第十八章 サバネ視点 伝えた感情のぬくもりに溶ける
自分とウメは、キセキさんにお礼の気持ちを告げる。その直後、ウメは爽やかな春の風と消えた。
自分の手に残ったのは、桜の花弁が、一枚。自分はその花弁をしっかりと握りしめながら、その場で泣き崩れた。
後ろからも、自分と同じ様にに、ウメとの別れを惜しむ村民のすすり泣く声が聞こえる。キセキさんの目からも、大粒の涙が溢れていた。でもその顔は、とても清々しく見える。
自分もそうだった。結構大泣きしているんだけど、口元は笑みを浮かべている。それはきっと、ウメとの別れが、決して悲しい『だけ』ではないからかもしれない。
ウメが天に召される喜びを、今、皆と共に共有している。それは自分達にとって、とても喜ばしい事だ。
感動に浸っている自分に、キセキさんは、
「頑張ってくれて、ありがとう」
と言ってくれた。
自分が感謝する側なのに、その言葉は自分には勿体なさすぎる言葉だ。自分はキセキさんの手を握り、何度も「ありがとう」と言い続けた。
そして、自分の後ろにいた村の皆も、キセキさんに駆け寄ってお礼の言葉を次々に述べる。子供達は、キセキさんの体に飛び込み、「恩人さまー!!」と叫びながら、キセキさんを歓迎していた。
キセキさんは子供を一人一人抱きかかえながら、皆の言葉一つ一つを、しっかりと受け止めている様子だ。
そして、先ほどまで雲に覆われた空が一気に晴れ、この村はようやく、光が差し込んだ
そして、祝福の光は
大勢の人間の後押しとなった




