女神の覚醒
むかしむかし山奥の家に、青い髪の女の子がいました。
女の子は自宅の地下室でマッチョの死体に興奮して、自分の性癖を自覚しました。
自分の性癖を理解した少女は人生を変えようと思ったのですが、どうすればいいか思いつきませんでした。
そこで、女の子はお母さんを呼ぶことにしたのです。
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アオミ「お母さんお母さんお母さん」
母「なあに?」
アオミ「マッチョ!」
母「……んんん?」
アオミ「マッチョがいっぱい」
母「えー、何かの動画?」
アオミ「地下室だよ」
母「!!!」
アオミ「すごい、すごいんだよ」
母「ダメっ!」
あれ? え? え?
なんで? 怒ってる?
母「地下室はだめ! ドアを閉めなさい!」
バタン
地下室への扉は封印された。
母「地下室にはね、おそろしい怪物が潜んでいるの」
アオミ「あー」
母「怪物はね、人の心臓を引きちぎってね、食べてしまうの」
アオミ「ええ……」
お母さんは炎のように燃え出した。
母「痛いのは嫌でしょ?」
アオミ「うん」
母「分かるのなら良し」
アオミ「……うん」
母「昆布買ってあげる」
アオミ「わーい」
そうだね。マッチョのことは忘れよう
私は忘れなければいけない。
私は忘れるべきなんだ。
だってそれがお母さんの願いだから
母「それに筋肉より魔法のほうがキラキラして素敵でしょ?」
アオミ「そうだね」
母「ヨシヨシ」
アオミ「えへへ」
お母さんは私の頭をナデナデした。
そして床に7本の剣をぶっ刺して封印を強化した。
心臓の奥がズキズキする。
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◯日常風景
いつもの巡回が始まった
まずは大地の百合園へ
……おかしいな。百合がしおれてる。
岩石の百合にプロテインを注ぐ
ところが百合はこう言った。
岩石の百合「アオミさん、お気持ちは嬉しいのですが、今日からプロテインは飲まないと会議で決定しました」
アオミ「そんな!」
岩石の百合「プロテインに有害物質があるとの調査報告です」
嘘ッ! 見えない壁を感じる
仕方がないので自転車をこぐ
ああっと、転倒!
自転車はバラバラになった。
次は爆炎の百合園
仕方がないので徒歩で来た(2時間30分)
火山の中へプロテインをやろうとする
ところが空で大爆発が発生した
爆炎の百合「見て、私の魔法。あなたのお母さんから魔力を分けてもらったの」
アオミ「そんな……」
爆炎の百合「筋肉なんて雑魚よ。時代は魔法だわー」
敗北感。見えない壁を感じる。
そして山の斜面を降る
ああっと、火山弾!
私は頭から血を流してしまった。
3番目は烈風の百合園。
流血でクラクラする。
ビルの最上階でプロテインを注ごうとする。
しかし、怖くなって、中止する。
百合の花は私を無視して仲良く飛行中。
そして魔法で竜巻を発生させていた。
ああっと、強風!
私はビルの屋上から落下した。
私の肉体はバラバラになった。
血液が土に浸透する。
プロテインも土に浸透する。
アオミ「どうして……」
全身が動かない
骨と肉がバラバラになっている。
私の脳に、一輪の百合が寄生した。
烈風の百合「アオミ、アオミ、今助けるヨ」
百合の根と神経細胞が融合した。
百合は私の筋繊維を動かした。
血だらけの肉体は歩行を開始した。
百合の恋心が伝わってきた。
砂糖よりも甘い恋心
海水より濃密な恋心
熱湯より高温な恋心
百合の幸せを脳細胞いっぱいに受け入れる
幸せだけど、何かが足りない。
何が足りない? 筋肉が足りない。
筋肉の興奮を知った今
心だけの愛に欠乏感を覚えてしまう。
烈風の百合「そんな、ひどいヨ!」
あ、ごめんなさい。
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◯自宅
アオミ「ただいま」
玄関を開けてぶっ倒れる。
母「アオミ、大丈夫?」
アオミ「うー」
母「今すぐ回復魔法かけてあげる」
ビャ
母「ごめんね無理させちゃって。明日から外出しなくていいよ。ずっと室内でゆっくりしていいよ」
アオミ「うー」
待ってそれは嫌だ
でもお母さんの願いは叶えなきゃ
それでも、なんだか、嫌な気分
思考がぐるぐる回転する
受け入れようとして、アレルギー反応発生
あれ、なんで嫌なんだっけ?
