入って来られない?
二十数年前、入院していた時の話。
私が入院していた部屋は六人部屋で、私がいたのは部屋を入ってすぐ右側のベッドだった。
出入り口のすぐそばであったため、ベッドの周りのカーテンを閉めても、ベッドからはカーテンの裾から出入り口の引き戸のあたりがよく見えた。
ある日気分が悪かったので、昼間であったがベッドの周りのカーテンを閉めてうとうととしていた。
と、その耳に何やらパタパタという足音が耳についた。誰かが出入り口のあたりを歩き回っている様だった。
「……」
私はぼんやりと出入り口の方を眺めた。出入り口の引き戸が開いており、廊下が見えた。そしてその廊下に、
ナースシューズに白いストッキングの、看護師さんらしい足がウロウロとしているのが見えた。
しかしその足は、出入り口のあたりをパタパタウロウロとするばかりで、部屋の中には入って来なかった。
あの看護師さんは何をしてるのかな、と思いながらまた眠ってしまった。
以来ベッドの周りにカーテンを引いていると、カーテンの裾に足が見える事があった。
ナースシューズの足は出入り口をパタパタとするばかりで、部屋に入ってくる事はなかった。
ある夜、何時頃かはわからないが、ふと目を覚ました。
ベッドの周りに引いたカーテンの裾を見ると
なぜか出入り口が開いており、消灯された暗い廊下に、ナースシューズを履いた足が立っていた。
何やらぞっとした。
パタ、と足は一歩部屋の方へと踏み出した。
怖かったが、このままあの足が部屋に入って来られるのはよくない、となぜか思えた私はカーテンを掴み、シャッ!と音を立ててカーテンを開けた。
出入り口には誰もいなかった。
以降、私は退院するまで、ベッドの周りのカーテンは閉め切らず、出入り口のあたりが少し見える様、開ける事にした。
カーテンを少し開けていると、足が見える事はなかった。




