#148 閑話 とある船員の手記
まだ日が昇り切らないうちに目が覚める。半分は習慣なんだけど、飛空船は高いところを飛んでいるからか寒いことが多くて起きるのが大変。
なので隣で寝ているエル君を抱きしめて暖をとる。あったかい。ふわふわさらさらしてる。幸せ。
しばらくしてエル君が目を覚ましたら(ほんとはちょっと前から起きているの知ってる)布団を出て、朝ごはんにいく。
朝に食べるのはかたーいパンと、スープをちょっと! パンを浸してやわらかくしながら食べるの。
それでスープは温めるんだけど、飛空船は燃料を節約したいしできれば火を使いたくないからちょっと一工夫して。
朝は持ち回りで、当番の人が魔法を使って火をおこしてる。
“火炎弾丸”を手元で使い続けるのは地味に辛いけど訓練にもなるって、銀鳳騎士団でよくやってたらだんだん広まっていったの。
おなかを満たしてあったまったら朝のお仕事の始まり。
まずは機材の点検から。これはエル君が決めた銀鳳騎士団からの方針で、鍛治師だけじゃなくて動かす騎士自身が点検していくの。 こうしていればいざという時どんな問題があるか、すぐにわかるようになるんだって。
毎日のことだからそんなに大変なことじゃないんだけど、エル君だけずっと降りてこないんだよね。
幻晶騎士の操縦席にひっついてるエル君をはがして運ぶのが、私のお仕事かな。
空飛ぶ大地についてからはいつも、エル君とノーラさんが中心になって進路や方針について話し合っている。
情報収集といえば藍鷹騎士団の人たちの得意技なんだけど……さすがに飛空船が足りてなくて自由に動けないみたい。
あーでもない。こーでもない。ここ結構広いから、ぜんっぜん見つからないんだよねー。
キッドとか若旦那とか、どこにいるんだろ。ほんと森ばっかり!
今日はお昼を食べてから狩りの日になりました。やった、空飛ぶ大地に下りてエル君とお散歩!
ぼんやり光ってる木が生えてたり、やっぱり変わった場所だよね。
それで、たまに見かける鳥……鳥? を狩って帰る。毎日保存食ばっかりじゃ味気ないしね。
でもこのあたりで見かける鳥? って変わってて。脚が四本あるのとか、翼が四枚あるのとか、首が二つあるのとか、普通の獣だと思っても膜を広げて飛んだりするし。
とにかく空を飛べる獣が多いんだけど、さすが大地ごと飛んでいるだけはあるよね。
新鮮な獲物を狩って帰ると皆も喜ぶし。こんな風に丸一日使って、狩りに出る日を作ったりする。
皆も気合が違うよね。幻晶甲冑を着込んでるのは当然として、道具だって国許で使っていた本気のやつだし。
目の色が違う気がする……美味しいご飯、大事。
そうそう。たまに小魔導師ちゃんも降りて、一緒に森を歩くの。
巨人族にとっては飛空船でも窮屈だもんね。小魔導師ちゃんは大人しいから我慢してくれるけど。
息抜きになるのは上部甲板に出たりとか。
そこから周囲を見回すのは大好きなんだって。ずっと森ばっかりだけど飽きないのかな。
日が落ちる前には移動を止めて、錨を降ろして船を固定する。
暗くなってから移動するのは大変だしね。うっかり船をどこかにぶつけたらすごく困るし。
私たちの“銀の鯨号”は強化魔法も使ってて見掛けよりもずっと頑丈なんだけど。長旅に無理は禁物だって。
それで夜は皆さっさと寝ちゃう。何人か、見張りの人が交代で立ってくれてるけど。いつもありがとうございます!
身体を拭いて汚れを落としたら私もおやすみ。
水も貴重だしね。でも空飛ぶ大地にも川があるから、いざとなれば補給はできるしちょっと気は楽かも。
エル君もお仕事終わり。なので一緒にお布団に入る。
ふはー、エル君はいつもいい匂いがしてすべすべしてて今日もえるえる■■■■■■■■■(ここから先は黒く塗りつぶされて読めない)




