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2話 2通目の手紙

「な、何この手紙・・・」

この日本語がどういった意味か、全く理解できずに困惑していた。


「なんじゃ、自宅に届いた手紙の内容と一緒かのぉ」


「ちょ、ちょっと何なのこれ・・・どう言うことなのよ⁈」

訳もわからず、ただ声を荒げていた。


「何ってそのまんまじゃよ。ワシ、以前は殺し屋をしててのぉ。そんなワシに依頼したいって聞いたから、呼ばれてこのBarに来たんじゃよ」


「な、何言ってるの?殺し屋なんて漫画や映画じゃないんだから・・・まさか会社ぐるみで私にイタズラしてるんじゃないの⁈」

老人からの話を聞けば聞くほど訳がわからず、徐々に錯乱状態になっていくのを尻目に、老人は大きくため息をついた。


「そりゃそうなるじゃろのぉ・・・可愛いそうに・・・」

そう他人事のように小声でボソッと言い、その声がこちらに届いた。


「な、何がかわいそうよ⁈勝手に太もも触りやがって!」

バカにされたような気分になり、そのついでと言わんばかりに先ほど我慢していたセクハラに対しての苛立ちも一緒に込み上げてきていた。そして、その怒りの勢いで持っていた手紙を握りつぶしていた。


「と、とりあえず落ち着くんじゃ・・・もう1枚手紙が入ってるんじゃろ?2通目も読んでおくれ。もしかしたら何か良いことが書いてあるかもしれんぞ?」

老人はヘラヘラしながら、両手をあげるジェスチャーをしながら声を荒げているこちらをなだめるように、そうお願いした。


「もうなんなのよ・・・!」

馬鹿げたイタズラにイライラしながら、握りつぶした手紙と一緒に持っていた、2通目の手紙を雑に広げた。


「・・・なんて書いてあるんじゃ?」

目の前に置かれたカクテルグラスを片手に持ちながら、そうこちらに尋ねていた。


「・・・えっ??」

2通目の手紙の内容は、1通目以上に何が書いてるかが理解できなかった。思考が先ほど以上に回っていなかったが、先ほどと同様に何も考えずに、書かれている日本語を読み上げるように声を出した。


=============

手紙


改めて今回の依頼をするにあたって、ミナモト様の実力を図るべく、勝手ながらテストをさせていただきます。内容といたしまして、無事にこのビルを抜け出すことを条件にご依頼をさせていただければと思います。

無事にビルを脱出できましたら、後を追ってこちらからコンタクトを取らせていただきます。


=============



「・・・」

もはや言葉も出なかった。荒唐無稽な文面を目の当たりにし、ただただ呆然としていた。


「何なのよ・・・これ・・・」

あまりに手の込んだイタズラの小道具である手紙を、バーカウンターの上に放り投げながら、うんざりしてそう小さく呟いた。


「まぁまぁ、落ち着きなさい。まずは深呼吸じゃ」

そう言いながら、こちらの肩に手を置こうとしたため、思い切りその手を振り払った。この後に及んでまだセクハラするのかと思い、再び怒りが沸き起こった。


「こ、こんなの・・・イタズラにしても悪質だわ!ろ、労基に訴えてやるわよ!」

あまりに馬鹿げたこのシチュエーションに苛立ちがピークに達し、そう叫んだ。


「そんなことしても無駄じゃよ・・・書いてあることは紛れもない事実じゃ・・・」

老人は大声で叫んでいるこちらを見ることなく、先ほどバーカウンターの上に放り投げたグシャグシャの手紙を見つめながらそう言った。


「はぁ⁈じ、事実って・・・あんたのようなのが殺し屋だって言うの⁈冗談も良い加減にしてよ‼︎」

自分の体を好き勝手触っていた老人が、実は殺し屋であるという告白を改めてされたことで、再びバカにされたような気分になっていた。


「冗談じゃなくてワシは元殺し屋じゃよ。キャリアも50年以上はある・・・」


「な、何が殺し屋よ!そんな殺し屋が何の目的にここにいるのよ!」


「だから手紙に書いてあったじゃろ。ワシはもう裏社会から抜けたいんじゃよ。そのためにこの依頼を受けようかと考えているんじゃ・・・」

こちらの問いに、そうゆっくりと手紙を見つめながらそう答えた。


「な、何言ってるの・・・」

こちらの興奮している様子を尻目に、落ち着いて話している老人の異様な雰囲気に、どんどん飲み込まれていくような感覚になっていった。

このような事態になることを事前に知っているかのような、はたまた慣れているかのような、そんな雰囲気を見ていると、先ほどまでのセクハラ資産家から、得体の知れない陰りのある謎の老人に見えてきていた。


そして、その雰囲気のせいなのか分からないが、この荒唐無稽のようなこともまるで事実かのように徐々に思わせるような空気が出ていた。



「ワシ自身、裏組織の連中から命を狙われている。その生活をやめたいからここにいる。それだけじゃ・・・」

そう言いながら、片手に持っていたカクテルグラスをほんの少し口につけた。


「・・・冗談じゃないわ」

老人の異様な雰囲気を振り切るかのようにそう言うと、呆れるようにしながら席を立った。そのまま帰ろうとしたのだった。


「まぁ・・・その上でこの手紙に対しての回答じゃが・・・」

片手に持っているカクテルグラスの中に入っているチェリーのツタを持ち上げながら間を空けた。


「暇じゃし・・・やってあげてもええぞ」


ガチャン!


そう老人が言った次の瞬間、目の前にいるバーテンダーが銃を老人へ向けた。


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