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8話 桃子と武装した男、そして恐怖の老人

「っ!!!」

長身の男が勢いよく開いた扉に向けて銃を向けた。


勢いよく開いたトビラの音が鳴り響いた後、Barの中は静まり返っており、真っ暗闇の廊下へ空気が吸い込まれていくように風が動いているのを感じた。


銃を向けた廊下の先からは誰も出てこなかったが、銃口の向きをBarの入り口から変えることが本能的に出来ず、じわりと嫌な汗が額を伝っていた。


「・・・おい何してる」

ズボンを脱ごうとした小柄な男が、未だに身を体育座りをするかのように屈んだ姿勢を取っていた。


「早く銃を構えろ・・・やつがいるぞ!」

やや声が震えながらも、冷静な口調で小柄な男に声をかけていたが、


「・・・ドサッ」

小柄な男は身を屈んでいた姿勢から、徐々に横向きに体が倒れていった。


「おい!何やって・・・る・・・っ!」

腰が抜けて倒れたのかと思い、大声で注意をしたその時、倒れた男の頭から血がゆっくりと流れていき、そのまま血の水たまりが作られていった。

その様子を見て、言葉を声を失っていた。


「キ、キャアーーーーー!!!」

その確認と同時に、桃子も流血を確認したようで叫び声を上げていた。まだ長身の男は横目で桃子を確認した。


「くぅ・・・!!!」

仲間がいつの間にか殺されている現状と、桃子の恐怖を煽る叫び声で、内心冷静になれずに取り乱していた。


「ど、どうやって・・・!」

いつ仲間が殺されて、どうやって殺られたのかが分からず、それを考えながらも身の危険を感じていたため、そのまま変わらずに銃口をBarの入り口に向けていた。


「どうやってって・・・ドアを開けた瞬間に銃で撃っただけじゃよ」


「っ!!!」

背後から声が聞こえたことに気づいた時には、すでに喉元にナイフを突きつけられていた。その時、ようやく背後の人がいる気配を感じることができた。


「遅くなったのぉ〜桃子ちゃん」


「何で・・・いつの間に背後に・・・!」


「廊下にいたあいつら達もそうじゃったけど。お前さん達は何でもかんでも人に聞くのぉ」

老人が自分の背中によじ登っているかのような姿勢になっていることに、この時ようやく男も気付いた。


「ろ、廊下のあいつらって・・・じゃあもう全員・・・」


「とっくの間に死んでるぞ。この後の部隊も含めての・・・」

自分の妻が6名狙撃した件について、簡単にそう説明した。


「そんな・・・こ、こんなのが相手なんて聞いてないぞ!」


「そりゃあー、任務に入る前に事前に情報を集めてなかったお前さん達が悪いのぉ。自分で情報を集めるのはこの業界の常識じゃぞ。ましてやターゲットがはっきりとわかっているのなら尚更のぉ」


「くっ!そ、そもそもどうやって後ろに・・・」


「お前さん、仲間が倒れた時と桃子ちゃんの叫び声でよそ見してたじゃろ。その時に中に入っただけじゃよ」


「なっ・・・!」

よそ見というほどのものなのか、ただ横目で一瞬だけ叫び声のする方向へ視線を向けただけで、銃口も顔の向きも廊下の方向を向いていたし、警戒を続けていた。


「そもそも、常に全身が力み過ぎな上に、仲間の死と叫び声で緊張しすぎじゃよ。そんな状態で警戒してても対して集中できんぞ。戦場で真っ先に死ぬのはそういうやつじゃ」


「っ!!」

常人だったら目の前で仲間が死んだら狼狽えるし、叫び声が急に聞こえたら驚くのは当然だったが、その当然が相手にはないようで、明らかに相手との戦闘の経験値に差があることを感じた。それはまさに異常者のように男の目からは見えた。


「桃子ちゃんや・・・無事じゃったか?」


「・・・は、はい!」

床に座り込んでいるのにも関わらず、再び腰が抜けているのが分かった。

しかし、腰が抜けた理由は先ほどのような恐怖心からではなく、いとも簡単に男達に殺されそうになっていた状態から、あっという間に男達を圧倒している老人を見たからで、人を殺したという事実よりも、助けに来てくれたという安堵から腰が抜けているようだった。


「銃を床に捨てるんじゃ。ナイフも。下手な動きをしたら刺す」


「わ、分かった・・・!」

ガチャッ

男は抵抗することなく両手をパーにし、銃を床に落とし、ゆっくりとナイフも床に落とした。


「さて、これで殲滅したが・・・桃子ちゃん!ちょっといいかの?」


「・・・え?」

急に老人から声をかけられ驚いていた。


「お主には今後のためにも色々と教えなきゃいけないことがある。せっかくのいい機会じゃからよく見ておれ・・・」

そう言うと、老人はナイフを突きつけていた男の背中を蹴飛ばし、拘束を解除した。そして、男が床に捨てた銃とナイフを部屋の隅へ蹴飛ばした。


「ほれ、まだ死にたくないじゃろ?素手でワシに勝てたら見逃してやるぞ?」


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