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一人百物語

入って来られない?

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/07/18


二十数年前、入院していた時の話。

私が入院していた部屋は六人部屋で、私がいたのは部屋を入ってすぐ右側のベッドだった。

出入り口のすぐそばであったため、ベッドの周りのカーテンを閉めても、ベッドからはカーテンの裾から出入り口の引き戸のあたりがよく見えた。

ある日気分が悪かったので、昼間であったがベッドの周りのカーテンを閉めてうとうととしていた。

と、その耳に何やらパタパタという足音が耳についた。誰かが出入り口のあたりを歩き回っている様だった。

「……」

私はぼんやりと出入り口の方を眺めた。出入り口の引き戸が開いており、廊下が見えた。そしてその廊下に、

ナースシューズに白いストッキングの、看護師さんらしい足がウロウロとしているのが見えた。

しかしその足は、出入り口のあたりをパタパタウロウロとするばかりで、部屋の中には入って来なかった。

あの看護師さんは何をしてるのかな、と思いながらまた眠ってしまった。

以来ベッドの周りにカーテンを引いていると、カーテンの裾に足が見える事があった。

ナースシューズの足は出入り口をパタパタとするばかりで、部屋に入ってくる事はなかった。


ある夜、何時頃かはわからないが、ふと目を覚ました。

ベッドの周りに引いたカーテンの裾を見ると

なぜか出入り口が開いており、消灯された暗い廊下に、ナースシューズを履いた足が立っていた。

何やらぞっとした。

パタ、と足は一歩部屋の方へと踏み出した。

怖かったが、このままあの足が部屋に入って来られるのはよくない、となぜか思えた私はカーテンを掴み、シャッ!と音を立ててカーテンを開けた。

出入り口には誰もいなかった。

以降、私は退院するまで、ベッドの周りのカーテンは閉め切らず、出入り口のあたりが少し見える様、開ける事にした。

カーテンを少し開けていると、足が見える事はなかった。



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