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4.白い天井

 リカの言った言葉の真意が分かった梨花。自室のベットで放課後の出来事を思い返す。

 どっと疲れた。梨花は家に着くなりジャージ姿のまま自室のベッドに倒れ込んだ。掛け布団に眠っていた僅かなホコリが舞い上がり蛍光灯に照らされキラキラと反射している。


 寝返りをうち仰向けになった。天井が白いスクリーンのように視界を埋め尽くす。外は夕陽で染まっているが、カーテンが閉めているので隙間からの僅かな光しか入ってこない。


 梨花はスクリーンに放課後のことを映し出すように振り返った。


 江藤と話したときの高揚感と別れ際の喪失感。いままでなんてことのなかったことに感情が揺さぶられてしまった。


 自分の気持ちには気付いてはいた。だが意識はしていなかった。その程度の気持ちだったのに今日は朝の出来事のせいで平常ではいられなかったのだ。


 「リカ!出てきなさいよ」


 バッグに入れていた四角の手鏡を持ちながらその犯人を呼び出した。眉間に皺を寄せている私とは違い鏡の中の顔はニヤリと笑みを浮かべている。こちらの反応を楽しんでいるのだ。


 「出るも何も最初からここにいるよ」


 どうやらこの私は私をからかいたいらしい。反論したい気持ちをぐっと押さえながら本題を切り出す。


 「片想いって江藤くんのこと?」

 「もちろん」


 予想通りの答えが返って来た。梨花は再び質問を投げかけながら自室の化粧台の前へ移動した。


 「それならあなた1人で解決すればいいんじゃないの?私は関係ないんじゃ」

 「関係あるに決まってるじゃん!他人じゃないんだから」


 同一人物であるのを忘れていた。別々の思考を持っているだけで目の前にいるのはれっきとした鏡に写っている自分であるのだ。すると突然自分の両手が上へ動いて頭を掴んだ。


 「え!?なんで!?」


 何が起こったのか頭が追い付かなかった。なぜ腕が勝手に動いたのだろう。だか、鏡の中のニヤリ顔を見てすぐに察した。


 「あたしたちは鏡なんだから同じ動きしてとーぜんでしょ!」


 そうして髪をわしゃわしゃとかき乱す。まるでパーマを掛けたかのような有様になってしまう。止めようと思っても手が止まらない。どうやら意思が強い方が行動を先導できるようだ。


 しばらくして落ち着いたころ、リカは口を語った。江藤が好きだと。だが告発する勇気がないのだと。


 「意外。勢いで告白するタイプだと思ってた」

 「だから、あたしとあんたは他人じゃないって言ったでしょ」


 リカは呆れながらそういった。つまり私たちの恋路は私に掛かっているということだったのだ。しかし、活発なリカですら怯むのだから私なんかじゃ話にならないのでは。


 「あなただからこそ手伝ってほしい。告白する勇気が欲しいの」

 読んでいただきありがとうございます。感想、評価、レビューなど気軽によろしくお願いします。

 次回は7月26日(土)に更新する予定です。

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