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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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第十九章 キセキ視点 後始末

そして私は、この村の新たなる門出を開く為、柄を握り、刀を抜く。

この巨木は、ウメの持っていた精鳥の力で生まれた木。先ほども試したけど、斧で切ろうとしても、傷一つ付けられなかった。

なら、燃やしてしまえばあっという間に解決するのでは・・・と思うが、この状況だと、そうもいかない。

村を一つ飲み込んでしまった巨木を燃やすとなると、相当な火力が必要になる。何より、火が辺りに飛び移り、大火事になる事だけは避けたい。

今現在でも大惨事状態なのに、更に手のつけられない事態に発展する可能性だって考えられる。なら、この残桜で巨木の根元を切断してしまえば、時間はかかるけど、周りへの被害を最小限に抑えられる。

普通の斧では対処ができなくても、残桜の能力を持ってすれば、両断する事で、ただの巨木にする事はできる筈。

私は気を巨木の一直線に集中させて、神経を尖らせる。村長は、急に黙り込んでしまった。

恐らく、私の手から刃が見えたから、体が固まっているだけだろう。だから私は、迷わず刀を鞘から抜き、巨木に向かってなぎ払った。

なぎ払うと同時に土煙が舞い、辺りに落ちていた小石があちこちにぶつかる音がする。鞘から刀が抜ける音がしたと同時に、周りは静寂に包まれ、風の音すら一切聞こえない。

そして、刀が抜ける音がしてから数秒が経った頃、巨木がゆっくりと斜めに傾き始める。

切れた事を悟った私は、すぐ皆の元へ戻った。巨木は根元から轟音を響かせ、山の草木が揺れるほどの音量に、私達は耳を塞いだ。

実は、私は今まで木を残桜で切断した事はあったのだが、これほど大きな巨木を切断する事は初めて。

だから正直、不可能を覚悟に考えていたんだけど、まさか真っ直ぐ横に綺麗に切れるとは、私自身思っていなかった。

そうこうしている間に、巨木の先端は近くの山にぶつかり、その山からも土煙が舞っているのが確認できる。

そして太い幹が地面に叩き落とされる瞬間、今までで一番大きな衝撃音、衝撃波が、辺りに撒き散らされた。

地震かと思うほどの地響き、きっとこの地響きは、少なくとも東京まで届いているかもしれない。その地響きは木々の枝を揺らし、落ち葉が私達の頭上から、雨の様に降り注ぐ。

葉に混じって虫も落ちていたけど、そんな事気にしている暇なんてない。土煙が、私達に向かって来ているのだから。

私達は一丸になって、押し寄せる土煙から顔や体を守る。周りを大人、中心を子供で固まり、空気が澄むまで、ただじっと待っていた。

周りはだいぶ大騒ぎ状態だけど、下手に動くと山の中で迷子になるし、土煙が目や鼻に入ると、呼吸困難になる。私は、震える子供達をギュッと抱きしめながら、小声で「大丈夫」と言い続けた。

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