【50】 爽香、競艇場からの帰り道
デビュー節の全日程が終了した。
欠場1回、それ以外はすべて最下位という散々な結果。
競艇場から自宅までの帰り道を、爽香は重いスーツケースを引きずりながらトボトボと歩いていた。
爽香(ついにデビュー節が終わっちゃった……)
爽香(本当に惨め……誰とも顔を合わせたくない)
爽香(あたし、養成所を出るとき松木教官になんて威張っちゃったんだろう……『無事故完走でケブラーズボン、3着以内でレース用シューズ。もう貰ったも同然です。教官、約束ですよ!』なんて……)
爽香(甘かった……自分が恥ずかしい……。教官が言っていた『全レース無事故完走』すら出来なかった……)
爽香(そして『フライングや転覆を起こしても絶対に泣くな』って約束も……)
そう思った瞬間、我慢していた感情が決壊し、大粒の涙が溢れ出した。
爽香(ふたつ目の約束も破っちゃったよ……!)
爽香「ううっ……うあぁぁん……っ」
爽香はスーツケースの手を離し、道端にへたり込んで泣き崩れた。
どれほどの時間が経っただろうか。たま通りかかる通行人が、丸くなって肩を揺らす爽香を不審そうに見つめながら、関わり合いにならないよう通り過ぎていく。
爽香(こんなんで……これからボートレーサーとしてやっていけるのかな……)
圧倒的な現実を前に、底なしの不安が押し寄せてくる。
それでも、爽香はフラフラと立ち上がり、再び歩き出した。涙を手背で何度拭っても、次から次へと溢れて止まらなかった。
爽香(あーあ……やんなっちゃうな……)




