表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/15

3話

8/9

設定の修正により、多少文章を変更しました。


 

 ——キィ——キィ——


 ……どこからか何かが軋む音がする。

 真っ暗な空間に浮かぶユラユラ揺れる二つの瞳がこちらを瞬きすることなく見つめている。


 コ゛ッ゛チ゛ヲ゛ミ゛テ゛

 ズ ッ゛ト゛ミ゛テ゛テ゛

 オ゛カ゛ア゛サ゛ン゛ガ゛✕゛ ✕゛ ト゛コ゛チ゛ャ゛ン゛ト゛ミ゛テ゛テ゛


 ……もう止めてくれよ、俺を見ないでくれ。

 見るな、見るなよ、見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな——


「見るなぁっ!」


 俺は絶叫と共に起き上がった。

 荒い息を整えながら脂汗の滲む額を拭う。

 ……最悪の目覚めだ。


「……はぁー……腹、減ったな」


 寝汗で気持ち悪いシャツを着替え、リビングに向かうと冷蔵庫から卵を取り出しフライパンの上に乗せて火をつけた。


 おっ! ラッキー、黄身が二個じゃん。

 まるでおっぱいみたい(直球)


 ◇◇◇◇


「行ってきます」


 朝食を済ませた俺は制服に着替え自宅を後にした。


 "あれ"から2週間が経った。

 いまだに腹は痛いし顔も青アザだらけだ。

 担任の教師に顔を見られ一体どうしたのか尋ねられたが、俺が階段から落ちたんだと説明したところ『気を付けろよ』とだけ言われ、そのあとは特に何もなかった。(まぁ、明らかにそんな怪我ではないのだが深く聞くことで、自分まで厄介なトラブルに巻きこまれてはかなわない、と思ったのだろう)


 あ、そういえば青山という少女は特に何もなく学校生活を送っているようだ。

  この前、友達と笑いながら歩いているのを見たが、特に気にした様子はないみたいでとても安心したのを覚えている。

 ……精神的に病んだりでもしたら、流石に寝覚めが悪すぎるからな。


 そして肝心の春樹君だが、あれから学校を休んでいるらしい。

 よほど俺の腹をカッターで切る感触が気持ち悪かったのだろうか(それなら少しショックだ)

 ……まぁ真意は分からないが早く学校に復帰する事を祈るばかりである。


「お、おはようございます……緋色君」


 ん? 今名前を呼ばれたような……。


「あ」


 見れば俺の目の前には件の青山なる少女その人が立っていた。


「えへへ、偶然ですね……?」

「おはよう。えっと……青山さん?」


 瞬間、キラキラと目を輝かせた青山さんが俺の手をギュッと握ってくる。


「名前覚えてくれたんですね、嬉しいです!」

「!?」ビクッ


 パシッ


 俺は思わずその手を振り払ってしまった。


「……あっ……えっと……ごめんなさい、急に……驚きました、よね……? えっと、嬉しくてつい……ごめんなさい……」


 なんか青山さんがあからさまにスゲー元気を無くしたので俺は慌ててフォローする。


「あっ! ごめん違くて……! ちょっと俺そういう体質っていうか! 全然不快とかじゃないから! こっちこそごめん!」

「いえいえ私が悪いんです!」

「いや俺がッ!」


 どんどん互いに頭を下げあってついに俺が五体投地した時


「……ふふっ、何やってるんでしょうね私達」


 耐えきれなくなったのか青山さんが吹き出す。

 ……改めて笑顔を見ると凄く可愛いな、と思う。


「……そうだね……えーと、じゃあとりあえず行こうか?」

「はい、そうしましょう」


 なんか知らんがそういう事になった。


 ◇


「へぇ……あのスマホにそんな写真がねぇ」

「……はい、いつの間にか撮られていたみたいで」


 青山さん改め青山(あおやま) (あい)さんと俺は、登校途中にあの事件について話していた。

 どうやら春樹君のあのスマホには青山さんの下着姿やトイレ中の画像等、様々な盗撮画像が納められていたらしい。

 そりゃ自分のそんな写真見せられたら焦るわな、女の子だし尚更。


「でもそんな事俺に教えて良かったの? 俺男だし、恥ずかしかったでしょ」

「あ、いえ……はい……ちょっと恥ずかしかったですけど緋色さんには話さなきゃって……あの、そういえばあのスマホって……」

「あー、心配しなくて大丈夫だよ。その後俺が探し出して完全に処分したから。中身も一切見てないよ、ていうか壊れてて電源つかなかったけど」


 すると青山さんが驚いた顔をした。


「えっ!? わざわざ探したんですか!? 怪我してますし大変だったんじゃ……」

「まぁ一応ね、拾われて誰かに悪用とかされたら嫌だし」

「そう、なんですね……」


 そう呟くように言って青山さんが凄い潤んだ瞳で俺を見てくる。


 えぇ……なんで急にそんな泣きそうな顔でこっちを見るの……?

 気まず! 何この空気!


 ◇◇◇◇◇◇◇


「えっと、じゃあここで……」

「あぁ、うん。またね」

「"また"ね、ですか。……ふふっ、はい! "またね"です!」

「お、おう」


 と、まぁこんな感じで俺達はそれぞれのクラスの前で別れた。

 というか誰かと登校するなんていつぶりだろうか?

 いや、もしかして初めて……?

 あー、でも小学校の時は集団登校だったから初めてじゃないな! うん! うん?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 傷害に盗撮するようなやつを、このままにしちゃうんですか? 同じこと繰り返されるだけのような…
[気になる点] 治療した医者が傷口から診断して警察に通報しないのは変ですし、それ以上に養護教諭の柊木先生が管理職に報告しないのは現実感が全くないです。養護教諭には保健室利用者数からその内容まで、全てを…
[一言] ここまでの傷害事件を通報しない教師が居る学校何て行きたく無いね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