗は俺と夏実のやり取りを見て、小首を傾げていた。
俺の奢りというのは話していないからだ。
遊びに行くのは、駅近くにあるアミューズメントセンターに行く事になっていた。
そこでみんなは心行くまで楽しみ。
俺の財布はなかなかの金額が入っていたのだが、今では隙間風がお似合いと言わんばかりに軽くなってしまった。
「はぁ~、あいつら。容赦ないな.....」
「でも、楽しかったぞ。兄貴.....くしゅん」
「なんだ、冷えたか?」
「う~、ちょっと寒い...」
「やれやれ、だから言っただろ。まったく...」
俺はジャージを棗に貸してやった。
「暖かくないかもだけどな。気休めにはなるだろ」
「...ううん、暖かいぞ! ありがと、兄貴! えへへっ」
そう言われて、俺も暖かくなる。主に、心がだが。
(うむ、兄として男冥利に尽きる。)
心の中で、ため息が聞こえた気がしたが、無視する。
「今度はもう少し、暖かい格好でな」
「うん!」
しかし、次の日には棗の事を言う資格はなかったのだ。




