6話 老人 VS エレベーターからの刺客 その2
「な!さ、さっき仲間が確認していただろ・・・!なぜ居るっ!!」
声を震わせながら、意識の外から出現した老人に大声を浴びせた。老人の背後は部屋の窓から入る月明かりが僅かに差し込んでいるが、微量な光量のため目の前にいる老人の表情は見えなかった。
「何でって・・・部屋の中に隠れてたからに決まってるじゃろ」
「こ、こっちは暗視ゴーグルで確認してたんだぞ!隠れてたってすぐに分かる・・・!」
「あー間違えたわ。正しくは隣の部屋におったのぉ・・・」
「(隣の部屋って・・・こいつは何を言ってるんだ⁈)」
仲間が今確認した部屋から間違いなくターゲットが出てきたため、目の前にいる老人が何を言ってるのかが全くわからずに絶句していた。
「だから・・・暗視ゴーグルを装備していることを想定して、窓から伝って隣の部屋に隠れてたんじゃよ。それなら暗視ゴーグル使っててもバレないじゃろ・・・」
「(窓から伝って来ただと⁈だから何を言ってるんだ⁈こいつは・・・⁈」
ここは1Fではなく6Fであったため現実的ではないこと考えると、やはり老人の回答は理解ができなかった。窓の外を伝って隣の部屋に居たのはまだ理解できたが、そこから音もなく窓から侵入して仲間を襲うなんてことはできるはずないと考えていたからだった。
「な、なぜ・・・⁈」
ただ一言だけ、声を震わせながら、自分たちが味わっている不条理についての説明を老人に求めた。
「はぁ・・・お主らも曲がりなりにプロなんじゃから自分で考えないといかんぞい」
目の前の老人がそう言いながら、呆れながらため息をついていた。
「まあ、先輩として特別サービスじゃ。お主らの歩いていきてる位置や、部屋に入ったかどうかは音で確認したんじゃ」
「お、音だと・・・?」
「お主ら、割れた照明の破片を踏んで音を出してたじゃろ?本物のプロは足音を完全に殺すから場所が探れんので念の為、電球の破片を撒いておいた。ただ・・・お主達は雑談するわ、ドアを開けるのに音出すわで、要らん工作じゃったがのぉ・・・」
「っ・・・!」
照明が割れていたのは暗闇を作るためではないと言う事実を知り、その上で仲間と無駄なお喋りをしていた自分自身を強く後悔させた。
「あとはクリアリングが終わるのを見計らって、窓から侵入して背後から襲っただけじゃ。本当は廊下で背後から銃撃する予定じゃったが・・・」
「部屋の入り口から窓まで5mも離れてるのに・・・そこから足音を殺してナイフで襲うなんてそんなこと・・・!」
そう言いつつも、相手の回答を待つまでもなく、頭の中では「出来る訳がない」と言う言葉でいっぱいだった。
「それくらい出来ないとこの年まで生き残れんわい・・・市街戦とゲリラ戦の専門じゃからのぉ。どうやらワシの情報を調べてないようじゃな・・・」
「っ!!!」
背筋が凍る思いだった。
目の前で仲間が殺され、銃を突きつけられている時よりも、なぜ仲間が殺されたのか、なぜ今自分がピンチなのか、その理由を目の前の敵に丁寧に解説されるという、圧倒的戦力差を思い知らされたからだった。
そして、戦闘技術、経験値、頭の回転が明らかに上なため、もし敵の情報を調べ、徹底的に対策を練ったとしてもまず勝てないだろうと痛感させられていた。
「この結果は置かれた環境と、そこでこなした経験の差じゃよ・・・」
そう言うと、こちらに向けた銃を構え直していた。
「ま、待て撃つな!わ、分かった!こちらの情報をやるからやめてくれ‼︎」
必死に敵意が無くなったことをアピールするかのように、両手のひらを老人に向けた。
「・・・なぜワシを襲う?」
「依頼人から殺すように言われて・・・そうすれば元々そっちに依頼する予定だった高単価の仕事をこっちに譲ると言われたからいつもの仲間達と一緒に・・・本当だ!」
小柄な男は必死になってそう弁解するかのように説明をした。
「・・・ふむ」
老人はこちらの様子を見てそう声を出すと、構えた銃を下ろし、そのまま老人は仲間の首に刺さっていた果物ナイフに手を伸ばしていた。
「(・・・今だ!)」
こちらに向けていた銃を下ろしたのを確認した瞬間、先ほどまで廊下を警戒しながら進んでいた時に握っていた銃を老人に向けようとした。
「・・・シュッ」
その瞬間、果物ナイフが自分の額に勢いよく飛んできて、そのまま深く額に刺さった。
「・・・殺し屋として最後まで戦おうとした部分は認めよう」
そう言いながら、額に刺さった果物ナイフを抜き取った。
「・・・これで弾丸2発分の温存できたぞい」
自分の仕事に満足した老人は足早にBarへ向かった。




