ネットは好きになった方が負け
気づけば外は明るかった。それがあたりまえになっていた。
21歳フリーターの俺は、またもやこんな時間まで配信をみて。YouTubeで切り抜きを見て。自分で配信をしてみたりもした。
と言っても本当に少人数、いわゆる過疎枠というものしていただけだった。そうこうしてるうちに朝食に呼ばれ、母親と1ラリーほどの会話をし母は仕事へと出て行った。
(さて、今日も配信やりますか!!)
プチッ...
「みんなおはよー。あ!ネコの手も借りたいさん!おはよ!かりんさんも!来てくれてありがとオー‼︎ 昨日の夜も全然眠れなくてさあ...」
こうしてなんのおもしろみもない会話を30分ほど続けていた。
すると...
「あ!茶々丸じゃん!やほー」
同じ配信をしている女の子だった。俺はその子のことが好きだった。いや、それは配信者としてなのか異性の女の子としてなのかはちょっとわからなかった。
それからと言うもの俺と茶々丸という名の女の子はコラボ機能(コメントではなく配信主とリスナーが電話のようなもので話せる機能)を使ってよりいっそ仲良くなっていった。
「茶々丸ってリアルではどんな感じなの?」
「わたし結構めんどくさいタイプなんだよー...他人のいいね欄とかフォローしてる人とか結構みちゃうタイプかも??」
「うわあ...メンヘラじゃん...こわいね...」
「え?なんか引いてない?全然メンヘラじゃないし!!」
十二分にメンヘラだろとは思いつつ、ちょっと可愛いなとも思った。引いてる感じで話したが、自分もそういうちょっとしたストーカー気質なとこに共感する部分はあった。
「ラクテンはどんな子と付き合ってた?」
「んー...みんな普通の子だったよ」
「えー、つまんない。もっと浮気された!とか!ないの?」
「あー、ネットで付き合った子には浮気されたな」
「浮気されたことあんの!?いやあ、実はわたしいつも浮気されるんだよねえ」
「それはメンヘラだからじゃないの?」
「だから違うって!!んーと、でも最初とかは束縛とかしちゃってた。でもそれじゃダメなんだって思って次は割と自由にさせてたんだよー!そしたら浮気された!恋愛って匙加減難しいよね...」
「ちょっと可哀想だな」
そんなこんなでかれこれ4時間ほど会話をしてその日のコラボ配信は幕を閉じた。
―翌朝―
まだ半分寝ている瞼をこすりながら、TwitterのDMに一件のメッセージが来ていた。茶々丸からだ。
【ラクテン!らのちゃんって子フォローしてたねニヤニヤ】
昨日言ってたことは本当だった。
【すぐ気づいてるのおもろwまあ茶々丸が嫌そうだからそのDMきた瞬間外しといた】
【全然嫌とかじゃないよ!!まあでも、わたしのことが一番だもんね!】
なんだこれ、付き合いたてのカップルのやりとりか。
俺はなんとなく、メッセージを続けるのが嫌なタイプだったのでスタンプでやり取りを終わらせた。
こんな感じで何気なく配信とかやっていければなと思っていたのも束の間、ある事件が起こってしまった。
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あの時にやり直せたら、あの時ちゃんと話をすれば、あの時もっと違う態度をとっていれば。そう思うことが何度もあったんだ。どこで選択を間違えたんだろう。無限にある選択肢の中で、ちゃんと正解は用意されてたんだろうか。まあいいや、全部試してみよう。そしてどれも正解に辿り着かないのなら、死ねばいいんだ。