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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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第十八章 サバネ視点 伝えた感情のぬくもりに溶ける

『優しい気持ち』を受け止める者に 

祝福は訪れる

目を開けると、そこにはとても美しい女性が、自分に微笑みかけている。

自分はその女性に見覚えはなかったけど、瞬時にその女性が、『精鳥』である事が分かった。先程の姿とは違い、とても晴々しく、爽やかな雰囲気を漂わせている。自分は不意に、顔を赤らめてしまった。

今まで女性との恋愛には一切興味がなかった筈なのに、美しい女性と化した『精鳥』を見た途端、自分の心は一気に熱くなる。

先程の胸の苦しみとは違い、より重い様な、でも何処か暖かい様な、そんな不思議な苦しみ。そんな自分の感情を悟ったのか、女性は自分に近寄ると、自分の頬に手を当てる。

女性の手は、とても暖かく柔らかい。突然の事で言葉も発せられない自分が、だいぶ恥ずかしい。

頬に触れている女性の手を握る事すらできず、ただその場で立ち尽くす事しかできないなんて、男として失格だ。

でも、女性の満足そうな顔を見ると、自分のこれまでの苦労は、無駄ではなかった気がする。此処まで辿り着くのに、相当の苦労と時間を費やした。でも、結果は大満足だ。

辺りを見渡すと、もう村長が壊してしまった民家も、村長の庭さえも、全てが滅茶苦茶になっていた。でも、これで良かったんだ。これこそが、自分や村のみんなが望んでいた事。

自分は女性に、後ろを振り返るように促す。そこには、申し訳なさそうな顔をしている、村長『以外』の村民が立っていた。

皆は次々に頭を下げて、「ごめんなさい」「申し訳なかった!」と、口々に謝罪の言葉を続ける。

小さな子供でさえも、泣きながらずっと「ごめんなさい・・・」と、顔をびっしょりと濡らしながら言っていた。

その光景を見た女性も、涙を流しながら頭を下げて、「ありがとう」「ごめんね」と言い続けている。

自分は女性を後ろから抱きしめ、「もういいんだ」と言う。暖かい女性の体と、花の甘い香りが漂う女性の髪に、胸が再び締め付けられる。

でも女性に触れた瞬間、自分には分かった。もう彼女は、苦しみや悲しみになんて囚われていない。

むしろ、この村を愛する心で、胸がいっぱいである事に。女性の満面の笑みを見て、自分は心の底から安心した。

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