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ケヤキのアーチを抜けて


老婆から貰ったこんにゃくアイスは食べても食べても終わる気配が無かった。アイスにしては異常に長いし、弾力のある歯応えは永遠に噛まなくてはいけないようだった。

そもそもアイスにこの噛み応えは必要なのか?


老婆が勝手に口に入れれたものの、王子はお代を…と、代金を払おうとズボンのポケットに手を入れた…が、無い。


無い無い無い!


そこで王子は初めて自分が一文無しであることに気がついてサッと青ざめた。いや、財布があったとしても魔界の通貨が人間族との取引で使えるはずもなかった。

老婆はそもそもあげるつもりだったのだと言われたのでその好意に甘え、最大限に感謝の気持ちを伝えて店を後にした。


こんにゃくアイスを食べながらやっと駅と呼ばれる建物から出ると人間族が乗る車やそれよりも大きいバスと呼ばれる乗り物が目の前を通り過ぎていった。それらをぼんやりと見送る。


先ほどの場所よりかはまだ賑やかそうに見えたが、歩いている人間はまばらで数えるほどであった。


「はぁ〜…」


永遠に食べ終わらないこんにゃくアイスを手に王子はため息を吐いた。


いや、どうするんだこれ。


勿論こんにゃくアイスのことではない。

父上の空間転移で開けられた穴は完全に閉じてしまっている。帰り方が分からない。そもそもここがグンマという場所であること以外、なにも分からなかった。


なぜ父上はオレをここへ飛ばしたのだろうか。オレはずっと魔王である父上のため、勇者を迎え撃つために生きてきたと言っても過言ではない。それなのに…。


道の両側を見事なケヤキがアーチ状に並んでいた。その下を歩くとすこしだけ荒ぶった気持ちが癒されるようだった。木漏れ日の日差しの中でこんにゃくアイスは溶けないまま、プルプルと震えた。

溶けないこんにゃくアイスを片手に行く当てもなく王子はとぼとぼと歩いた。


まさか人間族はここにいるオレが魔王の息子だとは思うまい。


「あ、魔王様の息子じゃん」


突然後ろから声を掛けられた。

すぐさま王子が後ろを振り返ると魔王軍、四天王の1人。生きとし生けるもの斬殺する魔界の剣士。ザザビーがそこに立っていた。

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