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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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令の輪を繋いだ ある日

大舞台の幕あけが近づくなかで

雨が降る春は、とても寒く感じた。私は傘を持つ手を震わせながら、歩道橋を登る。傘から伝う雨音と同時に、ペチャペチャと濡れた地面を踏みしめる音も聞こえた。

少し吹く風でも、乾燥している皮膚に追い討ちをかける様に痛い。最近は化粧水が必需品になっている。だからドラックストアにも、最近常連気味。

手袋を押し入れから出そう出そうと思っているうちに、もう年を越してしまった。去年はそれほど寒くならなかったから、手袋もマフラーも押し入れから出さなかった。

でも年を越してから寒さが身に染みるなんて、予想外にも程がある。どうやら、土鍋はまだ片付けるべきではなさそうだ。

そう思っていたら、今日の晩ご飯は鍋が食べたくなる。野菜はあるから、魚や肉、スープをスーパーで買おう。

そういえば、この近くのスーパー、もう直ぐ閉店するんだっけ・・・?なら必ず、在庫処分セールのチラシが来る筈。

これからちゃんとチェックしておかないと、あっという間に終わってしまう。最近この辺りの修繕工事が本格化しているからか、辺りを見ると建設作業着を着た人が、あちらこちらに見える。

もう夕暮れ時な事もあって、工事はもう終わっている場所が殆ど。きっと作業員の人達も帰宅するんだろう。

通り過ぎるバスの中には、サラリーマンや学生がごちゃ混ぜ状態。きっと電車の中も同じだ。女子高生の隣でつり革につかまっていたサラリーマンは、やけに嫌そうな顔をしているのが目にとまった。

きっと隣の女子高生が大音量で音楽を聴いているのか、痴漢と疑われないかと心配しているのか・・・?

まぁどちらにしろ、サラリーマンや学生にとって、この通勤が一番の山場だろう。今の時代、職場や学校に徒歩で行く人が珍しい。でも、車で通勤している人も大変そうだ。

最近は、出社と帰宅の間際に交通事故に遭うケースも珍しくはなくなった。朝方にパトカーや救急車が走る事も珍しくない時代、そして事故の影響で、出社や登校が遅れる事も珍しくない。

ある意味仕事や勉強よりも、行き来の方が大変なんじゃないかと思う。バスが行き来するこの大通りを眺めていれば、そう思えても仕方ない筈。

道端には、買い物帰りのおばさんが井戸端会議をしている。その会話の内容は、やっぱり・・・というか、夫への『愚痴』だ。

それか政治の『愚痴』、子供の『愚痴』、親戚の『愚痴』、嫁の『愚痴』など。

ある意味、日本の闇を集結させた会議にも思える。此処は庶民の国会議事堂なのかもしれない。でも私は、そんな主婦の愚痴を聞くのは嫌いではない。むしろ興味深々で聴いてしまう。

でも、そんな事を口に出してしまうと大抵引かれる。それか怒られる。だから私は、一人で歩いている時のみ、奥様方の会話に耳を傾けている。

そして奥様方の足元には、話が終わるのを今か今かと待ちわびる子供の姿が。子供が駄々をこねても、お構い無しに話を続ける奥さん。その子供と目があった私は、子供に向かって手を振った。

すると子供も、ニコニコ笑いながら手を振り返してくれる。得した気分だ。そして足元には、子供だけではなく、鳩も数匹頭を揺らしながら歩いている。

外でパンなどを食べている時、足元には必ずと言っていいほど、鳩が目を光らせて私を見ている。

でも今日は、生憎餌は持っていない。もちろん、パンなどを食べている時も、餌を与えているつもりなんてない。

妙に懐かれたら、後々大変なことにもなりかねない。だから私は、溢れた食べ物だけ与えている。

最近ニュースで、野生動物に餌付けをする事が社会問題になっている。何が問題かというと、動物と人間が暮らす境界線があやふやになる事。東京で猪が出現したり、街のど真ん中を鳩が蹂躙したり。

その原因は全て、『人間側』にある。ペットを身勝手に捨てたり、動物が食べると有毒になる物を食べさせたり。

そんな人間の身勝手な行為が、生存競争を生き延びている動物達を混乱させて、挙げ句の果てには人間社会も混乱しているんだから。

まず人間側がしっかりとした知識や自覚を持たないと、混沌とした境界線は直らない。

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