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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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第十八章 サバネ視点 伝えた感情のぬくもりに溶ける

でも自分は、気づいてしまった。

女性の体が、まるで空気に溶け込み始める様に、徐々に透け始めている。それに慌てた自分は、女性の手を握った。

しっかりと手は掴めたのだが、少しでも強く握ると、すぐ壊れてしまいそうなくらい、柔らかく脆くなっている。

女性の足元を見ると、もう足の輪郭は無いに等しい。でも女性は、決して焦る様子を見せず、その満足そうな顔で、一言呟く。


「もう私は・・・此処に居られないのね」


そう言った女性は、横を振り向く。そこには着物が少し乱れたキセキさんが、何か言いたそうな顔をしている。

自分はキセキさんに聞いた、「どうゆう事ですか?」と。するとキセキさんは、ゆっくりと語った。


「その子・・・『ウメ』はね、もう『許されたの』

 この村の為を思い、この村の為に生きた。一時、憎悪に心が支配されていたとしても、この村の事を、

 心の底から愛したの最終的には、この村の村民を救ってあげた。もうそれだけで十分な功績だよ


 だからこそ『ウメ』は、天に昇る事ができる許しを得られたの」


 キセキはそう言い終えると、女性『ウメ』の前に立ち、手を差し伸べる。

 ウメはその手を迷わず握り、キセキさんの手を自分の額に当てて、感謝の言葉を述べていた。


「短い間・・・だったのかな・・・?

 私の事、ずっとずっと支えてくれて、ありがとうございました

 結局私、貴女に迷惑しかかけられなかったけど、貴女との旅は、とても楽しかったです

 『ずっとこの旅が続けばいいのにな』って思っちゃうくらいで」


「私だって、途中から仕事とか頭からすっぽ抜けてたからね。それくらい楽しい日々を満喫させてもらっ

 たよ

 後々の事は、サバネさんや村の皆と協力するからさ」


ウメはその言葉を聞くと、急に振り返り、自分に思いっきり抱きついてきた。

そして、最後の別れの言葉を告げる。


「ありがとう!サバネ!!

 貴方よりも私が早く天に召されるなんて、思っていもなかったから、こんな別れ方、あまりしたくなか

 ったんだけど・・・」


「・・・うん・・・

 自分、君の事情は殆ど知らないから、君が過去の何をしたのかも、どんな姿だったのかも、全く分から

 ない。

 でも、君が『今』、自分や村の為に頑張ってくれたのなら、もう何も咎めないよ

 君は、自分と皆の、『命の恩人』だよ」


「そんな事ないよ・・・!

 皆が私を此処まで導いてくれたから、今の私があるの。貴方達に

 出会っていなかったら、きっと私は・・・」


「ウメ、『今』がこれだけ幸せなんだから、細かい事を色々と考え

 てもキリがないよ

 『ウメ』も居て

 『サバネ』も居て

 『村の皆』が居て

 この結末を迎える事ができたんだからさ


 ・・・生まれ変わっても、また見つければいいよ

 貴女がこの言葉を、しっかりと心で受け止めているなら・・・」


「・・・・・・・


 ・・・キセキさん!!」


「キセキさん!!」


「「ありがとう!!」」

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