分かんない。
頭がキリキリする。
そのまま意識が暗転した
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◯心臓の夢
女神「悲しいです。お母さんはプロテインではなく回復魔法を使いました」
アオミ「……そうだね」
女神「百合からも無視されました」
アオミ「そうだね」
女神「そして何より、あなた自身がプロテインを飲むことを恐れている」
アオミ「それは……」
女神「ああ、どうしてアオミがこんな仕打ちを受けているのでしょう。お金もある、食べ物もある、安全もある、自由もある、なのにどうして体も心もズタズタになっているのでしょう」
アオミ「それは……分からない」
女神「じゃあ心臓を潰す」
ぐちゃ
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◯寝室
アオミ「ヒッ!」
心臓がドクドクする。
大丈夫。生きている。
……
え? ナイフ?
アオミ「お母さん何やってるの?」
母「ごめんアオミ」
ドス!
お母さんが私の心臓へナイフを刺してきた
私は回転して回避
そしてダッシュした
アオミ「!!!」
母「待ってこれは違うの」
明らかに危険物の可能性高いぞ
母「これはね、『性格ナイフ』よ」
は?
私は足を止める
アオミ「どういうこと?」
母「これで斬られた人は、性格が変わってしまうの。ほら、あなた昔から変な人だったでしょ?」
は?
アオミ「私の性格を変えたいの?」
母「違うわ。ただ、あなた、向上心が全く無いじゃない。昔から私という強者がいるのに全く争う気配がないじゃない」
んんん? どういうこと?
母「アオミは可愛いよ。可愛くてキスしたくて、撫で回したくてたまらないの」
おいおいおい。こいつ本当に頭おかしい
母「どうして私と張り合わないの、どうしてみんなと仲良くするの、どうして自分から魔力を増やさないの!」
(母、発火)
なるほど理解した。
向上心のなさに不満があるのだな
アオミ「分かった。明日から頑張るよ」
母「違う! そこで私を否定しろ! 私と決闘して勝敗を決めろ!」
アオミ「?????」
(母、燃え盛る)
まずい。母が炎上した。家も炎上している。
たぶんあと1秒くらいで私は刺される。
心臓がドクドクする
母「私に立ち向かえよ、我が娘ェェェ」
烈風の百合「だめぇぇぇ!」
母「邪魔よー」
烈風の百合「ぐえー」
アオミ「百合さん!」
ボォン!
百合の花が黒焦げになった。
アオミ「なんで、なんで」
焦げた百合の死体を胸に抱く。
心臓がズキズキする。
黒い感情が吹き出してくる。
アオミ「なんで、昨日まで仲良くしてたのに。どうして戦わなきゃいけないんだ」
母「それがあなたのためなのよ」
ドス
一瞬で、心臓にナイフが刺さった。
私が沈んでいく。
脳が裏返る。
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女神「ナイフが刺さりましたね。交代です」
アオミ「おやすみなさい」
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アオミ「ふう。ようやく外に出られました」
母「アオミ、あなたはアオミなの?」
アオミ「はい。正真正銘あなたの娘、アオミです」
母「ごめんね。痛かったでしょ。今どんな気分?」
アオミ「この身体は筋肉が貧弱なのでとても不満です」
母「あらー、それは大変ね。でも大丈夫。これから魔法トレーニングをして、都会の魔法学校に編入させて、アッと驚く最強の爆弾魔法少女でみんなを困らせてやるんだから。私を馬鹿にした連中の涙目が目に浮かぶわー、アハハハハハハハ」
アオミ「じゃあ心臓を潰しますね」
ドシュ!