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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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第二章 キセキ視点 山から訪れたのは・・・

そのおかげで、昔よりも正確に処置ができて、早く終わるようになった。少女の怪我は全身に見られたけど、幸い骨は折れていないし、出血もさほど酷くない。

多分少女が山の中で倒れていたのは怪我が原因ではなく、疲れで動けなかったんだろう。その証拠に、私がベッドに少女を寝かせた途端、少女の強張った表情が一気に和らいでいた。

体を冷やさない為に、何枚も布団を重ねて少女に被せて、私は後片付けと、サカネイさんの元に持って行く栗金団を作る準備を始める。

少女の見張は別の巫女がしてくれるから、私は汚れてしまった手を井戸で洗いながら休憩していた。その途中、もう騒ぎを聞きつけた住人が数人、神社に訪れる。

村の周りを囲む山はそれほど高くはないけど、木が生い茂っているし、野生動物も多く、夕暮れ時になると真っ暗になってしまう。

そんな山の中を、村人以外の人間が入り込むなんて滅多に無いし、相手は一人のか弱い少女。

色々と事情を持っていそうだけど、まず彼女の身が最優先。数人の村人には、「何かあったらすぐに知らせますよ」と念を押した。

結局その日、少女が目を開ける事はなく、ずっと眠り続けていた。そして、少女の具合を確かめようと、サカネイさんが再び神社を訪れる。今度はちゃんと鳥居を潜って来てくれた。

私は、丁度出来上がった栗金団をサカネイさんに渡すと、サカネイさんはあっという間に食べ終わってしまった。

サカネイさんは何十年も猟師をしているから、大柄な体格をしている。だから私達の食べる量の倍は食べないと獲物は狩れない。

だから私は、サカネイさんにあげる栗金団だけ大きく作った。村の皆や少女にあげる分も、ちゃんと作ってある。

サカネイさんは普段無口だけど、猟師の話は色々としてくれる。今の時期は丁度、雪に埋もれていた山菜が地面にびっしりと生えているそうだ。

ちなみに、サカネイさんは山菜をあまり好んでいない。その理由は、「山菜は獣肉以上にクセが強いから」と言っていた。

でも私は好きだ。

山菜はご飯と一緒に炊いてもいいし、汁物にしても美味しい。春の間はずっと、山菜が食卓に並んでいる。

今日も栗金団を作っている最中、山菜採りをした村人から、「チョクソウ」という、春の山菜の中で一番早い時期に取れる山菜を貰った。

チョクソウは少し苦味があるけど、甘辛く煮詰めると美味しくなる。だから今日の晩ご飯のおかずは、チョクソウの甘辛煮。

サカネイさんも夕ご飯に誘ったけど、そそくさと逃げ帰ってしまった。でもそんな一面も、ちょっと可愛いと思う。



冬の眠りから覚めなかったのか

それとも・・・

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