第十五章 キセキ 過去編四幕
こんな状態では、
『※※※※※』
もさすがに黙ってはいられないだろう。だから御神鏡にあの文字が浮かんでも、驚きはしなかった。
そして、御神木の梅を啄み、『※※※※※』の怒りを買ってしまったのが、『ウメ』だった。
ウメは、私に退治されて天に昇る事は許されなかった。それではあまりにも、彼女が犯した罪と釣り合わなかった。
怪鳥集団の中でも、特に荒らし回っていた、怪鳥の筆頭格であったウメ。彼女との戦闘が一番苦労した。どこまでも執念深く、私をじわじわと痛めつけようとするウメ。
私は蹴りを入れた後、喉元寸前まで残桜の刃を突き立てた。執念深く追い詰めようとした結果、体力を消耗していたウメは、その一撃で完全に観念する。
退治を許されなかった怪鳥は、ウメの他にも数匹いた。私は彼らを集めて、『※※※※※』の意向を伝える。
『※※※※※』の提案した内容は、自分達が陥れた人の分、人を助ければ、改めて天へ昇る事を許可されるというもの。
捕らえた怪鳥全員がその意見を承諾。私は彼らの禍々しい姿と能力を封印して、新たな姿と力を与えた。
『ウメ』という名前も、私が付けたもの。ただそれは、ただ単にウメの実を食い散らかした怪鳥だから・・・という安易な考えではない。
ウメの花の、爽やかで甘い香りを漂わせて、迷える人々を救えるようにと、私はその名前に、希望を込めた。
そして、ウメとの出発前、御神鏡に写った文字から、私は後々何が起こるか、ある程度察しはついていた。でもこればっかりは、不運に不運が重なった結果としか考えたくない。
もしこの村の村長が欲に溺れていなかったら、こんな事態は起こらなかった。
ウメが勘違いをしなければ、ウメの封印は解かれずに済んだ。『※※※※※』も、ある程度この結末を悟っていたから、私に全ての判断を委ねたのかもしれない。
閉ジモ開キモ 其方次第
処罰ノ行方モ 其方次第
この言葉の意味が、私に重くのしかかる。
でも、私が意図しない展開で、ウメの封印が解けてしまったのは、私も『※※※※※』も、予想外だったのかも。
そして私は今、この物語の『終』を書く為の筆を握っている。でもその筆は、あまりにも重すぎる。でも私が終わりを飾らなければ、物語は平行線のまま、悪い内容の話題が進むだけ。
『※※※※※』の為にも、ウメの為にも、サバネの為にも、終止符は今、打たなければならない。
汗で濡れた私の手は筆をつたい、ますます筆は重くなる。筆を下ろしたくても下ろせない状態。
そんな状況の中、私の手に、手を重ね合わせる人物がいた
尾の先にあるのは
新たなる絶望か
それとも・・・




