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6.鏡の前のリカ。前半

 これは数日前に遡る。


 「前髪、伸びたかな」


 目に掛かった前髪を手櫛で横に流しながら呟いた。毛の束が指をくすぐりながらその間を抜けていく。やがて毛先まで到達した。指という支えを失った髪は自重によって下に落ちてゆく。癖のないストレートな髪はここが指定地であるかのようにさらさらと元あった目の高さにきれいに戻っていった。


 次にこめかみから後頭部にかけて掻き上げると肩まで伸びた髪はウェーブを描き、さながら黒い蛇が移動をしているようだ。


 「そろそろ髪切りに行こうかなぁ」


 リカは再度自分に問いかける。とは言っても返答は返ってこない。彼女はいま自宅の洗面台で1人で身支度をしている。隣のリビングでは母が娘への弁当を作っているのだがその母に向けているわけでもない。


 「また似合わなかったらどうしよう」


 最近おしゃれに悩むことが多くなった。一目惚れして進学した学校の制服に身を包む女子高生。髪を短くしたいけど似合うか心配になっている女の子。なりたい自分を探している自分。鏡の中のリカ、あたし。


 鏡に映る自分の姿を見る。いつからか自分に勇気が持てなかった。なにかするにしてもまず初めに周りの目が気になってしまう。学校には友人がいる。しかし、相談するにしても本当の悩みを打ち明けることは敬遠してしまうため、唯一の相手として自分にに語り掛けることが日課になっていた。


 もし変われるとしたら変わりたい。おでこを前髪から出さないで活発に。人の前でも喜怒哀楽を堂々と。これが私だって言えるようになりたい。だから。


 「…短くしてみたいな」


 あたしはいま口に出しただろうか?思ったことがどこからか聞こえてきた。ここにはあたし以外にいないはず。だが一つ違和感に気付いたのは鏡の中ののあたしが不満げに前髪をいじっているところだった。

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