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 「結構な稼ぎになったぢゃないの、今回は。古ラステア時代の金貨二袋に魔法強化された長剣三振り、それに護魔の装飾具が十個以上。

 まっ、“迷宮屋”の強欲親父の所でも六万五千Gは堅いわ。流石に地下八階層まで降りただけの事はあるわね」

 満足げな表情をしたミウがいるのは、迷宮の入口となっている古代魔法文明時代の朽ち果てた遺跡の前だ。

 その直ぐ後ろの崩れかけた壁にはミトラが肩で息をしながら座り込んでいた。その背中には金貨二袋、長剣三振りがしっかりと括り付けられた背負子が食い込んでいる。

 何時もは第四階梯(かいてい)に属する“物質移動”で運ぶ戦利品だが、今回は如何せん敵も一筋縄ではいかず、結局ミトラの魔力を繰る精神力も尽きてしまったのだ。そうなると最低でも六時間は充分な休養を取らないと魔力を繰る事も出来なくなってしまう。

 元々頭脳労働専門で力仕事は苦手なミトラは、慣れない接近戦と重い荷物に相当に参っただろう。かといってリュイに嵩張(かさば)る物を持たせれば接近戦に支障が出るし、ミウでは護魔の装飾具は持てても他は躰が小さすぎる。何よりミウに重荷を負わせるのはミトラの矜持(きょうじ)が許さない。

 結果、迷宮を出る頃にはミトラは話も出来ない位に疲弊しきってしまったのだ。

 「・・・・大丈夫?」

 ミウが座り込んでいるミトラの前にしゃがみ込んで尋ねる。何時もはここで毒舌が飛ぶところだが、流石に今回は心配そうだ。自分に気を使って重い物を全部ミトラが運んだ事位ミウにも分かっている。

 そんなミウを見てミトラはか細く微笑んだ。さながら天使の微笑といったところか。

 「なーんであんたはそんな時まで色っぽいのよ・・・」

 ミウは軽くミトラの額を小突く。そのままミトラの横に座り込んだ。

 「ほら、頭貸してあげるからリュイが馬車連れて来るまで少し寝てな。」

 短身のミウに長身のミトラが寄り掛かると、どうしてもミウの頭の上にミトラの頭を乗せる事になる。ミウにも負担が掛かる恰好だが、ミトラはその好意に甘える事にした。

 「まったく、無理しちゃって。」

 寄り掛かった途端に頭の上から聞こえだした寝息を聞きながらミウは悪態を付く。しかし言葉とは裏腹にその口調は優しい。しばら暫くは沈黙だけが二人を包んだ。

 遠くからリュイが手綱を繰る馬車の響きが聞こえてくる。



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