第十九章 キセキ視点 後始末
それからどのくらいの時間が経っただろうか。山がいつの間にか静けさを取り戻し、鳥の鳴き声が響き始める。
サバネや村民達の髪は、土煙が付着して黄ばんでいた。それを見た子供の一人が、「お姉さんの仲間になった!」と言う。その言葉に、全員が爆笑。もちろん私も、その子供を抱き上げて笑った。
その笑い声と共に、私達は村へ戻る。
するとそこにあったのは、年輪がくっきりと残っている切り株と、重さによって地面にめり込んでいる、大きな幹。
つまり、成功したという事。私達は声を荒げて喜んだ。サバネは私を切り株に乗せて、「万歳!!」と言いながら、両手を上げて喜ぶ。
それにつられて、皆も私に「万歳!!万歳!!」と、日が暮れるまで言い続けた。
しかしその中に、用心棒の姿はない。夜頃にようやく到着した、都の警官達の前に、用心棒は村長を縄で縛り上げて差し出した。
村長はかなり大声で暴れている様子だったけど、もう彼を慕う者も、信じる者ももういない。村長の奥さんと娘さんは、私の目の前で土下座をしながら、村長の分までしっかり謝罪の言葉を述べてくれた。
ある意味、同じ家族とは思えない対応の差だ。村長は私に向かって、「化け物!!!」とか「屋敷を返せ!!!」とか言ってる。
もちろんそんな言葉、私の耳に入って来ても、脳まではいかない。その殆どの言葉に何の重みも無く、薄っぺらい紙切れ同然の、価値の無い言葉だったから。
むしろ、村長の奥さんや娘さんの言葉の方が、あったかいし身に染みる。
縛り上げられた村長は、足早に村から都へ移された。そして警官達の中には、私を複雑な目で見つめる、お偉いさんの姿も。
私はそんなお偉いさんに、勝ち誇った様な顔を見せつけると、お偉いさんは引っ込んでしまった。でもまぁ、後々延々と事情聴取される事は承知のうえ。きっとサバネも、村の皆も同じだろう。
でも、私達が本当に起こった事実を聞いても、きっと誰も信じてもらえず、解放されるのも時間の問題だろう。
決して私達は、目の前で起こった出来事を、嘘で塗り固める気はない。何故ならこの村の為に頑張ってくれたウメの為にも、今回の一件を包み隠さず話すつもりだ。
私は、ウメとの出会い、村で起こった事、過去に撃退した怪鳥と、再び一戦を交えた事も、全て話した。
途中から聞く気が失せていた警官達だったけど、私は話していて楽しかった。どんなに警官が「嘘をほざくな!!!」と怒っても、私はただ一言、
「事実ですけど」
と言い通した。だってそうだもん。
未来は開かれた