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魔界の剣士ザザビー!

こんなところでなにしてンの?

え…待って、それなに食べてンの?こんにゃくアイス?こんにゃくアイス食べてる人初めて見た!!ぎゃはは!!


王子は既に氷が溶け始めてフニャンとし始めたこんにゃくアイスを指さされてなんとなく気恥ずかしい思いに駆られた。すぐさま口の中に突っ込んで急いで食べた。頭がキーンとするのを無視しながら王子はザザビーに駆け寄った。


「ザザビー!良かった…!迎えにきてくれたのか!?」

「え?迎え?」


何のこと?と、ザザビーは両腕を広げて首を傾げた。


「ボク今、休暇中だよン?」

「え?」


よく見れば魔王軍四天王のザザビーはTシャツに短パン・ヒールサンダルというラフ過ぎる格好を凝視した。武具も防具もひとつも持ち合わせていない格好に王子は絶句した。


「ザザビー!なんて緊張感のない格好なんだ!それでも四天王の1人かっ!」

「ヤダなぁ。いま休暇中だしィ〜それよりあまりジロジロ見ないでくださいよー王子のえっちー」

「なっ…!?」


きゃっとザザビーが自らの薄い胸を細い腕で大袈裟に隠した。普段は鎧に覆われているせいか日に焼けていないザザビーの白い手足の眩しさに頭がクラクラする。いや、そうじゃ無い。王子は両手で顔を覆った。


そもそもお前、女だったのか…知らなかった…。


魔界でのザザビーの格好は分厚い装甲具に身を包み、身の丈よりもずっと大きな剣を振り回す魔界剣士であったが、ここではその片鱗を少しも感じなかった。

どこにでもいる、普通の少女がそこにはいた。


「いやーそもそも魔界の格好じゃ群馬の夏は暑いですからねー」

「お前…ここを知っているのか?」

「えっ?群馬は群馬ですよ」


それ以上でもそれ以下でもない。

群馬は群馬なのだ。群馬は群馬であって、それ以外は群馬ではない。

その当たり前過ぎる答えに、王子はもう考える事をやめた。


「まぁ…ここがどこなのかはもうこの際どうでもいい。オレと一緒に魔界へ…」

「ボク、しばらく帰らないですよ」


休暇中なんで、とザザビーはピシッと断りを入れた。


「というか、そもそも帰れないですよ。休暇申請して魔王様の空間転移魔法できたので」


ボク、魔法は扱えないし〜と、ザザビーは笑いながら言った。王子が抱いた希望は一瞬にして粉々に破壊されてしまった。あまりのショックにその場で膝を降り、握った拳で地面を叩いた。


「くっ…なにを考えているんだ父上は!?」


いままで父上のために働いてきたのに、こんな仕打ちを受けるなど。それともオレはもう父上には必要ないってことなのか。

王子の深刻な様子にザザビーは掛ける言葉を探すようにしどろもどろした。


「まぁ…魔王様は色々お考えがあってのことなンじゃないっすかね」


ザザビーは慰めるように王子の肩を叩いたが、それを払い除けて再び歩き始める。


「ちょ、王子ー!どこにいくんスかー?」

「…貴様には関係ないだろう」


「お互い休暇を楽しみましょー!」


歩き去っていく王子の背中に向かってザザビーは声を掛けたが、返事が返ってくることは無かった。

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